中国の吉林、遼寧、黒竜江の東北3省は主に製造工場の労働力不足を補うために、北朝鮮から女性労働者2万人を雇用することを決め、その第一陣145人が7月下旬、中朝国境の吉林省図們市の経済開発区に到着し、8月から仕事を開始した。米国の自由アジア放送(RFA)などが報じた。
北朝鮮国内ではすでに、中国で働く女性労働者の募集が一部始まっているが、その選定基準は、【1】32歳未満、【2】身長152センチ以上、【3】親族に中国在住者がいない、【4】家族に法律を犯した者がいない――というもの。書類選考でこれらの条件を満たせば、3か月間の技術教育を受け中国各地に派遣される。
選定基準で奇妙なのは【1】と【2】で、これについて、北京の消息筋は「採用された女性のなかで美人は、工場でなく、中朝合弁の朝鮮レストランやカラオケバーなどに派遣されることもあるため」と語っている。ただ、それは一部で、ほとんどが「産業作業員」として働くことになるという。
中国誌『中国経済週刊』によると、吉林省長春市にある中朝合弁のレストランで働く北朝鮮従業員は3年働くと帰国する規則がある。また、ほとんどが平壌音楽大の卒業生で歌とダンスが得意だが、1人での外出や携帯電話の所持、さらに恋愛も禁止されているという。
一方、図們市経済開発区の工場で働く女性労働者は基本的に工場敷地内に建設された専用宿舎で集団生活し、ふだんは寮と工場を行き来するだけで工場の敷地内を出ることができず、中国人との交流は特別な場合を除いて厳禁だという。これは中国内で逃亡することを警戒しているためとみられる。
また、月給は1500元(約1万8000円)程度で、6割は北朝鮮政府の関係機関に上納され、4割が労働者の手に渡るが、そこから大部分を元の職場や地元機関などに収めることになり、手元には全体の1割から2割にあたる150元から300元(約1800円~3600円)しか残らない計算だ。
北朝鮮は最高指導者、金正恩第一書記の指示で農業分野を中心とする経済改革措置を準備。中国に派遣された労働者から吸い上げた外貨を経済再建に充当する方針だ。このため、今後も海外への労働者派遣を拡大する可能性がある。
これに関連して、中国のニュースサイト、中国網(チャイナネット)は北朝鮮が来年までに12万人の北朝鮮労働者を「産業研修生(労働者)」として中国で就労させる方針を決めたとも伝えている。