映画監督の井筒和幸氏(写真/共同通信社)
夜明け前の寒い時間帯で、でも動けないし、「寒いわー」とか言えば誰かが毛布をかけてくれたり、「ちょっと中井貴一さん、タバコくれへん?」て頼むと火をつけて渡してくれたり。崔さんが「何でお前が一番偉そうなんだ」なんて言って、俺は「死体なんだし、ざまあみやがれ」って返してみたり。あれで心から気が晴れたし、ガンバろうと思った。
『マークスの山』に呼んでくれたおかげで久しぶりに映画現場を味わったし、松竹のプロデューサーとの縁もできた。それで『岸和田少年愚連隊』の企画が話題に上って「やろうか」って話になった。きっかけを作ってくれたのはあなただったんだ。
映画撮るにはこれからだったよ。60代はまだ小僧、70代からが映画作家として一番研ぎ澄まされた表現ができる時だよ。本当、惜しい人を亡くしたよ。崔さん。
※週刊ポスト2022年12月23日号