森下さん同様、夏になると毎年のように盗撮被害を受けているというのは、関西在住のスポーツインストラクター・上田ありささん(30代)。上田さんの場合、盗撮されていると気がついても、犯人を警察につきだした経験は1度だけ。ほとんどの場合は無視するか、その場を立ち去るだけだという。しかし、露出の多いファッションが多くなる夏になると、電車に乗っていても食事をしていても、そして仕事中でも「怪しい視線」を感じる事が急増するという。
「つい最近も、バスに乗っていたら目の前に立っていた若い男の人が私の胸元をスマホで撮影していたんです。私の隣に座っていた友人男性が違和感を覚え、男性を問い詰めて発覚したのですが、音が鳴らないスマホのカメラアプリを使うのは、多くの盗撮犯に共通しているそうです」(上田さん)
この時も、盗撮犯の男が事前に上田さんの体をジロジロ見つめていたというが、まさか至近距離で盗撮までされていたとは思わなかったと語る上田さん。隠しカメラなどでなく、スマホを持ちレンズを女性に向けて、堂々と盗撮する、そんな盗撮犯が余りに多いという。
「その男性は警察に引き渡しましたが、盗撮常習犯ではなく、偶然そんな気持ちになって、その場で無音のカメラアプリをインストールし使ったと警察に話していたそうです。確かに、そんな機能のアプリの存在を知らなければ、出来心でということもなかったかもしれません」(上田さん)
結局上田さんも、警察などに「露出の多い服を控えて」と指導されたが、なぜ女性側が言われなければならないのか、納得いかないと話す。
今回、視線ハラスメントや盗撮の実態について話を聞くべく、10代から40代、10名の女性に話を聞いたが、薄着になる季節、ほぼ全員が、男性からの不快な視線を感じていると証言した。また、そのうち「盗撮された」「盗撮されたかも知れないと感じたことがある」と答えた人は半数だった。
男性からしてみれば、視線なんかでけがをする訳ではない、見られて減るもんじゃない、と女性の訴えを「大げさ」に感じるかも知れない。しかし、その「見る」犯行被害を受けた女性達の心の傷は想像以上に深く、夏の到来が憂鬱になるという女性もいたほど。視線を投げかけただけで、凝視しただけで、検挙されることはないかも知れないが、立派なハラスメントであることには間違いない。増え続ける盗撮被害と併せて、ぜひこの現状を男性達にも知って欲しいというのが、被害者達の切なる思いだ。