苦境に喘ぐ飲食店からかけられた言葉とは
──撮影に協力した飲食店などから、何か声をかけられたりしましたか?
武田:Season6放送前にスペシャルドラマがあり、酒蔵でロケをしたんですが、そちらの方に「若い世代が日本酒に踏み出すきっかけが少ない上に、外で飲む機会自体が減ってしまった。『ワカコ酒』は日本酒界の救世主です」と言っていただけました。
また、コロナ禍という大変な時期に丸1日撮影に協力してくださる飲食店の方々にも感謝の気持ちでいっぱいです。お店の方に「こんなにおいしく食べて飲んでもらえてうれしい」と言っていただけて、でも私のほうもおいしい料理とお酒を味わえてうれしくて、それぞれのうれしさが重なって、これってなんて幸せなことだろうって感動して……。
外飲みが気兼ねなくできる状況になっても、この気持ちは忘れずにいたいです。
第9夜「イタリアンの料理教室へ」より(BSテレ東 3月7日深夜0時放送)
ワカコが「家飲み」のお供に
──外飲みが難しい時期、『ワカコ酒』に心癒される視聴者も多そうです。
武田:「外に飲みに行けず、つまらない日々だったけど、ワカコという飲み友達ができたようで家飲みが楽しくなった」という感想を頂いたことがあり、私もすごく救われたような気持ちになれました。
──『ワカコ酒 Season6』では、「お店に明かりが灯っていることが、どんなにうれしいことか」や「家で飲むのもいいけど、外でしか味わえない楽しみもやっぱりある」など、コロナ禍の飲食店にエールを送るようなセリフもありました。武田さんにとっても気持ちがこもる部分だったのでは?
武田:まさにそうですね。台本を読んだときも涙が出ましたし、最初の「ぷしゅー」(*注)でもウルッときました。クランクインの数日前に緊急事態宣言が明けたタイミングというのもあって、本当にいろんな思いがこみ上げました。外飲みの醍醐味というものをより強く感じながら、ワカコ役を演じています。
【*注:ぷしゅー/主人公が美味しいお酒やお料理を食べたときに思わず漏らす、決め台詞。原作漫画でも使われている】
外でのひとり飲みは「孤独じゃない」
──武田さんが思う“外飲み”の醍醐味とは?
武田:ひとり飲みでも孤独じゃないところだと思います。いろいろなお客さんがお店に集まっていて、お互い会話をするとは限らないけど、その場で「おいしい」という気持ちを共有できている感覚があるから寂しくはありません。他のお客さんがおいしそうに食べているものを自分も注文してみたりして、緩やかな繋がりが感じられます。
第9夜「イタリアンの料理教室へ」より(BSテレ東 3月7日深夜0時放送)
──7年間付き合ってきて、武田さんにとってワカコというキャラクターはどんな存在ですか?
武田:大げさな言い方かもしれませんが、自分の一部のような感覚です。落ち込んだとき、ワカコのモノローグに励まされることもあります。「みんな違うけど、同じ酒場で飲んでいる。同じ人間なんだよな」というセリフがあるんですけど、本当にその通りですよね。それぞれに悩みがあって、それぞれに疲れているけど、お酒を飲んでいるときはみんな少し幸せ。お酒のいいところだと思います。
◆取材・文/原田イチボ(HEW)、写真/小倉雄一郎
『ワカコ酒』シーズン6はBSテレ東で毎週月曜深夜に放送中