その違和感が的中する。演説が始まる直前に“山上風”の男が不審な動きをし始めたのだ。
「聴衆の前から、4〜5列目くらいにいた、自分の3メートルくらい先にいた男が突然なにかしらの物体を投げたため、警察や周囲の聴衆たちで飛びかかって取り押さえました。そうして男が取り押さえられて20秒くらい経ってから、すごい爆発音が鳴って、本当に爆発したから、これはえらいことになったと騒然となりました」
その後、現場はさらに混乱することになる。
「そして、さらにもう一つ、爆発物と見られるものがあったようで、“逃げろ!”となり、自分も離れたところに避難したんです。そうした混乱もあったからか、男が取り押さえられてからパトカーで連れて行かれるまでは10分くらいかかっていたと思います」
このような現場で、木村容疑者の動きを身を呈して抑えたのは、警護官(SP)ではなく地元の漁港関係者と見られる男性2名だった。ネット上で拡散する事件現場の動画から、この関係者らに対し「漁師のおっちゃん最強」などと、賞賛の声が相次いでいる。
2022年7月に安倍晋三元首相が奈良市で参院選の応援演説中に銃撃され死亡。同事件では山上徹也被告(殺人罪などで起訴)が手製銃で弾丸数発を2回発射している。この事件を機に要人警護のあり方が見直されていたが、そのさなかでの出来事になった──。