新型コロナ対策の持続化給付金約10億円の不正受給にかかわっていたグループの捜査は2023年12月までかかった。リーダー格である谷口光弘容疑者は逃亡していたインドネシアから2022年6月に強制送還され逮捕(AFP=時事)
区役所の窓口で「返す金を貸して欲しい」
コロナ禍における中小企業経営者や個人事業主の苦しさと言ったら、想像を絶するものだっただろう。特に居酒屋は、飲酒の席が感染しやすいからと様々に制限され、客からも敬遠された。しかし、それでも歯を食いしばって乗り越えた市民が大半であり、血税が原資である給付金を不正に受給することは、やはり許されないのである。しかし、不正受給に関与した人の中には、自分の行いの清算すらできない人もいるようだ。
関東南部の区役所勤務・富田真二郎さん(仮名・40代)が明かす。
「役所に来て土下座したり、200万円にして返すと泣きつかれたこともあります。ただ、所管が違うし、我々に直談判されても困るというのが正直なところです」(富田さん)
実は、不正受給者の氏名公表が始まって以降、各地の役所窓口を訪ねる不正受給者がいた。皆、自身の不正受給を認めつつ、謝罪や金の返却でもって「見逃してもらおう」という魂胆でやってきていたらしい。
「経産省のコールダイヤルを案内したり場合によっては警察に行ってくれと言うのですが……泣きつかれたり逆ギレされたり。中には、返す金を貸して欲しいとか、自殺を仄めかす人もいたりして、職員も閉口していました。コロナで大変だったのはわかりますが、不正は不正ですからね」(富田さん)
現在、経産省が実名公表している持続化給付金の不正受給者数は、全国で411の個人と団体だ。他にも、家賃支援金、一時支援金などの不正受給者も合わせると不正受給認定者は500近い規模で、この数は今後も増え続けるだろう。
経産省のリストで公表されてしまった別の女性は「ネットで自分の名前を検索すると、住所がつづいて出てくる」(※市区町村名まで)と、氏名以外の情報も付随していることが不安でならない。このリストがネットに存在することで、検索エンジンのサジェスト汚染についても不安を抱き、将来が真っ暗だと嘆いていた。
過去のことのように思う人もいる新型コロナウイルスによる災厄は、現在進行中だ。とくに不正受給者のコロナ禍の清算は、まだまだ終わりが見えないようだ。