元・朝潮は今も部屋の3階に住んでおり…(時事通信フォト)
朝乃山の“再出発”のためにも、元・朝潮と引き離すことが必要と判断されたわけだ。
ところが、1年以上が過ぎても居座り、部屋で生活する朝乃山とも“ひとつ屋根の下”なのである。高砂部屋は「1階が稽古場で2階は大広間、3階が師匠の居宅、4階に関取の個室が3つ並び、地下は大浴場」(同前)という構造。不動産登記を確認すると土地は元・朝潮、建物も元・朝潮と夫人の所有で、元・朝赤龍には売却されていない。
角界では、親方とおかみさんが弟子と共に暮らし、体調不良や問題行動がないか管理するのが常識だ。執行部と対立して退職した貴乃花親方も、かつて部屋に同居せず槍玉に挙げられた。
現・高砂が出て行く!?
高砂部屋に聞くとマネージャーが電話口で応対。
──先代の親方が部屋の3階が住んでいる件についてお聞きしたい。
「それはこっちでは答えかねますね……」
──協会を退職した人が住んでいていいのか。
「部屋とは無関係なことなので……」
──先代がいつまでいるといった目途もない?
「こっち(現・高砂親方側)が新しい部屋を作って出ていく計画で話が進んでいますので……それぐらいで、すみません」
やはり、現状を変える必要があると認識しながら、1年以上そのままになっているのだ。
高砂部屋の現状について協会に問うと「この件はお答えを控えます」(広報部)とするのみ。
2011年に協会の公益財団法人化に向けた改革案を答申した「ガバナンスの整備に関する独立委員会」で副座長を務めた慶應大学商学部の中島隆信教授はこう言う。
「現・高砂親方に財力がないから自前の部屋を開けないのでしょう。結局、協会も部屋が個人財産だから踏み込めずに放置してしまう。非課税措置のある公益法人である以上、協会が親方衆にきちんと指示・勧告できる組織になる必要があるが、理事の親方も一門の利益代表に過ぎず、協会のガバナンスが行き届かない。かつての独立委員会でも指摘したが、改善されないままということです」
朝乃山の復活を本当に願うなら、放置してはいけない問題ではないか。
※週刊ポスト2022年9月30日号