質疑応答で大内氏が語ったこと
劇団内では谷氏がキャスティング権を握っており、大内氏は明確な抗議をしづらい立場だった。また、東日本大震災の被災者である大内氏は「福島の復興に貢献したい」と考えており、谷氏の「福島の浜通りでいつか演劇祭をやるから、お前も手伝うんだぞ」という言葉を信じて耐えてきた。しかし、演劇祭には結局関与できず、心身に不調をきたし、今年6月にうつ病との診断を受けた。
会見では質疑応答もあった。「なぜこのタイミングの告発になったのか?」という質問に対して、大内氏は「谷が福島に移住するという話があってから、怖くて怖くて仕方なかった。何も知らない福島県民や、演劇のことが大好きな人たちがハラスメント被害を受けることを未然に防ぐため公演前に告発したいと考えていた。そして上演が始まってからだと、舞台を観たお客様たちが傷つくと考えた」とコメントした。
谷氏は代表作『福島三部作』など福島県をテーマとした作品を手がけてきたが、大内氏は「谷は福島出身と記載しているが、小学校から千葉に移住したので、育ちはほぼ千葉県」と指摘した。そのため作品の方言指導・監修は自身を含めた地元の俳優たちが無償で担当していたという。
記者から「そういった俳優の関与を公表しないまま、谷さんは『福島三部作』で岸田國士戯曲賞などを受賞している。そこに考えるところはあるか」と疑問を投げかけられると、大内氏は「被災者に対する搾取だと感じている。『谷さん、そこもはっきりしないといけなかったんじゃないか?』とやるせない気持ちもある」と答えた。
大内氏の告発を受けて、谷氏は〈事実無根〉と反論する文章をインターネット上に投稿している。今回の会見の中で、大内氏は「事実無根では絶対ない。事実無根だと言うことは、被害者の口封じになると思う」と彼を厳しく批判した。谷氏から被害を受けた人々をほかにも把握しているとして、「あの声明文によって、全被害者の口封じをしたと思う。絶対に許されることではない」と断言した。