国内

亀井静香氏 浅間山荘では弾が飛んでくる中防弾着を着用せず

視聴率89.7%だった「あさま山荘」事件から40年。その時、現場では何が起きていたのか? 作家の山藤章一郎氏がリポートする。

* * *
「第九十六報、現場一から統括」「現場一どうぞ」「泰子さんを発見ッ、どうぞ」「生きているのかッ、どうぞ」「手が動いたッ、生存を確認ッ」「生存を確認。統括、了解」

佐々淳行が『連合赤軍「あさま山荘」事件』(文藝春秋社刊)で伝えるこの瞬間のNHKと民放を合わせた視聴率は、史上最高の89.7%だった。

投光車の照明灯が、月の浮かぶ青黒い空と山荘と横なぶりに降る雪を照らしだしている。

いまから40年前の2月28日18時14分。事件発生から10日、218時間めの歓喜だった。

同書は、混乱のなかの微笑むべきエピソードをひとつ紹介する。
みな青ヘル黒ジャンパーの防護服に身を固めている。
だがひとり、私服で弾が飛んでくる最前線に立っている男がいる。
以下、同書より――。

「誰だ、そこの私服ッ」

見ると亀井静香警視だ。

「何してる」「はあ、後の捜査の参考にちょっと状況を」「君の今日の配置、ここじゃないだろ」

血の気の多い亀井警視のやりそうなことだ。

「佐々先輩、私は先輩を見損なっていました。才気走った“口舌の徒”だと思うとりました。だが、仲々やるもんですなぁ」

「バカ者、それが十年先輩に向かって言う科白か」――

警察も上、下、左、右、斜め、混乱をきわめていた。

坪内祐三が『一九七二』(文春文庫)で「ひとつの時代の『はじまりのおわり』と『おわりのはじまり』」と規定した年である。

※週刊ポスト2012年2月10日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

死亡が確認されたシャニさん(SNSより)
《暴徒に唾を吐きかけられ…》ハマスに半裸で連行された22歳女性の母親が“残虐動画の拡散”を意義深く感じた「悲しい理由」
NEWSポストセブン
お騒がせアイドルとして人気を博した榎本加奈子
《略奪婚から20年》43歳の榎本加奈子「爆弾発言アイドル」から敏腕社長に転身「人気スープカレー店売却」で次に狙う“夫婦念願の夢”
NEWSポストセブン
被害者の渡邉華蓮さん
《関西外大の女子大生を刺殺》「自宅前で出待ちされて悩んでいた」殺害された女性宅周辺で目撃されていた「怪しい男」抵抗されながら刺し続けた交際相手の強い殺意
NEWSポストセブン
所属事務所は不倫を否定(時事通信フォト)
《星野源と新垣結衣が完全否定》「ネカフェ生活」NHK・林田理沙アナとの疑惑拡散の背景「事務所が異例の高速対応」をした理由
NEWSポストセブン
退所を発表した松本潤
【松本潤が独立】7月から野田秀樹氏が手がける舞台に出演、ロンドンでも上演 舞台初共演の長澤まさみの“凄み”に刺激を受ける
女性セブン
2018年8月に本誌の取材を受けた際も“ねじねじ”だった(撮影/小暮誠)
急逝・中尾彬さん 萬田久子、名取裕子、由美かおる、安達祐実らとの「美女対談」で際立っていた博覧強記
週刊ポスト
7月のイベントでファンの前に姿を見せる中森明菜(YouTubeより)
《7月のイベントで完全復帰へ》中森明菜、SNS時代にささやかれる不安要素 「陽」の聖子と比較して「陰」と評された歌姫は再びかがやくことができるのか
NEWSポストセブン
大谷のサプライズに驚く少年(ドジャース公式Xより)
大谷翔平、始球式サプライズに「なんてナイスガイなんだ」と全米絶賛 幻となった“真美子夫人の始球式”は7月以降に実現の可能性
女性セブン
9月の誕生日で成年を迎えられる(4月、東京・町田市。写真/JMPA)
【悠仁さまの大学進学】幼稚園と高校は“別枠”で合格、受験競争を勝ち抜いた経験はゼロ 紀子さまが切望する「東京大学」は推薦枠拡大を検討中
女性セブン
杉咲花と若葉竜也に熱愛が発覚
【初ロマンススクープ】杉咲花が若葉竜也と交際!自宅でお泊り 『アンメット』での共演を機に距離縮まる
女性セブン
5月に入り病状が急変し、帰らぬ人となった中尾彬さん
【中尾彬さん逝去】数か月体調優れず、5月に入って容体が急変 葬儀は近親者のみ、妻・池波志乃さんは憔悴しながらも参列者に感謝
女性セブン
亡くなったシャニさん
《7か月を経て…》ハマスに半裸で連行された22歳女性が無言の帰宅、公表された最期の姿「遺体の状態は良好」「肌もタトゥーもきれいに見える」
NEWSポストセブン