一方、今春スタートの『上田と女が吠える夜』と『トークィーンズ』も、「女性も空気を読みすぎることなく、本音を語っていこう」という現在の風潮を踏まえた番組であり、同じトーク番組というジャンルでも、時代ごとにコンセプトを変えている様子がうかがえます。また、このスタンスは『ドーナツトーク』も同様であり、いずれも現在の視聴者心理をとらえた新番組と言っていいでしょう。
ネット反響や配信再生が期待できる
もう1つ、「女性たちが言いたい放題」の番組が増えている理由としてあげておきたいのは、視聴率全体の低下、メインターゲット、配信再生数狙いの3点。
前提として挙げておかなければいけないのは、コロナ禍で在宅率が上がったにもかかわらず、視聴率そのものが低下していること。これは「テレビ番組が見られなくなった」というより、「配信や録画での視聴が増え、リアルタイムで見る人が減り続けている」ということでしょう。しかし、長年続けてきたビジネスモデルを急に変えることはできません。特にバラエティは、「リアルタイムで見てもらい、その日のストレスを解消できるような番組を放送して視聴率を獲得していこう」という意図で制作されているのです。
その上でメインターゲットにしているのが、スポンサー受けのいい10~40代の女性たち。まさに3番組の出演者と同じ年齢層の女性たちであり、彼女たちが共感し、笑えるようなエピソードトークが優先して選ばれています。
また、もう1つ見逃せないのが、このところ視聴率だけでなく配信再生数が評価指標に加わり、これを伸ばせる番組が求められるようになったこと。最も配信再生数を伸ばせるのはドラマですが、バラエティはそれに次ぐジャンルだけに、ネットとの相性がいい番組を増やそうとしているのです。
その点、「女性たちが言いたい放題」のバラエティは、発言が記事になりやすく、SNSに書き込まれやすいなど、ネットとの相性が抜群。配信再生数のアップにつながりやすいタイプの番組であり、今後はトークのうまい女性タレントだけでなく、SNSのフォロワーが多い人や、ネット上のインフルエンサーなどのキャスティングも増えていくでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。