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ポスターに自分の顔が写ったら肖像権は守られるか 弁護士解説

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「ポスターに自分の顔が写り込み困惑している。撤去できないか」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 駅前で展示会のポスターを見て驚きました。ポスターには観覧した私の顔が大きく写り込んでいたのです。その展示会に足を運んだことがバレると具合が悪いことになり、主催者側に撤去をお願いしたのですが聞き入れてもらえません。やはり著名人とは違い、一般人に肖像権は存在しないのでしょうか。

【回答】
 肖像権は一般の人にもあります。人の氏名や肖像等は、個人の人格の象徴であるとされており、最高裁は「個人は、人格権に由来するものとして、これをみだりに利用されない権利を有する」と判断しています。つまり、人は誰でも他からみだりに肖像を利用されないという意味で肖像権を持っています。

 有名人の場合は、その肖像が衆人の注目を集めるので、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有していることになり、この顧客吸引力を排他的に自分で利用できる「パブリシティ権」という権利を持っていると解されています。このパブリシティ権は、肖像等の商業的価値に基づくので、一般の人は持っていませんが、人格権としての肖像権を無断使用されれば不法行為になります。

 とはいえ撮影や公表を承諾している場合であれば、もちろん権利侵害になりませんが、そうでなくても「みだりに利用されない」権利ですから、利用されることに正当な理由があったり、やむを得ない場合も同様です。例えば警察が犯罪の証拠保全のため必要な範囲で撮影したり、風景写真を撮った時に背景に写ったりすることです。

 風景の点描となった状態の写真などであれば、撮影や公表は肖像権の侵害に当たらず、不法行為にはなりません。また点描を超えて個人が特定できる場合でも公共の場にある以上、個人的な事情や感情を抑制せざるを得ず、撮影や公表は「みだり」にあたらないと思います。

 しかし公共の場でも、一般の人であっても見られて恥ずかしく感じる状態などを撮影されたり、公表された場合は、「みだりに利用」されたものとして肖像権侵害になり、精神的苦痛があれば慰謝料の請求ができます。

 あなたの写真が「みだりに利用」されたといえない場合には、肖像権侵害にはなりません。

※週刊ポスト2013年4月26日号

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