茂さんはボランティアの仲間たちとともに、毎日東尋坊をパトロールして歩く
余命半年の人生に光を
乳がんで余命半年と宣告されたとき、目の前が真っ暗になり、気づいたら東尋坊に立っていたというBさん。
「当時まだ30代だったBさんは、胸のしこりに気づくとすぐに近くの病院で診察を受けたそうです。そのときの診断は異常なし。しかし、腕が上がらなくなったため、今度は総合病院へ。そこで乳がんの末期だと診断されました」
絶望するBさんをこのまま放っておくのは危険だと感じ、茂さんはまず、彼女をシェルター(緊急避難場所)に誘った。さまざまな事情で逃げてきた女性たちと共同生活を送ってもらったのだ。
シェルターでの生活を通して心を少し落ち着かせたBさんに、茂さんは次の提案をする。床に30mほどのロープを置き、
「これを平均台だと思って、はみ出さないように歩いてみて」
と。最初は足元に気を取られ、何度もはみ出したのだが、
「もう少し前方を見て歩いてみよう」
と言うと顔を上げ、今度は見事、はみ出すことなく歩ききった。
「前を向いて生きていたら見えることがあると伝えたかったんです。この後、Bさんに“まだ、やりたいことがあるよね”と聞くと、“乳がんの早期発見の大切さを伝えたい”と言うではありませんか」
新たな目標を見出したBさんはその後、乳がん予防の講演活動を始め、残りの人生を精一杯生ききったという。
※女性セブン2022年8月4日号