「納得できない場合には、サインや押印をしないで相談を」と中島さん


■妊産婦や育休取得前後への保護

 職場環境に関するハラスメントの中で、今後セクハラ・パワハラに続いて注目されるのは「マタニティハラスメント」(以下、マタハラ)だ。現在「育休3年化」「女性手帳」など、妊娠・出産に関する話題が大きな注目を集めているが、職場という前提を考えると男性も無関係ではない。

「均等室の相談1位はセクハラですが、2位は『妊産婦』や『育休取得』前後に対する不利益取扱いの相談です。意外と認知度が低いのですが、さまざまな法律で妊産婦や出産・育休直後の女性が不利益を受けないよう保護されています。それでも本人や経営側・上司にそうした知識がないことで、不法行為が多く発生。自己都合も含まれますが、経産婦の6割が妊娠・出産が原因で、退職を経験しているというのが現状です」(中島さん)

 具体的に保護されている期間や、対象となる不法行為には、どういったものがあるのだろうか。

「労基法や均等法で、妊娠がわかってから、産休明け30日+出産後1年の間は解雇をしてはいけません。仮に解雇された場合でも、会社の倒産といった特殊な状況を除き不当解雇で無効になります。妊娠を理由に退職を強要されるケースもありますが、書面でのサインや押印をすると“合意があった”とされる恐れがあるので、『家族と相談する』などで回答を引き延ばし、サインや押印はせず、組合や行政相談窓口等へ連絡してください」(村上さん)

 厚生労働省のHPにはこうした保護規定の他に、わかりやすい例などもPDFで掲載されているという。

「解雇だけでなく、契約を更新しない『雇い止め』やパート・アルバイトへの雇用形態に関する不利益変更も同様に違法です。また本人が希望しない部署への異動などで、時短条件等と照らし合わせても給与が大きく減額されるといった場合も、不利益取扱いとみなされるケースもあるので、相談してみてください。

 均等法では、婚姻・妊娠・出産を理由とする不利益取扱いを全面的に禁止しています。法律で定められている以上、会社に妊産婦や育休取得者への保護義務があるのですが、認知されていないことも。経営陣や人事労務担当は理解しているのに、職場の担当上司が知らずに退職を強要したケースでは、上層部に状況を伝え相談したら、すんなり解決する――ということもあります」(中島さん)

 こうしたトラブルを防ぐため、会社側も就業規則や雇用契約に関して、法令に沿ったものか見直しを行なったり、不足がある場合には保護規定を踏まえた内容を改めて盛り込む――といった取り組みで、コンプライアンスをチェックする必要がありそうだ。

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