国内

成功者 地方の「5時半帰宅サラリーマン」は幸せと香山リカ氏

香山リカ「成功者は5時半帰宅」

最近、自分を追い詰めている人が多い。「もっと頑張らないといけない」「もっと成長しなくては」、と。だが、精神科医で立教大学教授の香山リカさんは、頑張り過ぎずにほどほどに生きる「ほどほど論」を提唱する。香山さんに聞く「ほどほど論」の最終回をお届けする。(聞き手=ノンフィクションライター・神田憲行)

* * *
香山:最近思うのですが、日本人の「人生の成功モデル」が貧弱すぎる。

――というと?

香山:大きな収入を得ることしかない。私の診察室には、経済的に成功を収めても家庭が崩壊し、「こんなことなら平凡な人生の方が良かった」とため息つく人が少なからず来ますよ。

この間ラジオ番組を製作している人と話をしたんですが、その番組は夕方の5時半に流れるんだそうです。「主なリスナーは主婦ですか」と訊ねると、「いえ地方では5時に仕事を終えて5時半には帰宅しているビジネスマンの男性も多いんですよ」とおっしやっていました。

東京で働くビジネスマンより、家族と過ごす時間が一日で5時間も6時間も多いのではないでしょうか。もちろん5時半に帰宅できる人にも悩みはあるでしょう。でもそれでそこそこの安定した生活が送れるなら、それも「成功」と考えて良しとすべきではないでしょうか。

――価値観の多様性ですね。

香山:そう。いま企業では「ダイバーシティ(多様性)」が盛んに唱えられて、働く人の男女、国籍、年齢層の幅を広げる動きが出ています。多様性を確保することで企業に活力を与えようとするものです。しかし実態を見てみると、極端な成果主義で縛り付けているケースも多い。働く人を多様化しても、評価する基準がひとつだけだと何の意味もない。

産業医の方に聞くと、優秀な企業になると「部下の面倒見だけが良い上司」とか「底抜けに明るいだけが取り柄の社員」という人たちが必ず確保されているそうです。会社が成績だけで社員を判断しない。そういう会社だと鬱病を発症しても、休業したあと無事にまた会社に戻って仕事が出来る。

活力ある企業とは本来こうあるべきではないでしょうか。求められるのは「人のダイバーシティ」だけでなく、「価値観のダイバーシティ」です。

――香山さんの「人生をほどほどに生きていく」というほどほど論も、人生の価値観を多様化することですね。

香山:ある本で80代の方が、「ここまで生きてきて振りかえると、良い人生も悪い人生もなく、目の前にあるのは普通の人生だ」と書かれていました。私にはその言葉が、「人生を全力で生き抜け」とかいうスローガンより、リアルに響いたんですよ。

人を羨んだり、羨ましがれたこともあるでしょうが、ならせばどの人の人生もそうは変わらないんですよ(笑)。みんな変わりなく、普通の範囲内で収まる人生でいいじゃないですか。(了)


関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン