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【江夏豊×江川卓対談】オールスター連続奪三振 「9連続」江夏を抜こうとした「8連続」江川の本音

オールスターの連続奪三振の思い出を振り返る

オールスターの連続奪三振の思い出を振り返る

 昭和のプロ野球の顔として活躍した江夏豊(75)と江川卓(68)。ともに奪三振で球場を沸かせる「剛腕」として鳴らしたふたりが、今回、久しぶりに顔を合わせた。2人を語る上で避けて通れないのは、オールスターの連続奪三振の思い出。「9連続」を達成した江夏に対し、江川は「8連続」で終わったが、そのウラには……。【全4回の第3回。第1回から読む

 * * *
江川:「9連続三振」は何回目のオールスターの時にやったんですか?

江夏:何回目だったかな(実際は5回目)? あの年(1971年)は、前半6勝9敗と調子悪かったんだけど、ファン投票1位で選ばれたんだよな。

江川:調子が悪い時にオールスターに選ばれると、相手が舐めてかかってくるんですよね。僕も(1984年に)8連続をやりましたけど、その時は9人目のツーナッシングまでいったんです。江夏さんならわかりますよね、ツーナッシングってことは9つ目取れますよね。取ってませんけど。

江夏:まぁ、取ってから言えよ。

江川:そうなんですよね。江夏さんだけですよ、そう言ってくれるのは。改めて思いますが、取っておけば良かったなぁ。

江夏:それこそお前がオールスターで8個まで取った時、俺はラジオを聴きながら麻雀をしとった。8つまでいって、「もう9つはいくやろ」と思ってたから、ラジオを切ってもらったのを覚えてる。

江川:ご覧になってなかったんですね。とにかくあのシーズンはずっと肩痛で苦しんでいたのに、オールスターの登板日だけ肩が痛くなかったんです。5人目の六番・落合(博満)さんを三振に取った時にはいけると思いました。

 8つ取って、9人目のバッター大石大二郎くんをツーナッシングに追い込んだ瞬間に思い浮かんだのは、『江夏に次いで2人目』という新聞一面の見出し。だから、(並ぶのではなく)絶対に抜こうって思ったんですよ。ワンバウンドのカーブで振り逃げさせて、10連続を狙おうと。

江夏:投げてて、新聞の見出しなんか浮かぶか?

江川:浮かんだんです。今、作った話じゃないですから。2人目は嫌だなって思って。江夏さん、絶対に『俺の次やろ』って言うだろうなって。でも、カーブはワンバウンドせずセカンドゴロに。余計なこと考えずに並んどけばよかったかな~。失敗したな。

江夏:それくらいしかないからな。お前が記録で並ぶって言ったら。

(第4回に続く。第1回から読む

【プロフィール】
江夏豊(えなつ・ゆたか)/1948年、兵庫県生まれ。1967年に阪神タイガース入団後、南海、広島、日本ハム、西武と渡り歩く。1984年に引退。シーズン401奪三振、最優秀救援投手5回は現在も日本記録。通算206勝、193セーブ。オールスターでの9連続奪三振、日本シリーズでの「江夏の21球」など様々な伝説を持つ。

江川卓(えがわ・すぐる)/1955年、福島県生まれ。作新学院にて数々の記録を達成した後、法政大学に進学しエースとして活躍。米・南加大野球留学を経て、1979年に読売ジャイアンツに入団。MVPなど多数の記録を残し、1987年に引退。現在は野球解説など多方面に活躍中でYouTubeチャンネル「江川卓のたかされ」が話題。

【聞き手】
松永多佳倫(まつなが・たかりん)/ノンフィクション作家。1968年、岐阜県生まれ。琉球大卒業後、沖縄に完全移住し執筆活動開始。『確執と信念 スジを通した男たち』(扶桑社)、『第二の人生で勝ち組になる 前職:プロ野球選手』(KADOKAWA)など著書多数。

※週刊ポスト2023年6月9・16日号

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