TVer、Twitterの数字も番組の評価
朝の生放送番組では異例のTVerでの見逃し配信にも踏み切ったのも番組が広く見られるきっかけのひとつになった。
「やっぱり『配信してほしい』というネットの声が大きかったですね。なんとか色んな人に番組に接点を持ってもらいたいという一心だったんで。Twitter上でのキーワード発表を始めたのも何かしら話題を作りたい、そのためにはどうしたらいいんだということから始めました。そこから普段テレビを見ていない人にも見る機会を生み出したいなと考えたんです」
とはいえ、配信は、様々な部署がかかわるため簡単にはいかなかった。
「もともと常識的に朝の生番組の見逃し配信するなんてことはないから難航しましたね。権利処理を含めて、会社の色々な部署を巻き込んで色んな人の手が加わった上で、朝、放送したもののうちオープニングをまず昼に出して、後半を夜に出す。これは想像している以上に大変なことなんですけど、関係各所が協力してできた異例のことだったと思います」
こうした取り組みの甲斐があり、これまでの視聴者層とは違う層の開拓に成功しつつある。
「TBSでいうとファミリーコアと呼んでいる若い世代の視聴率と個人視聴率、そしてこれまでの世帯視聴率というものがありますが、『ラヴィット!』の場合は、ファミリーコアを取らなければならないという使命があるんです。けれど、開始当初よりは上がってはいますが、まだまだトップではないんです。それでも最近は視聴率だけが番組の評価基準ではないという肌感覚もあって、例えばTVerの再生数やマイリストの数だったりも大事になってきています。Twitterでの反響も含めて、番組を好きでいてくれる人やその濃さもとても大事な評価基準に加わっている感じがします」
『ラヴィット!』に濃いファンがついていることを示すエピソードがある。最近、大学生や高校生の視聴者から番組の話を聞かせて下さいというメールが届くことがあるというのだ。辻は時間があれば極力対応しているのだが、先日は滋賀県の女子高校生が自由研究の取材でたった1人で上京して話を聞きにきたのだそう。そんな風に彼女の心を動かし、行動に移させることができたことでテレビの仕事の魅力を再確認した。
「自分が作ったもので、多くの人の心を動かせることって、テレビ 以上のものはないんじゃないかなって、私はいまだに思ってます。人を楽しませるためにひたすら一生懸命考える。どうやったら笑ってくれるかと夜遅くまで皆で知恵を出し合う。それが仕事になるなんてめちゃくちゃ素敵な仕事だと思うんです。だからこそ番組を深く濃く好きでいてくれる人がいるのはとても嬉しいし、できるかぎり増やしていきたいと思っています」
(了。前編から読む)
【プロフィール】辻有一(つじ・ゆういち)/1983年生まれ。2006年にTBS入社。営業や編成を経て念願のスポーツ局を3年間経験。現在はバラエティ制作局にて『ラヴィット!』、『坂上&指原のつぶれない店』、『それSnow Manにやらせて下さい』を担当。
◆取材・文/てれびのスキマ 1978年生まれ。ライター。戸部田誠の名義として著書に『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『タモリ学』(イーストプレス)、『芸能界誕生』(新潮新書)、『史上最大の木曜日 クイズっ子たちの青春記1980-1989』(双葉社)など。