間もなく夏本番。気温の上昇に合わせてやってくる厄介な存在が「蚊」だ。耳元で「プ〜ン」という音が聞こえても、どこにいるか判然としない。いなくなったと思ったら、忘れた頃にまた「プ〜ン」。気づいたときには赤いポッチが猛烈にかゆみが生じる。
蚊はしつこくつきまとう害虫の代表格だが、うっとうしいだけではない。デング熱やマラリア、日本脳炎など、蚊が媒介する感染症は数多くあり、世界中で多くの人が命を落としている。日本でも、2019年に京都と奈良への修学旅行に出かけた小学生3人がデング熱に罹り、「国内感染」が発生。現在、シンガポールではデング熱患者が多く発生し、当局は「緊急事態」として警戒している。
6月に入り海外からの入国制限が緩和され、蚊が媒介する感染症がいつ持ち込まれないとも限らない。蚊の行動が活発になる夏に向けて、徹底した対策が必要になるのだ。害虫防除技術研究所所長で医学博士の白井良和さんが解説する。
「日本には約100種類の蚊がいますが、人の生活範囲にいるのは『ヒトスジシマカ』と『アカイエカ』の主に2種類です。吐き出す息に含まれる二酸化炭素や人が発する熱、水分や汗のにおいなどを敏感に察知して近寄ってきます」
蚊の特性を理解することが、対策の基本だ。「日本のファーブル」こと“昆虫博士”の奥村敏夫さんが解説する。
「蚊は花の香りにも誘われてやってきます。普段、花の蜜を吸って生活しているので、洗濯洗剤や柔軟剤などは無香料のものを選ぶといいでしょう。同様に、湿度が高いこの季節には悩みの種ですが、生乾きの衣類のにおいなどにも蚊は近寄ってくるので注意が必要です」