スポーツ

【猪木さんへ最後の手紙】野末陳平氏「死に際までカメラに撮らせたのは最高の発想でした」

アントニオ猪木さんへ野末陳平氏から最後の手紙(時事通信フォト)

アントニオ猪木さんへ野末陳平氏から最後の手紙(時事通信フォト)

 激動の2022年が幕を閉じようとしている。思い返せば今年は政財界や芸能界で多くの著名人がこの世を去った。愛して止まないあなたへ。野末陳平氏(放送作家)がアントニオ猪木さん(10月1日没、享年79)へ“最後の手紙”をしたためた。

 * * *
 もし今、君と元気に話ができるなら、「あの日、1時間もの間、なぜお互いに何も喋らなかったんだろうね」と語りかけたい。

 あれは長崎の五島列島で新日本プロレスの巡業をやった時のことだった。興行が始まる夕方までやることがなくて暇だった昼間、君は僕に「釣りでも行きますか」と声をかけてきたんです。

 二人とも釣りなんてしたことないのに、岩場だらけの危ない場所で、島の漁師に聞いて餌をもらって釣り糸を垂らした。野次馬も釣り人もいない岩場で、二人きりで無言の1時間を過ごした。

 君も話しかけないし、僕も話しかけない。釣りに夢中だったわけだけど、結局何も釣れなかった。僕はこの不思議な時間のことを、「せっかく猪木と二人きりなのにもったいなかった」と今でも思い出します。

 そしてもう一つ、僕には聞きたいことがある。

「1983年6月2日、蔵前国技館でのホーガン戦の真相はなんだったのか。君はどこまで意識があったのか」と。

 僕は当時、新日本プロレスのコミッショナーを務めていて、重要なタイトルマッチでは勝者に賞状を渡すために、必ず本部席に座っていた。

 試合中、ホーガンの一撃でリング下に転落、気絶した君は仰向けで失神KO負けしました。猪木の勝利を予想していた会場全体は大騒ぎになり、試合の大体の流れを予測しているレフェリーや対戦相手のホーガンでさえも大慌ての様子だったのを今でも覚えています。

 結局、弟子たちの緊急手当ての後、担架に乗せられて救急車で運ばれたけど、会場は収拾がつかない状態で、静まるまで10分くらいかかった。

「猪木失神KO」はその後、伝説となり、今でも諸説渦巻いている。医者のなかには、「失神した人間が舌を出すわけがないだろう」と言う者もいたしね。

 君は事件以後、最後まで真相を語りませんでしたし、僕も生前訊ねることはできませんでしたが、「もう昔の話だからいいんじゃない? 実は途中で意識を取り戻していたんじゃない?」とやっぱり聞きたかったなあ。

 政治家でもあった君は、人間としても魅力的でした。参院選初出馬の時に君が立ち上げた「スポーツ平和党」。スポーツを通して平和を実現するとの政治信条をわかりやすく伝えたけれど、僕はそれでは票が集まらないと踏んでいた。それでも当選したのは、党名以上に、君という存在の影響力が大きかったのだと思います。

関連記事

トピックス

無罪判決に涙を流した須藤早貴被告
《紀州のドン・ファン元妻に涙の無罪判決》「真摯に裁判を受けている感じがした」“米津玄師似”の男性裁判員が語った須藤早貴被告の印象 過去公判では被告を「質問攻め」
NEWSポストセブン
激痩せが心配されている高橋真麻(ブログより)
《元フジアナ・高橋真麻》「骨と皮だけ…」相次ぐ“激やせ報道”に所属事務所社長が回答「スーパー元気です」
NEWSポストセブン
Instagramにはツーショットが投稿されていた
《女優・中山美穂さんが芸人の浜田雅功にアドバイス求めた理由》ドラマ『もしも願いが叶うなら』プロデューサーが見た「台本3ページ長セリフ」の緊迫
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン
結婚披露宴での板野友美とヤクルト高橋奎二選手
板野友美&ヤクルト高橋奎二夫妻の結婚披露宴 村上宗隆選手や松本まりかなど豪華メンバーが大勢出席するも、AKB48“神7”は前田敦子のみ出席で再集結ならず
女性セブン
スポーツアナ時代の激闘の日々を振り返る(左から中井美穂アナ、関谷亜矢子アナ、安藤幸代アナ)
《中井美穂アナ×関谷亜矢子アナ×安藤幸代アナ》女性スポーツアナが振り返る“男性社会”での日々「素人っぽさがウケる時代」「カメラマンが私の頭を三脚代わりに…」
週刊ポスト
NBAロサンゼルス・レイカーズの試合を観戦した大谷翔平と真美子さん(NBA Japan公式Xより)
《大谷翔平がバスケ観戦デート》「話しやすい人だ…」真美子さん兄からも好印象 “LINEグループ”を活用して深まる交流
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「服装がオードリー・ヘプバーンのパクリだ」尹錫悦大統領の美人妻・金建希氏の存在が政権のアキレス腱に 「韓国を整形の国だと広報するのか」との批判も
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《私には帰る場所がない》ライブ前の入浴中に突然...中山美穂さん(享年54)が母子家庭で過ごした知られざる幼少期「台所の砂糖を食べて空腹をしのいだ」
NEWSポストセブン
亡くなった小倉智昭さん(時事通信フォト)
《小倉智昭さん死去》「でも結婚できてよかった」溺愛した菊川怜の離婚を見届け天国へ、“芸能界の父”失い憔悴「もっと一緒にいて欲しかった」
NEWSポストセブン