芸能

【追悼】お別れの会が開かれなかった奈良岡朋子さんの言葉「たとえいい話であっても、生前のエピソードを語られるのがイヤ」

2013年に上演された奈良岡さんの一人芝居『黒い雨-八月六日広島にて、矢須子-』の舞台写真

2013年に上演された奈良岡さんの一人芝居『黒い雨-八月六日広島にて、矢須子-』の舞台写真

 2023年3月23日、演劇界を代表する女優で、劇団民藝の代表を務める奈良岡朋子さんが肺炎のため亡くなった。

「『私が死んでも絶対に葬式はやるな』という奈良岡さんの強い遺志に従い、お別れの会も行わないと劇団から発表されると、すぐにドラマプロデューサーの石井ふく子さん(97才)から連絡があったんです」と言うのは、劇団民藝代表を務める丹野郁弓さんだ。

「石井先生は、『朋子さんがかわいそう』とお怒りでしたが、奈良岡さんは自分がいないところで、たとえいい話であっても、生前のエピソードを語られるのがイヤだと言っていたんです。『反論できないじゃない』と。それで奈良岡さんの希望を通させていただいたんです」(丹野さん・以下同)

 丹野さんは、奈良岡さんの兄の娘、つまり姪に当たる。身内であっても、劇団内では女優と演出家としての関係。プライベートで深くかかわることはなかったが、奈良岡さんが80才になり、運転免許証を返納してからは、送り迎えを担当。生活にかかわることも増えたという。

「姪としては、そろそろ引退して、ゆっくり過ごしてもらいたいと考えるところですが、演出家としては、『劇団を代表する女優が強い信念を持って、いまだに芝居を続けたがっている』のだから、最後まで女優の仕事をまっとうさせてあげたいと思ったんです。そのための段取りを組んであげたいと……」

 ライフワークとしていた奈良岡さんの一人芝居『黒い雨』を、90才になった2020年には5都市で上演した。

「歩くのがつらくて車いすに乗っていても、舞台のソファに座ると女優スイッチが入る。上演後は舞台袖までスタスタと歩ける。それが女優としてのプライド。厳しい人でしたが、覚悟を持って演じる姿は、まぶしく輝いていました。

 呼吸が苦しいと連絡があって入院してから、24時間で逝ってしまって……。その後、自宅に行ったら、机の上にレポート用紙があって、そこに別れの言葉が書かれていたんです。

《新たな旅が始まりました。旅好きの私のことです、未知の世界への旅立ちは何やら心が弾みます。

 向こうへ着いたらすぐに宇野さんを訪ねます。もう一度あの厳しい演出を受けたいと長い間願ってきました。でもね、宇野さん、私はあなたよりずっと長く生きて経験を積んできましたからね、昔のデコじゃないですよ。「デコ、お前ちっとましになったな」と言われたくてこれまで頑張ってきたんですから。腕が鳴ります。杉村先生とももう一度同じ舞台を踏みたかった。どんな役でもいいからご一緒したい。ワクワクします。

関連記事

トピックス

自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
結婚披露宴での板野友美とヤクルト高橋奎二選手
板野友美&ヤクルト高橋奎二夫妻の結婚披露宴 村上宗隆選手や松本まりかなど豪華メンバーが大勢出席するも、AKB48“神7”は前田敦子のみ出席で再集結ならず
女性セブン
NBAロサンゼルス・レイカーズの試合を観戦した大谷翔平と真美子さん(NBA Japan公式Xより)
《大谷翔平がバスケ観戦デート》「話しやすい人だ…」真美子さん兄からも好印象 “LINEグループ”を活用して深まる交流
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「服装がオードリー・ヘプバーンのパクリだ」尹錫悦大統領の美人妻・金建希氏の存在が政権のアキレス腱に 「韓国を整形の国だと広報するのか」との批判も
NEWSポストセブン
野球人・江夏豊が球界に伝えておくべきことを語り尽くす(撮影/太田真三)
【江夏豊インタビュー】若い才能のある選手のメジャー移籍は「大いに結構」「頑張ってこいよと後押ししたい」 もし大谷翔平と対戦するなら“こう抑える”
週刊ポスト
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《私には帰る場所がない》ライブ前の入浴中に突然...中山美穂さん(享年54)が母子家庭で過ごした知られざる幼少期「台所の砂糖を食べて空腹をしのいだ」
NEWSポストセブン
亡くなった小倉智昭さん(時事通信フォト)
《小倉智昭さん死去》「でも結婚できてよかった」溺愛した菊川怜の離婚を見届け天国へ、“芸能界の父”失い憔悴「もっと一緒にいて欲しかった」
NEWSポストセブン
11月下旬に札幌ススキノにあるガールズバーで火災が発生(右はInstagramより)
【ススキノ・ガルバ爆発】「男は復縁の望みをまだ持っていた」火をつけた男は交際相手A子さんを巻き込んで死のうと…2匹の犬を失って凶行に
NEWSポストセブン
再婚
女子ゴルフ・古閑美保「42才でのおめでた再婚」していた お相手は“元夫の親友”、所属事務所も入籍と出産を認める
NEWSポストセブン
54歳という若さで天国に旅立った中山美穂さん
【入浴中に不慮の事故】「体の一部がもぎ取られる」「誰より会いたい」急逝・中山美穂さん(享年54)がSNSに心境を吐露していた“世界中の誰より愛した人”への想い
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《真美子さんのバースデー》大谷翔平の “気を遣わせないプレゼント” 新妻の「実用的なものがいい」リクエストに…昨年は“1000億円超のサプライズ”
NEWSポストセブン