端正な文章からは、実年齢よりも少し上の書き手のような印象も受ける。10代のころから、岩波文庫の緑帯を読みふけってきたそうで、中勘助や、芥川龍之介、寺田寅彦が好きだと言う。

「繊細なようで野太い作風はニット作品と全く同じ香りと色彩」。帯に文章を寄せる吉本ばななさんがそう書いている。懐かしさと新しさ、クラシックとポップを同時に感じさせるのは、たしかに三國さんのニットと共通するかもしれない。

「ひとりの人間から出てくるものだから、自分の周りの世界を素材にして構成する作法は同じなのかもしれないですね。私は習い下手で、人のやり方ではできないんです。編み物でも文章でも、自分なりにしかできない。いろんなものを読んだこと、これまで生きてきたこと。書き始めるまでに、私にはその両方が必要だったんだろうなといまは思います」

【プロフィール】
三國万里子(みくに・まりこ)/1971年新潟県生まれ。「気仙沼ニッティング」および「Miknits」デザイナー。著書に『編みものこもの』『編みものワードローブ』『きょうの編みもの』『ミクニッツ 大物編・小物編』など。妹は料理家のなかしましほさん。姉妹の共著に『スール』がある。三國さんの前に座る人形は、本書カバーのためにロシアの作家サシャ・ルネヴァさんが制作したもの。三國さんの編んだニットを着ている。

取材・構成/佐久間文子

※女性セブン2022年12月15日号

書影

『編めば編むほどわたしはわたしになっていった』

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