では、エージェントが馬券を購入することは、法律的な観点からみるとどうなのだろう。あおぞらみなと法律事務所の弁護士・伊東大祐氏に聞いてみた。
「競馬法には、調教師、騎手および競走馬の飼養(厩務員)または調教を補助する者(調教助手)に対して勝馬投票券(馬券)の購入制限があります(29条6号・7号)。エージェントという仕事が、この部分に該当するかどうかというと、微妙なところかも知れません。例えば、制限がかかっていないからといって実際に当たり馬券が買えるのか、というとそう簡単なことでもないでしょう。また、インサイダー的な情報に触れて悪用しているかどうかは、個別のケースを精査しないとはっきりとしたことは言えないと思います。
ただ、この法律の趣旨としては、競馬の公正確保という観点からの条項であり、疑われるような実態があるならば、法を改正してでも公正確保に努めなければいけないといえるでしょう。騎手や調教師と極めて近い立場にいるエージェントの馬券購入は制限されてしかるべきだし、JRAには“襟を正す”という姿勢が求められるのではないでしょうか」
ちなみに、JRAには、騎手の雑務をこなすバレット制度というものもあるのだが、こちらは馬券購入に制限がかかっているという。この違いは何なのか。
「バレットは、検量室という制限エリアに立ち入ることが出来るために馬券購入が出来ません」
JRA報道室はそう答える。しかし、バレットはあくまでもゼッケンや鞍を持つなどの補助的雑務が仕事。馬の状態や厩舎の内情も知りえる立場のエージェントよりも、はるかに関係者感は薄いとも思える。
分かりにくい制度に対する不信感が、ファンの競馬離れにつながらなければいいのだが。