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原発避難の女子中学生 50人中28人が結婚・出産に不安を持つ

 福島第一原子力発電所事故は大きな爪跡を残した。政府や電力会社による隠蔽はもちろん追及されるべきだ。その一方で、科学的根拠なしに放射能の危険性を煽り、いわれなき「福島差別」を生んだことまで、原子力ムラの責任だとうそぶくことは許されない。

〈福島ばかりじゃございませんで栃木だとか、埼玉、東京、神奈川あたり、(中略)あそこにいた方々は これから極力、結婚をしない方がいいだろう〉〈特に、若い方々はこれから発がん率がグーンと上がる、結婚をして子どもを産みますと、奇形の発生率がどーんと上がる〉

 昨年7月9日に行なわれた公益財団法人日本生態系協会主催の講演会での同協会会長(獣医師)の発言だ(当日の講演録より)。

 福島を中心とする「放射能雲が通った」地域に住む女性を指しての発言だが、当事者がこの発言を聞いてどう感じるか考えられないのだろうか。“配慮が足りない”といったレベルではない。立場も資格もある人物の発言でありながら、内容そのものが全くの間違いなのだから深刻だ。

 冒頭の講演会に参加した福島市議4人が発言撤回を求め、昨年9月4日に会長は文書で〈福島の方々だけを特定して結婚しない方が良い、との差別的な発言を行った意図は、全くありません。(中略)今後、この様な誤解を生じさせることのないよう、発言に十分に注意いたします〉と回答。抗議した佐藤一好市議は「二度と過ちを繰り返さないでほしい」と伝えたという(本誌取材に同協会は「現在、この件についてコメントすることはない」と回答)。

 騒動としてはそれで収束したのかもしれないが、差別的発言によって傷つけられた人々はそのままにされる。

 昨年9月7日、東京大学医学部附属病院放射線科准教授の中川恵一氏は福島市内の飯野地区に避難している飯舘中学校の女子生徒にアンケートを取った。結果、50名中28名の女子生徒が「結婚できないかもしれない」「子供を産めないかもしれない」など結婚・出産に関する不安を明かしたという。

※SAPIO2013年4月号

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