「署名活動(危険な松の木の適正管理を訴える)を書面とネットで行って(継続中)、賛同してくださる方がこんなにいるんだ、意地悪を言ってくる人だけじゃないんだ、と心強く励みになりました。

 昨年10月には、東京・銀座で行われた小野裕人さんの個展会場でも、辿皇の絵を飾って署名コーナーを作ってくれたんです。

昨年10月、銀座で行われた、アーティスト小野裕人さんの個展で、辿皇くんの絵が展示された。会場に訪れた明日香さん、京子さん(写真左)と小野さん。

昨年10月、銀座で行われた、アーティスト小野裕人さんの個展で、辿皇くんの絵が展示された。会場に訪れた明日香さん、京子さん(写真左)と小野さん。

個展会場では署名活動のコーナーが設置され、多くの来場者が足を止めた。

個展会場では署名活動のコーナーが設置され、多くの来場者が足を止めた。

 私と母は、こっそりその個展会場に行ったのですが、足を止めて署名をしてくださる方や、辿皇の絵を観て涙を流してくださる方がいるのを実際目にして、ほんとうにありがたくて。前に踏み出す勇気になりました」

 提訴がいまのタイミングになったことを、高橋正人さんも

「それは私の準備が整ったからです」

 と説明する。昨年から、県や市に公文書の開示を求めたり、膨大な資料や証拠を集めていたという。

 そして、2012年に県(土木事務所)が26本の松の木について、「このまま放置した場合、将来重大な事故が発生する恐れがある」と市(教育委員会)と国(文化庁長官)に伐採の許可を求めていたが、市と国は「申請のあった3か月前に別の樹木について伐採したばかりだから」との理由で伐採を許可しなかったことが判明。

 辿皇くんの命を奪った松の木は、その26本の中の1本だった。伐採や保全策がとられていたら、この事故は起こらなかったのだ。

 さらに、調べていくなかで、県警と地検の捜査があまりにお粗末であることもわかった。

「事故直後の車両の写真からわかるように、松の木が落下してきたことは一目瞭然です。それなのに、捜査機関は、樹木が路上に最初から転倒していたとの見立てにより、県警は当初、免許を取り消したり、地検は起訴猶予による不起訴処分にしている。この点の責任追及が可能かどうかも追って、検討していく予定です」(高橋さん)

事故にあった明日香さんの車。ボンネットに深い凹みがあり、フロントには大きな破損がない。エアバッグも開いていない状況から、明日香さんが訴えるように、松の木が上から落ちてきたことは明からだ。

事故にあった明日香さんの車。ボンネットに深い凹みがあり、フロントには大きな破損がない。エアバッグも開いていない状況から、明日香さんが訴えるように、松の木が上から落ちてきたことは明からだ。

街灯がなく夜、見通しのきかない国道を走る明日香さんの車をこの松の木が直撃した。

街灯がなく夜、見通しのきかない国道を走る明日香さんの車をこの松の木が直撃した。

 次の疑問、3159万9361円という請求額について、

「高橋先生に法的に計算していただいて、この額になりました」

 と内山さん。高橋さんによると、

「辿皇くんの逸失利益や慰謝料などの合計から、自賠責保険などを控除して、この額を請求します」

 ちなみに、“逸失利益”とは、この事故にあわなければ得られたはずの収入のこと。

「辿皇くんは、死亡当時11才でした。基礎収入は、令和元年男子学歴計全年齢平均賃金の560万9700円、11才の5%ライプニッツ係数(交通事故の損害賠償金を算出する際などに使われる係数)は、12.9121、生活費控除率は50%になります」(高橋さん)

 よって、逸失利益は、560万9700円×12.9121×0.5=3621万6503円。

 こういった計算を根拠とした上での請求額となっているのだ。

「お金がほしいから裁判するんだろう、とまた誹謗中傷に合うことは覚悟もしています。息子の命と引き換えになるものではないですが、それでも、これだけ大きな額になるほどの問題なんだ、ということが伝われば・・・・・・。

 まだ先は長く、裁判をしていく中で、思い出すのも辛いこともあるかもしれない。でも、泣き寝入りして終わっていたかもしれない私が、こうやってスタートラインに立てたのは、ミラクルなご縁と応援してくださる方達がいてくださるおかげです。

 辛いことを経験した自分が発信し、二度とこのような事故が起こらないようにつなげることができれば、と思っています」

 明日香さんはそう決意を語った。

事故があった虹の松原の現場で。明日香さんと辿皇くんの祖母・京子さん。

事故があった虹の松原の現場で。明日香さんと辿皇くんの祖母・京子さん。

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