2001年12月に短銃使用基準が見直されたとき、警察庁が初公開した実弾を使った警察官の短銃射撃訓練。東京・小平市の関東管区警察学校(時事通信フォト)
「年間実射訓練は何回と決められていたので、ノルマは達成しなければならないようになっていた」という。訓練では「数十人が横一列に並んで、右用意、左用意、撃ち方用意といった感じで、一斉にドドーンです。実射の前に、空撃ちを何度も繰り返して訓練していました。その他にも模擬弾での訓練を毎月行っていました」(I氏)
模擬弾と聞いてゴム弾を想像したが、警察で特殊訓練弾と呼ばれるそれは「プラスチックの硬い物だった」だとI氏はいう。「拳銃は貸与されている本物を使うので、実弾と同じサイズです。実弾は薬莢の中に火薬が入っていますが、模擬弾には火薬が入っていません。それでも10メートルくらいは飛びますから、銃の扱いには細心の注意を払います」。射撃訓練は警察学校で行われることが多く、瞬時に使用が適切かを判断させるため、特殊なスクリーンに映像を映し出して行う映像射撃訓練装置を用いて行われることもあったという。
そのような訓練を繰り返し、射撃技術が高い者は各県警や警視庁がそれぞれ行う拳銃射撃大会に出場する。出場経験のあるI氏に大会について聞くと「拳銃は暗夜に霜が落ちるように静かに静かに引き金を引かないと、的に弾が当たらないのです。力いっぱい引いたら、銃口がガクッと下がって、弾はどこかに飛んで行ってしまいます。ゆっくり静かに、撃鉄が落ちるのを待つのです」という。「ですが、突発的な相手に向けて撃つ時は、力一杯引くしかありません。その訓練はまた別にやっていた」。状況に応じて訓練内容は変わり、引き金を引くための技術だけでなく、そこにはより適正な判断が求められる。
I氏が言うように「拳銃は人を殺める道具」。だからこそ操法技術の習得と適正な使用判断、厳格なルールの徹底が求められ、万全の体制や対策の上で訓練が行われてきた。だがいくら技術が向上させても、拳銃を握る人間の心の中まで統制することは難しい。そこをどう把握し判断していくのかが大きな課題だろう。