国内

「橋下氏は衆院選にこだわり着地点の目線低い」と大前研一氏

 次期衆院選に向けて動きを加速させている「日本維新の会」の橋下徹氏。だが、「全国政党になるという考え方をいったん白紙に戻すべきだ」と指摘するのは、“橋下氏の場外応援団”を自任する大前研一氏である。

 * * *
 国政の行方を考える時にポイントになるのは「統治機構を変更できるかどうか」である。

 これは既得権益を破壊される中央官僚が絶対に嫌がることなので、血みどろの戦いになる。次期衆院選は今のままでは自民党が政権に返り咲く可能性が高いが、これまでの言動から見て安倍総裁にこの戦いの旗振りは不可能に思える。古き良き日本の復活、すなわち、より強い戦前の政治体制への逆戻りが彼の今までの言動だからだ。

 石破茂幹事長は中央集権維持派ではないと思うが、防衛と農林水産の「族議員」であり、小さな政府を掲げて霞が関全体で官僚の抵抗を打ち破る突破力を持っているとは言えない。また、テレビ解説者のような役割が長かったせいか、「解説」するばかりで、「どういう国を作りたいのか」というビジョンは今までに打ち出していない。

 その意味では、たとえ道を誤って人気を落としたとはいえ、橋下氏は希有な政治家だ。

 統治機構を再構築するための「維新八策」を掲げ、勉強熱心で理解力も記憶力も行動力も図抜けている。毎日午前2時頃まで仕事を続けて午前6時頃からメールを打ち始めるパワフルさも尋常ではない。この能力がなければ、頑強な官僚機構は打破できない。だからこそ、私は今も彼に期待している。

 しかし、今の橋下氏は目前の衆院選にこだわるあまり、着地点の目線が低くなったように思う。彼は親しい友人に「ゼロから始めてここまで来た。戦略が間違っているとは思わない。このまま行けるところまで行く」という言い方をしているという。もしゼロになっても元に戻るだけ、ということかもしれないが、それでは困る。

 国民に期待を抱かせた以上は、それを実現する責任がリーダーには生じるのである。次期衆院選で維新が惨敗して崩壊したら、日本はまた10年以上、変革のチャンスを失うかもしれない。維新を徒花に終わらせないためには、橋下氏自身が変わらなければならないと思う。

 橋下氏の良さは「変わり身の早さ」である。ロボット掃除機『ルンバ』のように、障害物にぶつかると即座に向きを変えて違う方向に進む。彼自身も「自分と維新の会の強みは、間違っていたらすぐに謝って方向を変えることだ」と言っている。ならば国政進出の戦略も、今すぐ転換すべきではないだろうか。

※SAPIO2012年12月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
国内統計史上最高気温となる41.8度を観測した群馬県伊勢崎市。写真は42度を示す伊勢崎駅前の温度計。8月5日(時事通信フォト)
《猛暑を喜ぶ人たちと嘆く人たち》「観測史上最高気温」の地では観光客増加への期待 ”お年寄りの原宿”では衣料品店が頭を抱える、立地により”格差”が出ているショッピングモールも
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト
離婚を発表した加藤ローサと松井大輔(右/Instagramより)
「ママがやってよ」が嫌いな言葉…加藤ローサ(40)、夫・松井大輔氏(44)に尽くし続けた背景に母が伝えていた“人生失敗の3大要素”
NEWSポストセブン
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
【観光客が熊に餌を…】羅臼岳クマ事故でべテランハンターが指摘する“過酷すぎる駆除活動”「日当8000円、労災もなし、人のためでも限界」
NEWSポストセブン
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《金メダリスト・北島康介に不倫報道》「店内でも暗黙のウワサに…」 “小芝風花似”ホステスと逢瀬を重ねた“銀座の高級老舗クラブ”の正体「超一流が集まるお堅い店」
NEWSポストセブン
二階堂ふみとメイプル超合金・カズレーザーが結婚
二階堂ふみ&カズレーザーは“推し婚”ではなく“押し婚”、山田美保子さんが分析 沖縄県出身女性芸能人との共通点も
女性セブン
山下美夢有(左)の弟・勝将は昨年の男子プロテストを通過
《山下美夢有が全英女子オープンで初優勝》弟・勝将は男子ゴルフ界のホープで “姉以上”の期待度 「身長162cmと小柄だが海外勢にもパワー負けしていない」の評価
週刊ポスト
夏レジャーを普通に楽しんでほしいのが地域住民の願い(イメージ)
《各地の海辺が”行為”のための出会いの場に》近隣住民「男性同士で雑木林を分け行って…」 「本当に困ってんの、こっちは」ドローンで盗撮しようとする悪趣味な人たちも出現
NEWSポストセブン
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《北島康介に不倫報道》元ガルネク・千紗、直近は「マスク姿で元気がなさそう…」スイミングスクールの保護者が目撃
NEWSポストセブン
娘たちとの関係に悩まれる紀子さま(2025年6月、東京・港区。撮影/JMPA)
《眞子さんは出席拒否の見込み》紀子さま、悠仁さま成年式を控えて深まる憂慮 寄り添い合う雅子さまと愛子さまの姿に“焦り”が募る状況、“30度”への違和感指摘する声も
女性セブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者が逮捕された
「ローションに溶かして…」レーサム元会長が法廷で語った“薬物漬けパーティー”のきっかけ「ホテルに呼んだ女性に勧められた」【懲役2年、執行猶予4年】
NEWSポストセブン