2019年1月場所から立行司を務める41代式守伊之助(共同通信社)

2019年1月場所から立行司を務める41代式守伊之助(共同通信社)

「引退してからもよく聞かれたけれど、私が(後継者を)決めるような話じゃないのでね……。答えられないよ。ただ行司は土俵上(で勝敗をさばく)だけの仕事じゃないからね」

 相撲協会関係者はこう話す。

「昔は年功序列で昇進したが、1970年代初めに行司がストライキを企てたり、大一番での差し違え問題があったりして以降、成績評価がなされるようになった。勝負判定の良否はもちろんのこと、土俵上での態度や掛け声、後進の指導力、相撲字の習得など、審判部や巡業部の考査表をもとに9月場所後の理事会審査を経て、翌年の初場所で昇格する。そのため上位の行司が空位になっても、すぐに下から繰り上がるとは限らない」

 照ノ富士は第73代横綱だが、これまで木村庄之助を名乗ったのは37人だけ。ある意味、横綱よりも貴重な存在なのだ。狭き門とはいえ、「横綱の一番をさばく適任者がいない」という状況は、伝統を重んじる相撲協会にとっては「一人横綱」以上に深刻な問題のようだ。

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