子供ができる「親の認知症対策」の手続き(任意後見、家族信託、それぞれのケース)
判断能力がなくなった親に対する手立てとして一般的に知名度があるのは成年後見制度だが、家族信託にはさまざまなメリットがあるという。
「1つ目は家族に資産の管理処分を任せられることです。成年後見制度の場合、家族が後見人にまったくなれないということはありませんが、家庭裁判所が弁護士などの士業の方を後見人として選任するケースがあります。また、後見人への報酬として毎月2〜6万円程度の費用がかかる可能性があります。
2つ目は、資産管理の柔軟性が高いことです。例えば、成年後見制度の場合、後見人は当人のためになるかという観点から財産の維持・管理を行うので、当人や家族の意見が通らないこともあります。また、自宅を売却する際には家庭裁判所の許可も必要です。一方家族信託の場合、当人が事前に定めた目的に沿って管理・処分権限を事前に家族や信頼できる第三者に託す事ができるので、資産運用なども可能になるので、資産管理の柔軟性が高いと言えます」(家族信託組成サポートサービスを運営する株式会社ファミトラ)
専門家から見て、家族信託はどういった人におすすめできるか。
「認知症の対策としてはもちろんですが、“カドの立たない遺言”として活用できます。遺言だと亡くなった後にしか使えないし、親が元気なうちは、終活などに抵抗される場合も多いでしょう。家族信託は所有権が自分のままで、資産運用などもできるため“前向き”なイメージです。
はじめに20万〜30万円の諸費用がかかるため、現状は一定の資産を持った層がターゲットとされていますが、自分の資産を継承したい人は、一つの区切りとして定年の65歳を機会に考え始めるのはよいのではないでしょうか」(川部氏)
お金は家族を助けるが、争いのもとでもある。自分の家族に合った制度は何かを知ることが、トラブルを避けるための第一歩になるといえるだろう。