サイレンススズカ一覧

【サイレンススズカ】に関するニュースを集めたページです。

東京競馬場
コロナ禍で競馬人気再燃 新規ファン「パチンコの代わりに」「『ウマ娘』見て」
 日本中央競馬会(JRA)は3月19日、2020年の決算について、勝馬投票券(馬券)収入と事業収入を合わせた事業収益が、前年比約884億円増の約3兆207億円(うち馬券収入が約3兆15億円)と発表した。3兆円を超えるのは17年ぶり。純利益は約615億円だった。新型コロナウイルスの影響から、無観客開催や場外馬券売り場の一時営業休止があったが、電話・インターネット投票会員数が大幅に増えたという。 競馬人気再燃の様相だが、コロナ禍で競馬を始めたという人も少なくないようだ。「コロナ禍で時間をもてあましていたところ、祖父のすすめで競馬を始めました。だから、まだ一度も競馬場に行ったことはありませんが、今度、東京競馬場に行ってみようと思っています。無観客じゃなくなったら、祖父が連れてってくれるというので、楽しみにしています」 そう嬉しそうに話すのは、IT企業に勤める20代の男性会社員・Aさんだ。パチンコやスロット、競艇など、ギャンブルの類はこれまで一切やったことがなかったが、競馬には惹かれる部分があったという。「スポーツを楽しむように、純粋に面白い。個性が強くて、走り方や血統も違います。注目されていない馬の勝利や、強い馬が激突する構図も好きです。ただ、当てるのはまだまだで、枠連(1着と2着に入る馬の枠を予想)を1000円分買ったことがありましたが、ダメでした……。ほどほどに楽しみます(笑い)」(Aさん) 一方で、パチンコから競馬に“転向”したという人もいるようだ。建設業界で働く40代の男性会社員・Bさんは、コロナ禍でパチンコ店に行かなくなる日々の中で、競馬にハマり始めたという。「コロナの感染拡大が報じられるようになってから、パチンコ店通いは一時中止。でも、やはり何かお金を使いたいという欲求が出てきて、久しぶりに競馬をやってみました。無観客でもネットで買えるというのはいいですよね」(Bさん) Bさんはあらためて競馬に夢中になっている。どこに魅力を感じているのだろうか。「ドキドキしながら勝ったときの興奮はパチンコにはないもので、いいですね。SNSの情報も参考にして馬券を買って、1万5000円が6万円くらいになったこともあって、案外パチンコよりもいいかもと思っています。パチンコ仲間も次々と競馬を始めていて、彼らと予想を語り合うのがまた楽しいです」(Bさん) アニメの影響から競馬に興味を持った人もいる。メーカーで働く30代の男性会社員・Cさんは、2018年に放映された競走馬を擬人化したアニメ『ウマ娘 プリティーダービー』に感動し、競馬を始めるようになったという。「アニメで『サイレンススズカ』という速い馬が故障してしまうんです。演出なのかなと思ったんですが、1998年天皇賞(秋)で本当に骨折していたことを知りました。そこから競馬にはドラマがあると思うようになり、少額ですが馬券を購入するようになりました」(Cさん) 今年はアニメ2期、さらにスマホゲームは事前登録から約3年の時を経てリリースされた。Cさんは競馬のドラマ性の高さにすっかり心酔している様子だ。「アニメ2期では『ライスシャワー』、『トウカイテイオー』、『ツインターボ』の奮闘に号泣。ゲームでは『サイレンススズカ』を勝たせたい一心でした。ただ、過去の馬のドラマを見るのもいいですが、やはりリアルタイムで見たい思いにも駆られています。奇跡の目撃者でありたい」(Cさん) コロナ禍で競馬人気がさらに加速するか?
2021.03.29 16:00
マネーポストWEB
ナリタブライアン(時事通信フォト)
歴代名馬が今年のジャパンカップに出たら…妄想レース実施
 三冠馬が3頭揃う「奇跡のドリームレース」となった今年のジャパンカップ。歴代最多GI8勝のアーモンドアイは2枠2番、史上初の無敗の牝馬三冠を達成したデアリングタクトは3枠5番、3頭目となる無敗でのクラシック三冠達成のコントレイルは4枠6番に入った。 今年のJCはまさに現役最強馬を決める一戦となった。では、歴代の名馬と比べるとなればどうか。 本誌・週刊ポスト読者800人に「もう一度その走りが見たい競走馬」アンケートを実施。その結果、第1位ディープインパクト、第2位オグリキャップ、第3位キタサンブラック、第4位サイレンススズカ、第5位ナリタブライアンという結果となった。史上最強といわれたサラブレッドや社会現象となったアイドル馬が並んだ。 名前が挙がった歴代の名馬がもし今年のJCに出走したらどうなるか──もちろん、時代とともに血統や調教施設が進化し、レース数の増加やコース整備などが進んだため一概には強さを測れないが、競馬ファンなら誰もが「あの馬が最強のはず」との思いがあるのではないか。ここでは平成以降の競走馬を取り上げていこう。 専門家たちが「歴代ナンバーワン」と口を揃えるのは読者アンケートでも1位となったディープインパクトだ。「今年のJCに出てきたとしても、他を圧倒するでしょう。道中で2~3番手につけるアーモンドアイがいて、それをマークする形で少し後ろにコントレイルがいる。後方にはデアリングタクトが待機し、最後方にディープインパクトが位置するはず。最後の直線で武豊騎手をして『飛んでいるようだ』といわしめた末脚で3頭をまとめて差してくれるのではないか」(競馬評論家・阿部幸太郎氏) そう話す阿部氏だが、「もう1頭、その争いに参戦してほしい馬」として名前を挙げたのが国民的な人気を博したオグリキャップだ。単なるアイドル馬と侮ってはいけない。「外国馬が席巻していた時代でありながら、1989年のJCではあわやというクビ差まで迫った。JCという舞台なら、番狂わせを期待させてくれる馬です」(前出・阿部氏) その他にも、「オルフェーヴル(アンケート6位)は日本の馬が勝ったことのない仏凱旋門賞で2度も2着に入っている。大舞台での強さは際立っている」(スポーツ紙担当デスク)など“歴代最強”についての議論は尽きない。 アンケートで4位に挙がったサイレンススズカは1998年の天皇賞(秋)でレース中に故障し安楽死処置となった悲運の名馬。JCへの出走は叶わなかった。「“異次元の逃亡者”の異名をとった逃げ馬が出走すれば、ペースは間違いなく変わります。JCはサイレンススズカが勝ってきたレースより距離が長いが、競馬ファンからすると、そのまま逃げ切る展開を想像してしまいますね」(元JRAジョッキーでホースコラボレーターの細江純子氏)※週刊ポスト2020年12月11日号
2020.11.28 07:00
週刊ポスト
昨年の宝塚記念に出走したキセキ。右は角居調教師
フルゲートで大混戦の宝塚記念 同厩舎複数頭出しは狙えるか
 今年の春のグランプリは多士済々フルゲートでの決戦となった。競馬ライターの東田和美氏が分析する。 * * * 異なる路線を歩んできた馬が一堂に会するのが宝塚記念本来の醍醐味。そんなことで同一厩舎による複数頭出しが多い。GⅠのわりにフルゲートになることが少なく、阪神内回りの2200mということで、多少まぎれもある。春競馬のクライマックスでオーナーの意向もあり、GⅠ路線を歩んでこなかったオープン馬でも「出られるのなら」と出走に踏み切るケースもあるようだ。わが出資馬も、かつて準オープンの分際で出走したことがあるぐらいだ。 宝塚記念での同厩舎複数頭出しはこれまで27厩舎が40回。池江泰寿厩舎は2011年の5頭出しを含めて5回とダントツ。複数頭出しを2回以上経験しているのは、平成以降では橋田厩舎と橋口弘次郎厩舎が3回、藤沢和厩舎、音無厩舎、角居厩舎が2回ずつ。 2頭出しとなると、担当馬の違う厩務員や助手同士がギクシャクして、厩舎内での人間関係が悪くなるのでは、と勘繰ってしまいそうだが、いまは多くの厩舎が「チーム」として機能している。GⅠに2頭出しするような厩舎は当該週の他のレースにも多くの出走馬が控えており、それぞれが勝利を目指しているので厩舎内の競争意識がマイナスに働くことはないのだろう。かつてGⅠ複数頭出しについてある調教師に聞いたところ「大変なのは取材への対応」というなんとも切実な答えが返ってきた。 複数頭出しで宝塚記念を勝ったケースは平成以降で5回(カッコ内は別の出走馬の成績)。二ノ宮厩舎以外は、いずれも「複数頭出しの常連」である。1998年 橋田厩舎  サイレンススズカ(ゴーイングスズカ4着)2010年 二ノ宮厩舎 ナカヤマフェスタ(アクシオン15着)2012年 池江厩舎  オルフェーヴル(マウントシャスタ5着、トゥザグローリー12着)2015年 池江厩舎  ラブリーデイ(トーセンスターダム12着、オーシャンブルー14着)2018年 音無厩舎  ミッキーロケット(ダンビュライト5着) 今年も複数頭出しの経験がある角居厩舎が3頭、音無厩舎が2頭出走。とくに角居厩舎は、藤沢和厩舎に次ぐJRAGⅠ26勝だが、宝塚記念は数少ない未勝利GⅠ。これまでのべ13頭が出走しながら2着が3回。昨年もキセキが1番人気に推されながら、道中ではリスグラシューにマークされ、最後は突き放される悔しい結果だった。来年2月いっぱいでの引退を表明しているため、今年が最後のチャンスになる。 しかも今年は1番人気が予想されるサートゥルナーリアと、昨年の1番人気馬キセキというGⅠ馬2頭。もう1頭も初GⅠの天皇賞(春)で5着と健闘したトーセンカンビーナで、けっして「出られるなら」ということだけで挑んできたわけではない。 宝塚記念の同厩舎複数頭出しで2頭が3着以内に入ったのは、1967年にタイヨウとアポオンワードという武田文吾厩舎所属馬の1着3着があるだけ。しかし当時はワイドも3連複・3連単もなかった。 馬券はサートゥルナーリアとキセキの3連単2頭軸マルチ。相手は大阪杯組のGⅠ馬を中心にグランプリに強い池添のモズベッロ、ワンツースリーに夢を託してトーセンカンビーナも入れておく。 ちなみに同厩舎や同馬主の2頭出しは人気薄を狙えと言われるが、宝塚記念に限って言えば、人気薄の方が上位に来たのは40回のうち15回と半数以下。2勝2着3回3着1回は微妙な結果だが、9回は“下克上”でも馬券には絡んでいない。複数頭出しの意図を見極める必要がある。●ひがしだ・かずみ/伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
2020.06.27 16:00
NEWSポストセブン
サートゥルナーリアを管理する角居勝彦調教師
角居勝彦調教師が競馬の展開を語る 「逃げ馬がペース作る」
 レースがスローになるかハイペースになるか、「展開」のカギは逃げ馬が握っている。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、「展開」について解説する。 * * * 先頭に立った馬、つまり逃げ馬のペースで競馬の流れが決まる。逃げ馬がレース序盤の主役です。ハナを切るメリットは多い。マイペースで先頭を走れば、馬は気分がいいはずです。馬の本能、肉食動物の猛追から逃げるという欲求も満たされ、襲われる心配はありません。そして内ラチに沿って最短距離を走ることができる。ダート戦では砂をかぶる心配もない。なにやら良いことずくめに思えます。 これで絶対的なスピードを持っていれば、他の馬はどうやっても敵わない。かつてのサイレンススズカがそういう馬でしたが、スタートからゴールまで主役を演じ切るのは容易ではありません。 逃げ馬が1頭いると、後続は折り合いがつきやすい。「今日は、このくらいのペースか」と他の鞍上は判断する。他力でペースができあがり、馬は余計な力を使わずに済みます。しかもレース中盤以降、逃げ馬は後続から目標にされる損な役回りです。おまけに同じような馬がいると、ハナを争って共倒れになってしまうことになる。 逃げ馬は調教で作るものではなく、自然とできてしまう。スタートが上手で、前に行ける馬が、ゲートを出た直後に抑えきれなくなる場合。ジョッキーはそのまま行かせてハナを切る。そのパターンのレースが続けば、逃げ馬のできあがりです。 なにやら気ままでわがままなスタイルですが、レースをこなす中で逃げ馬も進化します。ハナを切ってから後から追い上げがくるまでは、気ままに飛ばすことを我慢してペースを守って走る。やがて後続が迫ってくるとギアを変える。そのことを学習するわけです。だから前走の内容が悪くても、「次はうまく逃げれば期待できる」といったコメントが陣営から出てくるのです。 角居厩舎からは、逃げ馬はめったに出ません。ハナや最後尾は極端な競馬になりやすく、特にG1レースでは勝ち切るのは難しい。どんな展開にも耐えられるためには、スタートをうまく出て3、4番手につけること。前方にいることで前述のように馬は本能的な不安がなく、そして折り合いもつきやすいからです。 先週はダービーの展開についてお話ししましたが、その日の最終レース目黒記念でも展開の妙がありました。メイショウカドマツが大逃げを打ち、向こう正面で10馬身ほど引き離す。角居厩舎のハッピーモーメント(13番人気、川田将雅騎乗)は3番手につけて、差をつめることなくじっと動かない。メイショウカドマツが大逃げを打っているからこそ、楽に追走できた。 手応えから直線で必ずかわせる自信があったのでしょう。目論見どおり直線で先頭に躍り出ました。実は角居厩舎ではこの前の週まで13週連続勝利という記録を更新中。この土日は2着が2回あったものの、もう途切れるかなと思っていたところでした。最後の最後のレースでまさかの記録更新かと思うとアドレナリンが出まくって、ファンのように騎手名を連呼してしまいました。 しかし、東京の直線は長い。ゴール前でフェイムゲーム、ヴォルシェーブにとらえられて惜しくも3着。しかしいい競馬でした。●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許取得、2001年に開業。以後15年で中央GI勝利数23は歴代3位、現役では2位。今年は13週連続勝利の日本記録を達成した。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカなど。『競馬感性の法則』(小学館新書)が好評発売中。※週刊ポスト2017年7月14日号
2017.07.09 07:00
週刊ポスト
全ての競馬ファンが泣き武豊が泥酔した「沈黙の日曜日」
全ての競馬ファンが泣き武豊が泥酔した「沈黙の日曜日」
 競馬は秋のGIシーズンを迎えたが、20年近く経った今でも語り継がれる伝説の名馬がいる。1998年11月1日、東京競馬場で行われた第118回天皇賞(秋)で、圧倒的な1番人気になりながら、悲劇的な結果を迎えたサイレンススズカについて、競馬評論家の阿部幸太郎氏が解説する。 * * * 悲劇の大番狂わせだった。1998年の天皇賞(秋)、6連勝中のサイレンススズカは単勝1.2倍という圧倒的な1番人気に推されていた。手綱を握るのは、前年、結果を出せないでいたサイレンススズカに“大逃げ”の才能を見出した武豊・騎手。 前半1000メートルを平均より3秒早い57秒4のハイペースでぶっ飛ばし、3コーナー手前で2番手を10馬身引き離す。誰もが勝利を確信した瞬間、サイレンススズカは突然、ガクンと失速。府中の大観衆の歓声は悲鳴に変わった。 左前脚の骨折だった。通常、トップスピードで競走馬が骨折すると、転倒して騎手が大ケガを負うが、この馬はバランスを崩しながらも3本の足で踏ん張り、ゆっくりとコースを外れていった。まるで、鞍上の武騎手を危険から守っているようだった。 レース後、予後不良で安楽死処置に。武騎手はその晩、生まれて初めて泥酔した。※週刊ポスト2016年11月18日号
2016.11.11 07:00
週刊ポスト
武豊 サイレンススズカ故障の夜に生まれて初めて泥酔した
武豊 サイレンススズカ故障の夜に生まれて初めて泥酔した
 逆転、挫折、復活……レースに凝縮される悲喜こもごものドラマは、人の一生にも例えられる。だから人は馬に熱狂する。競馬界に語り継がれる「至高の名勝負」から、1998年の天皇賞秋のサイレンススズカと騎手の武豊について、中村計氏(ノンフィクションライター)が綴る。中村氏は武に当時を振り返ってもらった。 * * * 三度のやんわりとした「返答拒否」。そこに武豊の、今なお整理がつかない複雑な思いが凝縮されているようだった。  栗東トレセンで追い切りを終えた午前十時過ぎ。武は、表向きはあくまで淡々とあの日のことを振り返った。が、それだけにかえって感情の深さをうかがわせ、無念さが際立った。  1998年11月1日、晴天の東京競馬場で開催された秋の天皇賞。1枠1番、そして1番人気と、日付と同じく3つの「1」が並んだサイレンススズカにレース後、4つ目の「1」が付くのは必然に思われた。ゲートが開き、何かに弾かれたように飛び出したサイレンススズカは、前脚を掻き込むごとに後続をぐんぐん引き離した。  前半1000メートルを57秒4という信じられないような超ハイペースで通過。2番手のサイレントハンターとはおよそ10馬身もの差が開き、その後ろとはさらに5、6馬身の間隔が空いていた。普通の馬ならば完全なオーバーペースだが、サイレンススズカにとっては思い通りの展開だった。  武が常識外れの逃げを打つようになった裏にはこんな経緯があった。サイレンススズカと初めてコンビを組んだのは、約1年前、1997年12月14日の香港国際Cだった。 「最初から全力で走り過ぎちゃうというか、サラブレッドの本質の塊のような馬だった」  この頃は、先に行かせつつも後半に備えてどこかで抑えていた。そのため道中で折り合いを欠くことが多く、香港国際では終盤に捲られ5着に終わった。そこで武は大胆な騎乗を思いつく。 「抑えようと思ってもきかない。だったら、前半から好きなように走らせた方がいいと思った。この馬は走っているときがいちばん楽しそうでしたからね。それでも持つんじゃないかな、と」  年が明け、古馬になったサイレンススズカは常識を逸脱した大逃げで連戦連勝。そうして気持ちよく走らせているうちにレース途中で息を入れることを覚える。 「馬が気付いてくれたんです。それで最後の最後で、また加速できるようになった。これはすごいことになったなと思いましたね」  いよいよ才能を開花させたサイレンススズカは、1998年の4戦目、金鯱賞では2着以下を11馬身引き離し圧勝する。「あんな体験、普通はできない。(後ろからくる)足音をまったく聞かないままゴールしちゃったんですから!」  武の中では今なお唯一無二の競走馬だからだろう、他にも似たような馬はいたかと問うと「他の馬との比較はいいじゃないですか」と小さく口を尖らせた。  武が「あそこで完成した」と振り返るのは、1998年の6戦目、そこまで無敗で底知れぬ力を誇示していた外国産馬、エルコンドルパサーとグラスワンダーを破り6連勝を飾った毎日王冠だった。 「最高のレースが出来て、いよいよ海外も視野に入れ始めた。みんなびっくりするんじゃないかって話していたところだったんです」 天皇賞が行われたのは、その3週間後のことだった。毎日王冠に勝ち、いよいよスターホースとしての道を歩き始めたサイレンススズカにとって、天皇賞は物語のいわば序章となるべきレースでもあった。 第3コーナーを回るまで、すべては予定通りだった。 「息が入り始めて、いいぞ、いいぞ、と。本当にいい感じだった」  ところが──。第4コーナーに入る直前だった。サイレンススズカは、にわかに失速。2番手のサイレントハンターにあっという間に差を縮められると、あっけなくかわされる。武の誘導によってコーナーの外に出されたサイレンススズカは、左前足を宙に浮かせ、三本脚で立ち止まっていた。足を地面に着けないということは、故障が重度であることを物語っていた。武はその様子を見て、「物語」が始まる前に終わったことを悟った。 「レース中、何が起こったかはすぐにわかった。ジョッキーにとっては、いちばん嫌な瞬間ですね」  その瞬間、ジョッキーの体にどんな感触が伝わるものなのか。それを問うと、しばらく唸ったあと、こちらを拒絶するような、嫌悪するような苦笑いを浮かべた。 「あんまり細かくは言わなくてもいいんじゃないかな。普通の人は知らなくてもいいことでしょう」 武にとっては、もっとも酷な質問だったことに気付かされた。サイレンススズカは、左前脚の膝に見える部分、手根骨を粉砕骨折していた。直後、再起不能の診断が下され、安楽死の処置がとられた。そんな大けがだったにもかかわらず、故障発生時、サイレンススズカは何度となくバランスを崩しながらも最後まで立ち続け、武を背中に背負い続けた。 「なかなかいない。あのトップスピードで、あれだけの骨折をして転倒しない馬は。僕を守ってくれたのかなと思いましたね。今でもすごくよく、サイレンススズカのことを思い出すんですよ。せめてあと数百メートル、走らせてやりたかったな。うん、すごい残念。今でも悔しいですもん」  あの日の晩、武は何人かの知り合いとワインを痛飲した。 「泥酔したの、あんときが生まれて初めてだったんじゃないかな。夢であって欲しいな、って」  なおもその晩のことを尋ねると、「その話はもういいですよ」と急に笑顔を引っ込めた。聞かれたことにはプロとして最低限答えるが、これ以上は立ち入らないで欲しいという意思表示に思えた。  もう少し先の話を聞きたいと思ったところで、三度、扉が閉められた。武は今も愛馬の死を背負っていた。※週刊ポスト2013年12月6日号
2013.11.28 07:00
週刊ポスト

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