カナダ西部のバンクーバーに本部を置くシンクタンク「フレーザー研究所」は9月19日、最新の「世界経済自由度」報告書を発表した。これまで28年間連続で世界1位だった香港が首位から2位に陥落、シンガポールが1位となった。香港が2位となった理由について報告書は「中国が香港の法治に介入している」と説明している。香港政府は「報告書の評価は偏向的で事実誤認が多く、公平性が疑われる」などと批判した。香港各紙が報じた。
報告書は経済自由度について「政府の規模」、「司法制度と財産権」、「健全な通貨」、「国際貿易の自由」、「規制」などの項目で採点。その結果、香港は0.01ポイント差でシンガポールの後塵を拝し、最も自由な経済ランキングの首位を初めて失った。このランキングは2021年の世界貿易機関(WTO)による集計データ統計に基づいている。
報告書では、かつての香港は外資の自由度が高かったが、ここ数年は中国が香港の法治に介入しており、香港の司法の独立性や裁判所の公平性に対する対外的な信頼が弱まっていると指摘。さらに、中国が香港国家安全維持法を施行させたことで、従来の「1国家2制度」という香港の独立性が失われたほか、民主化運動などで逮捕された被告に終身刑を科していることの影響もあり、香港の評価が2010年の最高点9.19から8.55まで下がっているとしている。
香港政府は「中国が香港の法治に介入している」という記述について、「完全に架空のものであり、事実に反する」などと反発し、香港の「国際貿易の自由度」はこれまで通り世界一であると主張した。
しかし、スイスのローザンヌにある国際経営開発研究所(IMD)が今年6月に発表した最新の「世界競争力年鑑2023」では、デンマークが2年連続で「世界で最も競争力のある国」と評価された一方、北京による管理強化にさらされている香港は前年度の世界5位から2ランク下落。地域のライバルであるシンガポールに3ランク差をつけられて、台湾に次ぐ世界7位となっている。