仏大統領をはじめ、各国政財界の大物がパリに来るたびにお忍びで訪れ「予約のとれない店」と知られる仏・パリのレストラン『ドミニク・ブシェ』が日本初上陸する。
全世界の料理人にとって最高ポストといわれる「ホテル・ド・クリヨン」総料理長をはじめ、超高級フレンチを体現してきたシェフ、ドミニク・ブシェ氏はミシュランの星、一つ、二つ、三つすべてを経験してきた。ブシェ氏はいう。
「本当の評価は星にはない。お客様の顔が見えるレストランを愛する日本に出店したかった」
1965年、13歳で料理の世界に入った。22歳でジョエル・ロブションに見いだされ、彼の右腕として活躍。以来「トゥール・ダルジャン」「ジャマン」、そして「クリヨン」の総料理長を7年務め、名誉あるレジオン・ドヌール勲章も受章。2004年に独立、自らの名を冠した店をパリ8区にオープンさせた。それから9年──氏にとって“最終形”ともいえるレストランが今回出店する『レストラン ドミニク・ブシェ 東京店』だ。
日本には深い縁がある。テレビの『料理の鉄人』トーナメントカップに出演し優勝したことでも知られるが、30年前にホテルニューオータニの「トゥール・ダルジャン」立ち上げ責任者として来日以来、第2の祖国として親しんできた。妻・百合子さんの存在も大きい。昨夏に60歳を迎え、日本出店へ本格的に動き始めた。選んだ場所は東京・銀座。昭和の香りが残る三原小路のほど近く、閑静な一角だ。
ブシェ氏の料理は、伝統をしっかり守った味に現代的な軽やかさが絶妙に絡む。一切バターを使用しない前菜から濃厚な牛テール煮込みまで、ピアニシモからフォルテへ向かうようにコースのなかでメリハリが際立つ。
一方、素材の美しさを生かした盛り付けはどこか和を感じさせ「生け花のよう」とも言われる。繊細かつ大胆──フレンチを食べ慣れた料理評論家ほど高く評価するという。
こだわったのは価格。メインルームと別にラウンジを作った。シャンパン1杯とタパス5皿で2900円から気軽に楽しめる新しいスタイルを提案している。「高級フレンチを手の届く贅沢にしたい」が氏の口癖だ。9月4日にグランド・オープンする。
写真は、ブシェ氏といえばこの一皿といわれる「牛テールの煮込み『2000年ミレニアムカップ』ジャガイモのピュレ」(5500円)。かつて『料理の鉄人』ミレニアムカップで優勝した一品でもある。
■RESTAURANT DOMINIQUE BOUCHET 東京店
【住所】中央区銀座5-9-15 銀座清月堂ビルB1F/B2F
【URL】http://www.dominique-bouchet.com/tokyo/
撮影■太田真三
※週刊ポスト2013年8月30日号