武豊一覧

【武豊】に関するニュースを集めたページです。

大江順一キャディ(時事通信フォト)
ブチ切れキャディー「武豊のようになりたい」「人気の薄い馬でも一気に人気高まる」発言で“炎上”の過去
 2019年に渋野日向子(23才)が全英女子オープンを制し、昨年の東京五輪では稲見萌寧(22才)が銀メダルを獲得。若手の活躍で盛り上がる女子プロゴルフ界だが、それに水を差すような騒動が世間を騒がせている。先週行われた『アース・モンダミンカップ』の初日、選手をサポートするはずのキャディーが選手に激怒する騒動が発生。キャディに怒声を上げられた大西葵(27才)は涙を浮かべ、直後のホールのティーショットをしばらく打てなかったという。“事件”が起きたのは17番ホールでのこと。大西が2打目をミスショットしてペナルティエリア内に打ち込むと、4打目への対応を巡って大西と大江順一キャディーの意見が割れ、大江キャディーがキレて声を荒らげた。その後、大江キャディーは職務を放棄し、バッグを持つことを拒否。大西はキャディー交代を申し入れ、代理のキャディーを立ててプレーを続行した。これが報じられると、ネットには、「キャディーはアドバイスこそするが、最終的に決断するのは選手 その選手の選択に対してキレる意味がわからない」「プロキャディとして、失格ですね。キャディは選手以上に冷静である必要があります」「自分の意見を押し通すようなキャディーなんて聞いたことがありません。ましてや女子プロゴルファーに男性キャディーが怒号を響かせ帰ってしまうなど言語道断です」 とキャディーの責任を厳しく問う声が登場。日本女子ゴルフ協会は、事実確認をした後、処分について審議するとしている。フリーのスポーツライターはいう。「選手とキャディーは“雇う側”と“雇われる側”の関係。今回問題を起こした大江キャディーは以前、別の選手に付いた時にもトラブルを起こして処分を受けたことがあるため、現場には“それを知っていて雇った大西にも責任はある”という意見もあります。 ただ、言わずもがなですが、選手が良い成績で終われるようにサポートするのがキャディーの仕事で、上位に入ればキャディーの取り分も増えますから、対立するのは全くのナンセンス。同じ組で回る選手にも迷惑ですから、怒鳴るなどもっとのほかで、より批判されるべきはキャディーの方でしょうし、あんなトラブルがあっても予選を通過した大西は立派でした」(スポーツライター)野球でも起きた“選手への恫喝” キャディーのブチ切れ事件を聞いて思い出されるのが、今年4月にプロ野球で起きた、審判による“恫喝事件”だ。ロッテの佐々木朗希(20才)が、24日のオリックス戦でボールの判定に不満げな表情をしたところ、白井一行球審が詰め寄り、球場は不穏な雰囲気に。佐々木が完全試合を達成した直後だったので、このニュースは大きく報じられ、「主審を務める方が、怒りのあまり、タイムもかけずにマウンドに詰め寄るというのは、あまりに冷静さを欠いた行為」「いかにもキレた顔でわざわざ詰め寄っていくのは、客観的に見て警告の範疇から外れている」「審判の役目は、試合の進行を滞りなく行うことであり、選手とファンが納得出来る判定を下して行くこと」 など、審判が感情的になることや、威圧的な態度を取ることに批判が集中した。アスリートを通じて自己実現? プロスポーツ界において一番リスペクトされるべき存在はやはり選手。観客の声援や裏方の努力で支えられていても、選手が第一であることに異論はないだろう。それなのになぜ、その原則が蔑ろにされるようなケースが相次いでいるのか? ベテランのスポーツライターはいう。「近年はメディアが裏方を積極的に取り上げるようになり、それ自体は良いことだと思いますが、中には自己顕示欲が強いタイプもおり、“何とかして目立ってやろう”という人が出てきても仕方のない状況です。 実際、佐々木に詰め寄った白井審判は、見逃し三振をコールする時に独特のポーズを決めるので有名でしたし、今回トラブルを起こした大江キャディーも、過去の取材で『もっとキャディが注目されてもいい』『(騎手の)武豊さんのようになりたい』と答えています。彼らを見ていると、アスリートをリスペクトするというよりは、アスリートを通じて自己実現を果たそうと考えているように見えてなりません」(前出・スポーツライター) 大江キャディーの当時の発言を詳しく見ると『週刊現代』(2015年5月30日号)の直撃取材に次のように発言している。《僕はもっとキャディが注目されてもいいと思っています。僕は武豊さんのようになりたい。武さんが乗ると、人気の薄い馬でも一気に人気が高まるでしょう? キャディとして、そういう信頼感や期待を持ってもらえるようになりたいんです》 キャディーが果たす役割の重要性などを訴えたかったようだが、この発言は選手を馬に見立てたとしてゴルフ関係者から問題視された。 前出のスポーツライターはこうも指摘する。「大江キャディー、白井球審がキレた相手も気になります。佐々木はまだ20才ですし、大西もキャディーより年下で女性。相手が若手や女性だったから“安心して”キレたのだとすれば、スポーツに携わる者としての資質以前の問題でしょう」(スポーツライター)
2022.06.27 17:00
NEWSポストセブン
阪神競馬場のパドック
阪神JFのウォーターナビレラには武兄弟と父の”歴史”が刻まれている
 競馬は血のドラマでもある。人にも馬にも織りなす物語がある。競馬ライターの東田和美氏が阪神ジュべナイルフィリーズを分析した。 * * * 新馬や未勝利を勝ったばかりの馬も出てくるこのレースで勝つ条件は、“完成度”ではなく“血統背景”だ。メディアでもさまざまな血統情報を伝えており、競馬の持つ奥深さを実感させてくれる。それぞれの記事にうなずきながら競馬の多様性を楽しめばいい。 2歳牝馬チャンオピオン決定戦だけあって、辿っていくのが楽しいのはやはり牝系だ。ドラマチックな縁が馬券につながればたまらない。 今回GⅠ牝馬の令嬢はいない。“華麗なる一族”の一員といえるのはまずナミュールだろうか。母サンブルエミューズは2歳9月にオープン芙蓉Sを勝ってオープン入り。2012年の阪神JFでは2番人気8着、年明けのフェアリーSで3着。2013年の桜花賞出走を果たし6着に健闘している。 その母ヴィートマルシェは1勝のみだったが、サンプルエミューズの6年後に今年のヒロイン、BCディスタフを勝ったマルシュロレーヌを産んでいる。ナミュールにとっては3歳年上、アメリカで活躍した憧れのマルシュ叔母さんというわけだ。なにしろひいおばあちゃん(曾祖母)がゴッドマザー、1997年の桜花賞馬キョウエイマーチ。大伯父には皐月賞2着のトライアンフマーチもいる一族だ。 サークルオブライフの母シーブリーズライフは新馬勝ち後5戦目でオープンのクロッカスSを勝ち、トライアルを経て2013年桜花賞に出走している(12着)。つまりナミュールとサークルオブライフは母親が同じ歳でともに桜花賞に出走しており、それぞれの子供がGⅠに出走してきたということだ。ママ友がかつてのライバルだったってこと。人間だったら当人よりも母親の思いが強そうだが。 ステルナティーアの母ラルケットは2007年の阪神JFに2戦2勝で出走しトールポピーの10着。クイーンCでリトルアマポーラの3着、アネモネSでソーマジックの8着。桜花賞には出られなかったが、いち早くGⅠ馬ステルヴィオを産んだ勝ち組ママ。 抽選をくぐって出走してくるシークルーズの母ベストクルーズは2009年阪神JFでアパパネの3着、2010年秋華賞12着。 今回出走馬のボトムラインを眺めていて懐かしい名前を発見した。ウォーターナビレラの母の母の母(曾祖母)がピンクノワンピース。愛馬にユニークで情緒あふれる名前をつけることで知られる小田切有一氏の所有馬だ。デビューは1989年2月の新馬戦。当時は前年の菊花賞、スーパークリークで初GⅠを勝った武豊騎手の人気が競馬界の枠を超えて沸騰中。19歳の天才騎手あらわる! と言われていたころである。 若々しい武豊騎手にはピンクのワンピースを着た女の子が似合いそうだから、ぜひピンクノワンピースという名前の馬に乗ってもらおう。そう思って小田切氏が名付けたのがこの馬。「それ相応の馬でなきゃだめだというので、(中略)トウショウボーイの牝馬にしたんです」(「文芸ポスト」2004年春号)。そう、トウショウボーイといえば武邦彦騎手だ。 調教師に頼み込み、新馬戦に乗ってもらうことになった。結果は惜しくも5着で、その後も2回乗ってもらったが、勝つことはできなかった。それでも小田切氏は「僕としては満足」。しかし武豊騎手は馬名の由来を「知らないんじゃないかな」とのこと(いずれも同誌より)。「アイドル佐野量子」は、ほんわかした魅力で確かにピンクのワンピースが似合いそうなイメージがあった。武豊騎手との結婚時に報じられたところによれば、二人が初めて出会ったのは1988年6月に量子さんが中京競馬場のイベントにゲストとして出演した時だという。すぐに交際が始まったわけではないというが、ピンクノワンピースのデビュー時にはすでに出会っていた。ということは、この馬名に何か感じるものがあったかもしれない。 なお、武豊騎手はピンクノワンピースとシンボリルドルフの間に生まれた子ノボビッグワンに騎乗して初勝利に貢献している。また、リンドシェーバーとの間に生まれたメイショウムネノリが皐月賞に出た時の鞍上は、ウォーターナビレラの調教師・武幸四郎騎手。二人ともとくに意識してはいないと言うが、この馬でGIを取ったりすれば、やはり馬と人との縁を実感してしまう。 ウォーターナビレラの父シルバーステートは今年の新種牡馬。ファーストシーズンサイヤーランキングではドレフォンに次いで2位だが、ここでGⅠ馬を送り出せば、ディープインパクトの後継種牡馬として一気に名を上げる。重賞未勝利の種牡馬がGⅠ馬を送り出すというのも競馬の持つ奥深さだ。3戦3勝、前走ファンタジーS組はここ10年で3勝。母の父としてブレイク中キングヘイローの後押しもある。 武豊騎手といえばG1未勝利レースとして次週の朝日杯ばかりが取り上げられるが、このレースも1994年にヤマニンパラダイスで勝ったのが最後。ピンクノワンピースのデビューから33年、GⅠに出てきたひ孫に乗ってウイニングランをするところを見てみたい。●ひがしだ・かずみ/伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
2021.12.11 16:00
NEWSポストセブン
「運」の呼び込み方を考察(イメージ)
夢の馬券生活 武豊も「最も大事」と語る「運」を呼び込む方法を考える
 誰もが夢見る“馬券生活”。「JRA重賞年鑑」で毎年執筆し、競馬を題材とした作品も発表している作家・須藤靖貴氏も、馬券生活を夢見て日々、競馬の研究に勤しんでいる。そんな須藤氏が、「運」を呼び込む方法について考えた。 * * * 目当ての馬がハナ差4着なんてのはしょっちゅう。ツイてないと舌打ちして次のレースへ向かうわけだが、そもそもツキ=運ってなんだ? と考えた。秋の夜長だし。 定義は「物事を成就させる成就させないかの、巡り合わせ」(新明解)。「その人の意思や努力ではどうしようもない巡り合わせ」(Wikipedia)というものも。なるほど、こっちの意思は馬券購入まで。レースは見守ることしかできない。 でも、その巡り合わせをコントロールできないものかと思うのも人情だ。巷には「運を味方にするコツ」「強運の法則」なる話が数多ある。 スポーツ紙友人からの又聞きだが、武豊ジョッキーは四半世紀前に「(レースに勝つために)必要なのは技術、知恵、運」と話し、最も大事なのは「運」と断じたという。技術と知恵は当然の前提という第一級の感覚だろうか。 私のような凡人にも、運を呼ぶためにできることもある。気構えだ。「謙虚さ」(米長邦雄・元将棋名人)、「感謝の気持ち」(松下幸之助)、そして「明るさ」(司馬遼太郎)。笑顔が大事というのはどの文献、ネット情報にも共通している。なるほど武さんには全部あるなぁ。 令和の今。勝負の世界で輝く若き三傑は、大谷翔平、久保建英、将棋の藤井聡太だろうか。圧倒的な努力の熱量に加えて、運を引き寄せる条件がそろっている感じ。みんな笑顔が良いよね。 話は逸れるけど、総裁選から身を引いた前総理にはすべてがなかった。特に謙虚さ。言葉を尽くす丁寧さ皆無。国民をナメていた。自ら運を放棄する人が国のかじを取っていたとは。「運」で思い出すのは勇退した角居勝彦・元調教師への取材である。師は運を信じた。「人間として運気が逃げるようなことはしない」と。ウソをつくとか約束を破るとか、仕事の手を抜くとか。自分の胸に翳りがあると馬の走りにも影響するのではと。ゲン担ぎ以前に、人間としてのまっとうな立ち居が大事というわけである。 さらに忘れがたい言葉は「人間のできる最高の美徳は我慢」。馬は人の4倍のスピードで成長するからフィジカル面ではかなわない。馬の上を行くにはメンタルの充実しかない。日々のさまざまな事柄に決してイラつかず、大目に見る。寛容も我慢に含まれるだろう。 ということで、運気を上げる方策に「我慢」を追加したい。これを政治屋に強いられるのは我慢ならぬが、自分が決めて実行するならば運も巡ってきそうじゃないか。要は気構え。今、この瞬間に変えることができる。 競馬を愉しめることに感謝。秋のGI戦線に勝ち名乗りを! きっと良いことあるさ。【プロフィール】須藤靖貴(すどう・やすたか)/1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。※週刊ポスト2021年10月8日号
2021.10.02 19:00
週刊ポスト
「運」の呼び込み方を考察(イメージ)
武豊の2020年全667レースを検証「逃げると負けない」は本当か
 誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない“夢の馬券生活”。競馬を題材とした作品も手掛け、「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆する作家・須藤靖貴氏が、名騎手は逃げ馬でも勝つものなのか、についてお届けする。 * * * ハクション! スギ花粉飛散の季節だ。時節柄、電車内などで飛び出すとジロリと睨まれてしまう。他人のそれも気になる。外歩きも要注意で、前を行く人がくしゃみをすれば急に進路を変えたくなる。人込みでは先に行こうと速足になる。とにかく前へ。気分は逃げ馬だ。 さて、減量騎手の逃げ率のデータなどを取ってみてきたわけだが、そのへん、勝率芳しきベテラン勢はどうなのか。「武豊が逃げると、ほぼ負けない」なる都市伝説もある。都市伝説ってのは根拠曖昧なる口承、鵜呑みにしてはいかんのです。ならばきちんと調べなきゃ。で、データを振り返ってみた。 逃げ先行の定義は1角通過3番手以内とした。2020年、武豊の全667レース。うち217回は逃げ先行、その率は実に.325(!)。減量騎手の逃げ頭・秋山稔の.297を上回っている。レジェンド、積極果敢である。やはりまあ、スタートで前に付けることが大事なんでしょうね。 逃げたときの1着53回、勝率.244(トータルの勝率.172)。連対率は.438(.327)、3着内率は.530(.417)と、逃げれば率も上がる。特にハナを切った場合は勝率3割超えだった。 ただでさえあっぱれな手綱さばきが、逃げることで凄みを増す。この都市伝説、◎である。ちなみに「ユタカさんが逃げたら、後続は諦めちゃう」こそが根拠皆無。そんな腰の抜けたメンタル、騎手にあるはずもない。 もう一人、リーディング上位常連の川田(将雅)はどうか。「川田の逃げに一杯なし」(競馬記者友人の説)。逃げてもしっかりと脚をためて直線で馬が余力十分、というわけである。2020年の最高勝率(通算4回目)を誇る剛腕、勝ち鞍は多いわけだが、実際はどんなもんなのか。 2020年の594回騎乗中、逃げ先行212回。逃げ率.357(!!)。そのときの1着85回で勝率.401。連対率.608、3着内率.703。トータルがそれぞれ.281、.468、.572だから、すごい数字が逃げるとさらに跳ね上がる。特にハナを切った38回中19勝と半分勝ち。ダッシュよく前へ、流れを決めたと見るやすっと落ち着かせて脚をためる。直線は剛腕炸裂。この塩梅が絶妙なのだった。「逃げたときには」とは結果論の典型だろう。だが先行しそうな馬は検討時に分かる。その脚色を鞍上も承知しているから、「逃げて勝てると思うから逃げる」という証左ではなかろうか。「とにかく前につけて粘る」といった直情径行の出たとこ勝負よりも深みがありそう。でもそのぶん、馬券的妙味は薄くなるかな。リーディング上位常連の、このあたりのメンタルに寄り添えれば欣快だ。【プロフィール】須藤靖貴(すどう・やすたか)/1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。※週刊ポスト2021年3月12日号
2021.02.27 19:00
週刊ポスト
阪神競馬場
武豊騎手が未勝利の朝日杯FS 社台グループ集大成の血に期待
 一番人気が強かった秋のGIだが、ここは傑出馬不在の混戦模様である。競馬ライターの東田和美氏が朝日杯フューチュリティステークス考察した。 * * * 2歳の暮れにこのレースを使って、翌年のクラシックを制覇した馬は2000年以降の20年間では3頭。2000mの中山競馬場のホープフルSがGⅡ(その後GⅠ)になり、朝日杯の舞台が阪神競馬場に替わった2014年以降は、2018年に3着だったグランアレグリアが桜花賞馬になったものの、牡馬は1頭もいない。だが、その後マイル以下のGⅠを勝ったのは、グランアレグリアを含めて8頭もいる。 一方、ホープフルSからは2014年以降だけでも3頭のクラシックホースが出ている。2016年の皐月賞馬ディーマジェスティもこのレースを選んだが、馬番確定後に出走を取り消している。阪神で行なわれていたGⅢのラジオNIKKE杯時代から合わせれば、過去20年で13頭のクラシックホースが出ている。 かつて2歳牡馬(セン馬)GⅠが朝日杯しかなかった時代、2歳トップクラスの馬でも、ここでの結果を見て来春の構想を立てていたが、いまやこのレースを前にした時点で選択を迫られている。勝ち上がった有力馬が多い厩舎や、牧場サイドが主導権を握っている場合は、「使い分け」も考えられるが、いずれにしろクラシック戦線に突入したということだ。1週間後のホープフルS登録馬と臨戦過程などを見比べて検討するのもいいだろう。 距離適性については藤沢和雄調教師が著書『GⅠの勝ち方』(小学館)でこう述べている。《使ってみないとなかなかわからないところがある。競馬に使ってみて初めて、やっぱりマイルより長い距離は難しいかもしれないとか、逆に短い距離ではスピードが足りないとか判断できることが多い》。2014年以降の勝者のうちリオンディーズは2000m、サトノアレス、ダノンプレミアムは1800mでのデビュー勝ち。しかし2000mのホープフルSではなく、こちらに照準を合わせて結果を出した。 さらに2000年以降の勝ち馬でも、半数以上の11頭が1800m以上の距離経験があり、うち8頭は勝っている。もちろんGⅠということはあっただろうが、適性を見極めていたのだろう。G1 レースとなるとタイムも大幅に短縮するが、そんなときマイルより長い距離を経験していることがプラスになったとはいえないか。なおダートを含む1400m以下でデビューした馬も、このレースまでに1600m以上を経験している。GⅠでいきなりの距離延長は厳しいのだろう。 ところで朝日杯といえば武豊騎手が新設のホープフルS以外で唯一勝っていないGⅠ。それ以外すべて勝っているというのがとんでもないことなのだが、この時期になると毎年話題になる。20回騎乗して2着5回3着2回。連対率.250というのは決して悪くない。そのうちテン乗りは5回だけだが2着2回3着1回と連対率、3着内率でも上回っている。昨年も前走ルメール騎手で京王杯2歳Sを勝ったタイセイビジョンにテン乗りで参戦、人気通り2着に導いている。 ドゥラモンドはレーン騎手で1800mをデビュー勝ち。前走のルメール騎手から武豊騎手に乗り替わった。未勝利馬もいた前走はレースレベルが高かったとはいえないが、社台グループ種牡馬の集大成ともいえるドゥラメンテの血に期待したい。なにしろガーサントまで入っているのだ。 前走重賞を勝っている4頭はもちろん有力だが、配当的には1800m、2000mを経験しながらこちらに参戦してきたバスラットレオン、2000mでデビュー勝ちし、前走が1800mの東京スポーツ杯3着だったジュンブルースカイに妙味がある。 競馬の世界でも「史上初」がいくつもあった2020年、現代競馬最大の功労者にもう一つ勲章が加わってもいい。来年以降を考えれば、新種牡馬の活躍も必要だ。●ひがしだ・かずみ/伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
2020.12.19 16:00
NEWSポストセブン
角居勝彦調教師
技術に長けた調教助手でなければできないこと【さらば愛しき競馬vol.4】
 現役最多のGI38勝(中央、地方、海外)を誇る角居勝彦調教師は、家業である天理教の仕事に就くため2021年2月で引退、角居厩舎は解散となる。調教師生活20年、厩務員として栗東トレセンに来てから34年、北海道のグランド牧場で初めて馬に触れてから40年。角居師は自身のホースマン人生の集大成として『さらば愛しき競馬』を上梓した。角居師によるカウントダウンコラム(全13回)、今回は若駒の調教とレース選択について語る。 * * * 角居厩舎はクラシックディスタンス、牡馬でいえば2000mの皐月賞、2400mのダービーを目指す馬を多く預からせていただきました。 朝日杯フューチュリティステークス(FS)は、2013年まで中山競馬場で行なわれていましたが、角居厩舎からの出走は2010年のリベルタス1頭だけ。ディープインパクトの初年度産駒。12月初めの500万(現1勝クラス)特別で2勝目をあげたので、胸を張ってGIレースに挑みました。 結果は3着。この時勝ったのは翌年NHKマイルカップを勝つことになるグランプリボス。サクラバクシンオー産駒で古馬になってからも安田記念やマイルCSで好走しました。2着のリアルインパクトも3歳で安田記念を勝つなど、トップクラスのマイラー。4着のサダムパテックもマイルCSを勝っている。 わがリベルタスの目標はクラシック。この次のオープン特別、2000mの若駒Sこそ勝ちましたが、クラシック戦線では結果が出ず、しばらく低迷しました。古馬になってからは2200mの準オープンを勝つなど、むしろ長い距離で活躍してくれました。つまりマイラーではなかったのです。 2015年には2000mの新馬戦を勝ったばかりのリオンディーズで(阪神競馬場での)朝日杯FSを勝っていますが、その後微妙な掛かり癖が顔を出すようになり、クラシックでは結果が出ませんでした。すべてが「マイルを使ったから」とは言い切れませんが、やはり将来マイラーとして大成しそうな馬を出走させたいところです。 2歳時はまだ体がしっかりしていないので、1600mのレースでも押していかないと前へ進んでいきません。そうすると馬は前へ行くものだと思うようになり、ハミを噛んで出て行ってしまう。それで掛かり癖がついてしまうことも多いのです。 調教ではハミを操作して、我慢することを教え込んでいきます。他に馬がいると競り合おうとしてしまう馬の場合は、単走で落ち着かせて走らせます。ただし、レースに行くと、こういった調教は役に立ちません。リラックスさせるためならいいのですが、他の馬がいるストレスにも慣れさせなければいけない。我慢させることは、技術に長けた調教助手でなければできないのです。 コース形態が独特の「中山のマイル」は、枠順による有利不利もはっきりしており、輸送負担もある関西馬が朝日杯FSを敬遠する傾向が強かったのは確かです。角居厩舎でもクラシック戦線で活躍したヴィクトワールピサやエピファネイアは、阪神競馬場の2000m、GⅢのラジオNIKKEI杯を使いました。 舞台が中山から阪神に替わっても、マイルであることに変わりはありません。2016年に朝日杯FSに出走させたクリアザトラックは、その後もマイルを中心に走らせましたし、クラシックを意識したグローブシアターはまだGⅡだった中山のホープフルS(2017年にGⅠに昇格)に出走させました。勝ち上がった馬が多い厩舎では「使い分け」ができるのです。 朝日杯FSは2歳牡馬唯一のGⅠで、外国産馬が出走できるのも興味深かったし、JRA賞の最優秀2歳牡馬は2018年までずっと朝日杯FSの勝者のものでした。しかし、昨年はホープフルS覇者のコントレイルが受賞。今年の活躍を見ればなるほどと思いますが、長い歴史を持つ「朝日杯」の重みが薄れてしまうのは少し残念です。 さらに2018年のサートゥルナーリア、2019年のコントレイルとも、トライアルを使わずに皐月賞に直行して勝ちました。これが既定路線になると、すでにクラシック戦線に突入したようで、未出走の2歳馬などはうかうかしていられなくなりました。◆角居厩舎 今週の出走予定馬12月19日(土)中山8R 3歳上1勝クラス サトノパシュート 牡3 55C・ルメール阪神7R 2歳1勝クラス メイショウハナモモ 牝2 54武豊中京6R 3歳上1勝クラス レッドレイル せん4 56☆森裕太朗12月20日(日)阪神8R 3歳上2勝クラス スマートアリエル 牝3 54武豊阪神12R 高砂特別3歳上2勝クラス ロイヤルバローズ 牡5 57坂井瑠星中京12R 尾張特別3歳上2勝クラス ダブルフラット 牡5 57藤岡康太【プロフィール】角居勝彦(すみい・かつひこ)/1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許を取得し、2001年に開業。以後19年間、中央でGI26勝、重賞計82勝を含む758勝(2020年11月22日現在)。最多勝利3回、最多賞金獲得5回など13のJRA賞を受賞。地方、海外を合わせたGI38勝は現役1位。デルタブルースでメルボルンカップ、シーザリオでアメリカンオークス、ヴィクトワールピサでドバイワールドカップを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援や障がい者乗馬など福祉活動にも尽力。管理馬は他にウオッカ、カネヒキリ、エピファネイア、ロジャーバローズなど。  
2020.12.18 19:00
NEWSポストセブン
「運」の呼び込み方を考察(イメージ)
同じエージェントの騎手が重なるレースに着目して見えるもの
 誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない夢の馬券生活。調教助手を主人公にした作品もある気鋭の作家で、「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆する須藤靖貴氏が、陣営(馬主さん、厩舎、生産牧場)と騎手を仲介するエージェント(騎乗依頼仲介者)に着目してレースを見直し、どのように馬券検討に生かすかについてお届けする。 * * * 同じ厩舎からの多頭出しは珍しくはないし、馬主さんの愛馬が揃って同レースを走ることも多々ある。それは馬柱を見ればすぐに分かるわけだが、隠れている重複もある。同じエージェント(以下age)の騎手が重なるレースだ。 騎手は勝てる馬に乗りたい。ageは仲介馬の勝利でインセンティブが得られる。両者の利益は一致するから、まあそれほど重複はないだろうとレース結果を眺めはじめた。ageを介さない騎乗もあるだろうが、いやはや、びっくりするほど多いのだった。馬券検討に役立つかもしれないと面白くなってやめられなくなり、2020年4月から11月半ばまでのデータを取ってみたのである。 リーディング上位騎手を含んだ13のグループ(G)。新馬と未勝利を除く平場の1244レースを振り返ると、934レースに重複があった。3場開催時の地方ではあまり重ならず、関東、関西が混み合うのである。手作業で時間を要したものの、おかげで騎手のage分けがほぼ暗記できた。 やはり目立つのは「ルメール、武豊、浜中、泉谷」の豊沢信夫氏G。このうち2人揃ったのは184レースもある。看板騎手だから共演は当たり前なのかもしれない。さらに3人出馬が46回、4人揃ったレースも7つあった! 6月27日阪神12Rではルメール、武豊、浜中のワンツースリー(単勝人気は1人、6人、3人)。泉谷は11着(13人)。勝つ馬は1頭だけ。勝ち鞍を喰い合っているようにも見えるわけだが……。「福永、岩田親子、小崎」の小原靖博氏Gも、2人揃い140回、3人が34回、4人勢ぞろいが1回と気を吐いている。 だが、なによりものすごいのは「松山、和田竜、松若」の櫻井眞人氏Gだ。トリオなのに2人重複が179回、3人顔を揃えたのは80回も。3者揃い踏みという点では他の追随を許さない。まるでレツゴ―三匹かキャンディーズといった様相である(旧くてスイマセン)。人気も実力もあるから騎乗依頼が重なる。圧巻は9月21日の中京10R。松若、松山、和田竜の順で決着(2人、1人、6人)。先の例と同じく、独禁法に抵触しそうにも思えるわけだが、競馬はそうは甘くない。総スカ(3着内に誰も入らず)も38回あった。 東西の別など同一age騎手が揃ってしまうのには諸々の理由もありそうだが、馬券の参考になりうると睨むわけである。ageが(たぶん)自信をもって仲介する馬。それが同じレースに出るのだから、なにかしらのファクターが読めるはずだ、 ともあれ、データを取って初めて分かることも多い。新聞の馬柱が、これまでとは違った景色に見えてくる。【プロフィール】須藤靖貴(すどう・やすたか)/1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。※週刊ポスト2020年12月18日号
2020.12.12 16:00
週刊ポスト
角居勝彦調教師
角居師「牝馬は叱ったりすると逆効果なことが多い」【さらば愛しき競馬vol.3】
 現役最多のGI38勝(中央、地方、海外)を誇る角居勝彦調教師は、家業である天理教の仕事に就くため2021年2月で引退、角居厩舎は解散となる。調教師生活20年、厩務員として栗東トレセンに来てから34年、北海道のグランド牧場で初めて馬に触れてから40年。角居師は自身のホースマン人生の集大成として『さらば愛しき競馬』を上梓した。角居師によるカウントダウンコラム(全13回)、今回は阪神ジュベナイルフィリーズに合わせてキャリアの浅い牝馬のコントロールについて語った。 * * * 今週末は2歳牝馬チャンピオン決定戦の阪神ジュベナイルフィリーズ(JF)です。今年は白毛馬で初めて芝の重賞を勝ったソダシが人気を集めそうですね。白毛馬、とにかく本当に白い(笑)。汗をかいたりしてピンク色になってくるのを見ると、神々しい感じさえします。白毛馬は他にも何頭かいますので、機会があったらぜひ競馬場で見てほしいと思います。 ソダシの母親ブチコは白毛といっても、その名の通りブチの模様があって、見ているだけで頬が緩んでしまいました。パドックで馬を引く厩務員さんも同じようにブチのユニフォームを着て出てきたのを覚えています。 角居厩舎にも昨年サトノジャスミンという白毛馬がいました。ホワイトドラゴンの妹でしたが、2戦してともに二桁着順。小柄でカイ食いも細く、体質的に弱かったですね。調教を進めていくのが難しかったのですが、気性はおとなしくて扱いやすく、かわいい馬でした。血統がいいので、繁殖に上がったと聞いています。牝馬は競走だけでなく、引退してからも大きな仕事が待っています。 阪神JFに出てくる馬はキャリアの浅い馬が多く、1勝馬が抽選で出られることもあるGⅠです。桜花賞と同じコース・距離で行なわれるため、とくに輸送の負担の少ない関西の牝馬はぜひ出たいレースです。この時期に一つ勝っているというのは、ある程度の素質があることは間違いないので、たとえ勝てなくても、その馬の“現在地”を知ることができ、それが今後の路線や調教の指針になっていきます。 新馬戦や未勝利戦は将来G1馬になるような馬と、一度も勝てない馬が一緒に走るレースです。能力があれば楽に勝ってしまうこともありますが、その結果、馬が競馬をナメてしまうことがある。もちろん、馬の気性や資質を見きわめますが、この時期に強いメンバーの中で走ることで、さらに成長することがある。 角居厩舎でいえば2006年に4番人気で出走したウオッカ、2007年3番人気のトールポピーはともに1勝馬で、「来年へつながる走りを」という思いでの出走でした。ここを勝ち切ったから強いともいえますが、勝ったことでさらに強くなったのだと思います。2018年はウオッカの子タニノミッションを新馬戦勝利後の2戦目に、昨年は新馬勝ち後にオープン特別で2着だったロータスランドを出走させています。 今年はジャパンカップまでの牡牝混合の古馬芝GⅠはダートと3200mの天皇賞(春)以外、すべて牝馬が勝っています。パワーやスタミナでは牡馬ということかもしれませんが、スピードや勝負強さなど、生物学的に見ても牝馬の方が上なのではないかという気さえします。馬体の大きさでも見劣りしない馬が増えてきました。牝馬だから負担重量が軽いというのは、かなり得な感じがするようになりましたよね。 牡馬は成長するにしたがって自我を出してきます。言ってみればオトコをアピールするのですが、それがすぎると調教の邪魔になるので、ある程度厳しく接したほうがいい。それに対して、牝馬の場合は叱ったりすると逆効果なことが多い。厩務員はあくまでもやさしく、恭しく、女王様のように扱った方が力を発揮します。 しかし牝馬の方がナーバスになりやすいし、メンタルが一度崩れると立て直すのが難しくなります。ジョッキーも剛腕タイプではなく、あたりの柔らかい騎手のほうがいいですね。思いつくジョッキーはみなけっこうイケメンですが、牝馬でもビジュアルまでは気にしないと思います(笑)。◆角居厩舎 今週の出走予定馬12月12日(土)中京5R 障害3歳上オープン グローブシアター 牡6 60高田潤阪神8R 3歳上2勝クラス ワイドソロモン 牡3 56武豊阪神9R エリカ賞 2歳1勝クラス トーセンインパルス 牡2 55浜中俊阪神10R 境港特別 3歳上2勝クラス アイアンバローズ 牡3 55武豊12月13日(日)阪神10R 堺ステークス 3歳上3勝クラス スマートランウェイ 牝4 55C.ルメール中京12R 名古屋日刊スポーツ杯 3歳上2勝クラス サターン 牡4 57加藤祥太【プロフィール】角居勝彦(すみい・かつひこ)/1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許を取得し、2001年に開業。以後19年間、中央でGI26勝、重賞計82勝を含む758勝(2020年11月22日現在)。最多勝利3回、最多賞金獲得5回など13のJRA賞を受賞。地方、海外を合わせたGI38勝は現役1位。デルタブルースでメルボルンカップ、シーザリオでアメリカンオークス、ヴィクトワールピサでドバイワールドカップを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援や障がい者乗馬など福祉活動にも尽力。管理馬は他にウオッカ、カネヒキリ、エピファネイア、ロジャーバローズなど。 
2020.12.11 19:00
NEWSポストセブン
エージェント(騎乗依頼仲介者)をどう活用するか?
競馬の「エージェント」、馬券検討の情報として有効なのか?
 誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない夢の馬券生活。調教助手を主人公にした作品もある気鋭の作家で、「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆する須藤靖貴氏が、エージェント(騎乗依頼仲介者)は馬券検討の情報として有効か、についてお届けする。 * * * エージェント(以下age)。代理人である。競馬界での正式名称は「騎乗依頼仲介者」。陣営(馬主さん、厩舎、生産牧場)はあるレースに出る馬にA騎手を乗せたい。そこでAと契約しているageに頼む。ageはトレセンに出入りする競馬界に精通するトラックマンがほとんど。現役もいれば「元〇〇紙」という御仁もいる。 かつては騎手と陣営が直でやりとりしていた。うまくいくときはいいけどダメな場合もある。断る(断られる)というのはツラいもので、人間関係にヒビが入るのである。そこでageが登場、台頭する。今では騎手とセットになっている感もある。もちろんageに頼らないジョッキーもいる(2020年11月現在、騎手139人中90人がage契約)。 ちなみにageは「競馬関係者」なので馬券を買うことができないという(ホントか?)。さまざまな問題もあるようだが、ひとまず横に置いておく。こちらの興味は「馬券検討の情報として使えるか」に尽きる。ageの分析が予想のファクターになるはずと思えるのだ。 1人のageが契約できる騎手は4人(減量騎手1人含)。JRAホームページに載っている。騎手は勝てる馬に乗りたい。ageは仲介馬が勝てばインセンティブが得られるという。両者の利益は一致し、腕利きのageの元に腕のいい騎手が集う。 JRAの表を見るとひときわ目につく集団がある。Cルメール、武豊、浜中、泉谷の豊沢信夫氏のグループ。そして福永、岩田親子、小崎を擁する小原靖博氏。さらには松山、和田竜、松若の櫻井眞人氏。まだまだある。同グループの騎手は、基本的には同じレースに乗らない。1着を狙うのだから当然だ。それでも顔が重なることもある。このあたりに、なにかがありはしないか。 また、同一グループ内での乗り替わり。そして関西騎手が関東へ遠征する場合など。どういう結果になったのか、データを取ってみた。身内の記者が関わっているため、競馬メディアでは決してやらない作業のはずだ。出走表にage名を書き加えてみると、何かが見えてきそうである。特に現役トラックマンの紙面の印。自分で仲介しておきながら「△」ってどうよ。胸を張って仲介したものの、このメンバーの力関係を冷徹にみると△ってことだろうか。そして結果は? さて11月。阪神の「みやこS」に好きな馬が出た。鞍上は浜中。馬柱には武豊の名も。武豊騎乗の馬は単勝2番人気。浜中は7番人気。迷わず浜中の馬を軸に据えた。結果は浜中5着、武豊10着。直線の浜中の手綱には瞠目した。前の3頭に離されたところから渾身の追いっぷり。馬券はスカでも、気持ちはスカっと秋晴れなのだった。【プロフィール】須藤靖貴(すどう・やすたか)/1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。※週刊ポスト2020年12月11日号
2020.11.28 07:00
週刊ポスト
東京競馬場
秋の天皇賞 満を持して直線勝負に賭けるキセキを狙ってみる
 府中の芝2000メートルは数々のドラマが繰り広げられたきた舞台だ。競馬ライターの東田和美氏が考察した。 * * * ここを勝てば史上最多のGⅠ8勝目となる5歳牝馬アーモンドアイは、3歳春のオークスから9戦連続GⅠに出走してすべてオッズ1倍台、うち6回はその人気に応えている。実績馬が集結するこのレースで単勝1倍台になった馬は、平成以降6回あって、勝ったのは昨年のこの馬が初めてだ。 強さを見つけたヴィクトリアマイルから中2週で臨んだ安田記念では、グランアレグリアの強襲に屈した。これはアーモンドアイが目標にされたからこそで、「敗因」を探るというほどでもないし、ここで改めて、その強さを論じる必要もない。「自信の◎」などというのはかえって失礼だ。 ただし、菊花賞のコントレイルほど「絶対」ではない、と思う。菊花賞出走のGⅠ馬は、コントレイルだけだったが、今回は他に5頭もいる。平成以降の31回中19回は、すでにGⅠ馬となっている馬が勝っている。なかでもクラシックホースはダービー馬が5勝、皐月賞馬が4勝、オークス馬も3勝と、3歳時にGⅠを制した馬が強い。 しかし菊花賞馬がこのレースを勝ったのは1989(平成元)年のスーパークリークと2017年のキタサンブラックだけ。そもそも出走したことがあるのは半数の16頭(19回)で2勝2着2回3着1回。キタサンブラックは1番人気での勝利だったが、18着降着のメジロマックイーンや三冠馬ナリタブライアンなど、1番人気に推された他の5頭は馬券圏内にすら入っていない。かつては菊花賞馬にとって鬼門ともいえるレースだった。 近年は事情が違う。2400m以上のGⅠを勝つような馬は、走りなれた東京コースではなく、パリの凱旋門賞に向かっていったのだ。 その先駆けとなったのは2001年の菊花賞馬マンハッタンカフェ。3歳の夏に1000万下(2勝クラス)を勝って菊花賞に参戦し、ジャングルポケットなどを破って優勝、暮れの有馬記念、翌春の天皇賞(秋)と連勝して渡欧した(凱旋門賞では13着)。その後は、ディープインパクト、オルフェーヴル、ゴールドシップ、サトノダイヤモンドと菊花賞を含むGⅠ2勝以上を挙げている馬は、秋の東京ではなくパリを目指した。いまさら天皇賞を勝つより、もっと魅力的なレースがあるということを、日本人に知らしめてくれた。凱旋門賞当日の空気を吸って、日本の競馬ファンに一夜の夢を観させてくれた。ファンも凱旋門賞という選択に感謝したはずだ。《オークスから毎レース後、熱中症のような症状が現れはじめた。》《レース後のケアや体調の変化、長距離輸送のリスク、負担重量、タフで特殊な馬場を総合的に考えての決断に至った。》(国枝栄『覚悟の競馬論』講談社現代新書) 調教師の「決断」までの葛藤が手に取るようにわかる。ホースマンとして愛馬のことを考えればこその尊い「決断」だ。部外者がどうこういうことではないし、凱旋門賞に出ていなくても最強馬なのかもしれない。逆に、その時代の日本最強馬でなくても、凱旋門賞に出ているケースもある。 アーモンドアイが出ていれば、と日本の競馬ファンは痛切に思った。調教師も《本音を言わせてもらえば、アーモンドアイを凱旋門賞に出走させてあげたかった》(同上)。勝ち負けになる日本のGⅠレースに背を向けてでも出走したいのが凱旋門賞なのに、それが果たせなかった無念が伝わってくる。 もちろん、馬には自分が凱旋門賞に出たのだという自負はないし、出ていないという負い目もない。凱旋門賞に出た馬の方が強いということもないのだろう。しかし、武豊という騎手は誰よりもその重みを知っており、角居勝彦という調教師もまた最高の目標として意識し、2度にわたってその舞台を踏んでいる。 軸は昨年の凱旋門賞で日本馬として最先着したキセキ。 一昨年のJCではハイペースで逃げてアーモンドアイの世界レコードをアシストし、今年の天皇賞(春)では、2周目のスタンド前で大きく外に膨らみながら先頭に躍り出てしまうちぐはぐなレースでフィエールマンに連覇を許し、宝塚記念ではクロノジェネシスに6馬身ちぎられた。前走の京都大賞典でも、アーモンドアイと同じ勝負服を捕まえきれず、3年前の菊花賞以来、勝ち星から遠ざかっている。 しかし天皇賞(春)で、キセキの掛かり癖に手を焼いた鞍上は、宝塚記念で「タメればキレる」ことを確信。その意を受けた代打騎乗の浜中騎手は前走で最後方に控えてタメをつくった。今回は再びパリから戻った武豊騎手が手綱を取る。2400mを2分20秒9という時計で2着に逃げ粘った馬が、今回は満を持して直線勝負に賭ける。「じっくりタメをつくる」といえば角居厩舎のポリシーともいえる調教方針。来年2月で勇退するG1 26勝の名伯楽が、ホースマン人生の集大成ともいえる仕上げをしてくるはずだ。 相手筆頭はもちろんアーモンドアイだが、2019年にこのレースではなくパリに行くことを選んだ菊花賞馬フィエールマン、3歳で有馬記念を制したブラストワンピースにも敬意を表したい。そしてもう1頭、凱旋門賞馬の産駒クロノジェネシス・・・・来年の秋こそは、自由な選択ができるようになってほしいものだ。●ひがしだ・かずみ/伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
2020.10.31 16:00
NEWSポストセブン
名物馬主・近藤利一氏死去で“アドマイヤたち”はどこへ行く?
名物馬主・近藤利一氏死去で“アドマイヤたち”はどこへ行く?
 競馬界の名物オーナーが世を去った。「アドマイヤ」の冠名で知られた馬主の近藤利一氏が11月17日、77歳で亡くなった。近藤氏は1999年にアドマイヤベガで初めてダービーを勝ち、GIや重賞勝ち馬を何頭も所有する「剛腕オーナー」として知られていた。競馬評論家の阿部幸太郎氏は、こう話す。「競馬場に現われると周囲の空気が張り詰めるのがわかるほど威圧感のある方でした。馬に対しても強いこだわりを持っていて、レースでの騎乗を巡り、騎手や調教師と激論を交わすことも度々あったそうです」 トップジョッキーの武豊(50)も例外ではなかったという。 武はダービーを勝ったアドマイヤベガに騎乗するなど、近藤氏から重用されていた。ところが、ある時を境に武は「アドマイヤ」を冠した馬に全く乗らなくなったのだ。「2007年に香港クイーンエリザベスII世杯でアドマイヤムーンに騎乗したのを最後に、近藤さんは一度も武騎手を乗せていません。香港での騎乗を巡って対立があったといわれています。ここまでのこだわりを見せる人は他にいない。“物言うオーナー”として競馬への愛は人一倍でした」(スポーツ紙競馬担当記者) 注目されるのは、残された近藤氏の所有馬の行方だ。5月にGI・NHKマイルCを勝ったアドマイヤマーズといった現役馬だけでなく、7月のセレクトセールで4億7000万円という史上4位の額で落札したディープインパクト産駒の馬など、活躍が見込まれる馬を多数所有していた。JRAの規定では故人の馬主名義変更には1か月の猶予期間がある。「過去にも大物個人馬主が亡くなった際に、相続人ではなく親しい競馬関係者に譲渡された例がある。近藤氏は『大魔神』こと佐々木主浩氏と共同で馬を持っていた過去があるが、そうした交友のある馬主らに譲られる可能性もあるとされ、近藤氏からNGだった騎手も騎乗機会が増えると思われます」(同前) 名物オーナーが愛した馬たちが、これからも競馬界を盛り上げてくれることになりそうだ。※週刊ポスト2019年12月6日号
2019.11.27 16:00
週刊ポスト
検討しがいのあるレース
マイルCS 「前走からの巻き返し」「騎手の経験内容」に注目
 今年はレベルの高い大混戦、見どころ十分なレースとなりそうな第36回マイルチャンピオンシップ。競馬ライターの東田和美氏が分析した。 * * * 出走馬の前走を見ると、天皇賞(秋)からの参戦馬が9勝。天皇賞を勝って参戦したのは2頭だけで5頭は着外、皐月賞馬ジェニュインなどは14着だった。天皇賞で好走するようなら普通はJCを目指す。馬は元気だけど天皇賞の内容から2400mは長いかなと見直した馬がマイルCSに回ってくる。 スワンSからは6勝2着9回3着11回で王道路線。馬券に絡んだ26頭のうち19頭はスワンSでも連対を果たしている。しかしここ20年間で勝ったのは10年のエーシンフォワードだけだ。 富士Sからは4勝2着7回。ここ3年で4頭が連対、うち2頭は5着からの巻き返しだった。タフな東京マイルでは5着以下でも、スピードの生きる京都ならと5頭が連対をはたしている。 府中牝馬S、毎日王冠、さらに安田記念からの直行組は過去1勝ずつあげているが、いずれも連対しての参戦。今年の出走馬はこの6つの路線に絞られている。 人気別でみると1番人気馬は10勝2着7回と連対率は5割6分にもなるが、次に目立つのが4番人気馬の7勝2着4回、連対率では2、3番人気を上回っている。 過去30年、人気上位4頭が馬券圏内(3着以内)に絡まなかったことは一度もない。3着以内に4番人気馬までの2頭が入ったことが20回、そのうちすべてが4番人気までだったことが8回もある。 30回のうち21回は単勝三桁。馬連が発売されてからの28回で万馬券は5回しかなく、すべて二桁人気が連対してのものだ。三連単14回はすべて1万円超だが、10万馬券は4回だけだ。 ということで、4番人気までを軸に考えるのが現実的だが、やはり穴っぽいところもチェックしておきたい。 現在騎手リーディングトップはルメール騎手、2位は川田騎手。今回は二人とも人気馬への騎乗だが、マイルCSでは過去人気馬に乗ったこともありながら勝ったことがない。リーディング3位戸崎騎手は負傷離脱中、4位福永騎手は騎乗停止、5位が武豊騎手だが、6位から10位までの騎手の名前は今回の出走表にない。その代わり短期免許で来日した外国人騎手が4人いる。 このレースではルメール騎手やM・デムーロ騎手も含め、短期免許の外国人騎手が過去10年で35回日本馬に騎乗しており2勝2着2回3着2回。確かに昨年はビュイック騎手がテン乗りで5番人気のステルヴィオを勝たせているが、この10年間武豊騎手と岩田康騎手がともに9回の騎乗で2勝ずつあげていることを考えれば、外国人騎手に任せたからといって好結果が出ているとは言えない。しかも岩田騎手は2度とも乗り替わり、人気薄での勝利である。 さらに4番人気以内の馬に外国人騎手が初めて騎乗したのは11回ありながら0勝2着2回と期待に応えていない。世界の一流騎手が乗ることで過剰人気になっていることも考えられるし、高速馬場の京都、外回り1600mという舞台も経験が必要なはずだ。 ムーア騎手はこれまでマイルCSには過去8回騎乗して〈1 1 1 5〉。2017年2着のエアスピネルこそテン乗りだったが、2015年の覇者モーリスは2度目、2016年3着のネオリアリズムも1年前の準オープンで勝たせている。昨年2番人気のアエロリットはテン乗りで12着に敗れたが、今回騎乗するアルアインには京都1600mの新馬戦で騎乗して1着になっている。 天皇賞(秋)では初の二桁着順となる14着と大敗したが、大阪杯の前走GⅡ金鯱賞でもコンマ9秒離されながらしっかり巻き返した。2000mを中心に使われてきたが、昨年のこのレースでは3着に来ており、レーティングも出走馬中トップ。ここを勝てばGⅠ3勝目、ディープインパクト産牡馬としてもトップに立つ。●ひがしだ・かずみ/今年還暦。伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
2019.11.16 16:00
NEWSポストセブン
平成で登場した競馬を楽しめる場外の地
競馬シーンを変えた「WINS」 今や特有の雰囲気は消えた
 平成がはじまる少し前に、競馬の「場外馬券売場」は「ウインズ」(WINS)という名称に変わる。改装・新設された“鉄火場”はまるでショッピングセンターのようになり、ギャンブル場特有の胡散臭い雰囲気が徐々に消えていった。競馬歴40年のライター・東田和美氏が指摘する。 * * *「中央競馬のあらまし」によれば、昭和40年代後半まで馬券の売上がもっとも多かったのは開催競馬場。昭和50年代になって徐々に場外馬券売場での売上の割合が高くなり、平成元(1989)年では、開催場が2割、「ウインズ」が7割(残りは電話投票)になった。 だからといって競馬場に出かける人が減ったわけではない。平成元年といえば、20歳になったばかりの武豊や、前年中央に移籍したオグリキャップなどの活躍で競馬ブームが到来した年。翌2年のダービーでは東京競馬場に19万人、暮れの有馬記念では、18万人近くの観衆を集め、競馬場の入場人員も年間1000万人に達した。 昭和最後の年に2兆円を突破したばかりの馬券売上はあっという間に3兆円を超える。GIレース当日ともなれば、競馬場はもちろん大混雑。平成6年には、プロ野球セ・リーグ観客数を上回り、ピークの平成8年には1411万人。開催日には平均5万人近くが競馬場に来ていたということになる。指定席は朝暗いうちから並ばなければ購入できず、プラチナペーパーとなっていた。 一方、ウインズは繁華街にあるため行きやすく、かつては周囲に予想屋も店を出していて独特の雰囲気があった。入場料も取られないので、競馬場へは行かず、ウインズ専門というファンも多い。館内では競馬場ほど動き回らなくてすむので、馬券検討に集中できるのだという。行けば常連の仲間に会えるし、飲み屋もすぐ近くにある。 もちろん混雑時にはウインズでも入場制限を行なうため、午前中から長い行列ができ、馬券購入を諦めざるを得ないこともあった。この時代はまだ、口頭で買い目を伝えての購入だ。ウインズでは1日分をまとめて買う客も多かったので、一人をさばくのに余計に時間がかかる。締切間際になると、後方に並んでいる客から「早くしろ!」と怒号が飛ぶのも、おなじみの光景だった。「馬が好き」とか「レースの醍醐味を堪能する」というよりも、純粋にギャンブルとしての場所だった。 平成になってからは、毎年のように新しいウインズがあちこちにオープンする(もちろん昭和の時代から何年もかけて地元の理解を得るため折衝を重ねてきた)。平成6年の香川・高松からはじまり、秋田・横手、鳥取・米子、青森・津軽、長崎・佐世保、山口・小郡など、それまで中央競馬と縁が薄かった地域にも建設された。子供の遊び場なども完備され、家族連れで出かけても違和感がない、明るい雰囲気の施設ばかりだ。また、有料定員制の「エクセル」や、非滞留型の「ライトウインズ」、さらに地方競馬場や、地方競馬の場外発売施設でも発売されるようにもなった。非開催の競馬場も、「パークウインズ」などと呼ぶようになった。 しかし、世間では携帯電話が徐々に普及。平成7(1995)年に「ウィンドウズ95」が発売されてパソコンも身近になりつつあった。平成10年には電話・インターネット投票の加入者が100万人に達し、売上も1兆円を超えるが、それでもまだ30%以下で、ウインズでの売上が倍以上を占めていた。(この項続く)●ひがしだ・かずみ/今年還暦。伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。※週刊ポスト2019年10月4日号
2019.09.29 07:00
週刊ポスト
凱旋門賞制覇は日本の競馬ファンの夢
近年のダービーは「もっとも堅いGI」、あえて穴を狙うなら
 今週末はすべてのホースマンにとっての夢舞台であるダービー。平成28(2016)年に生まれた約7000頭のサラブレッドの頂点に立つ馬が決まる。週刊ポストで『60歳からの「儲ける競馬」』を連載する競馬歴40年のライター・東田和美氏が今年のダービーの行方について占う。 * * * ダービーではここ4年ずっとノーザンファームの生産馬が勝ち続けている。ノーザンファームはこの春も大阪杯からGIを7連勝中。ダービー5連覇に向けて、サートゥルナーリア、ヴェロックス、リオンリオン、ランフォザローゼスなど有力馬を揃えた。とくにサートゥルナーリアは4戦4勝。年明け初戦の皐月賞前、陣営は不安でいっぱいだったというが、それをクリアしたことで、今度は「上積み」もある。 過去30年を見るとダービーはGIのなかでもっとも堅いレースといえる。1番人気馬が16勝2着5回、2番人気馬が3勝2着5回、3番人気も7勝2着6回と、上位人気馬が確実に上位を確保している。単勝払戻が1000円以上だったのは、わずかに5回。8番人気以下が勝ったことは一度もない。馬連の万馬券は5回だけだ。 皐月賞は戦前ではサートゥルナーリアの1強ムードだったが、3着までが同タイムの激戦。ダービーもこの「3強」が人気を集めているが、過去30年で1~3着が1~3番人気で決まったこと4回、1~3番人気のうち2頭で決まったことが13回もある。 ダービー馬のうち23頭の前走が皐月賞。他の7頭のうち4頭はNHKマイルカップか京都新聞杯を、1頭はOPすみれSを勝っている。「前走が皐月賞ではないレースで、しかも勝っていない」2頭のダービー馬というのは、タニノギムレットとウオッカの父娘だけというのは不思議なめぐりあわせだ。皐月賞組23頭のうち連勝して2冠を達成したのは9頭、17頭が3着以内だった。 トライアル組が勝てないことでも知られている。青葉賞からは平成30年間で73頭が参戦しているが、0勝2着7回3着4回。あのシンボリクリスエスやゼンノロブロイでも勝てなかった。早い時期に賞金を積み上げ、早いうちからこの日に向けて態勢を整える必要があるのだ。その点でも「ダービー前に中山に2回輸送したくなかった」というサートゥルナーリアの準備は万全だ。 そんなことで無謀な穴狙いはおすすめできないのだが、「平成最後のダービー」となった昨年は、30年間で初めて1~3着に1~3番人気が絡まなかった。終わってみれば皐月賞の1番人気と皐月賞馬のワンツーだったが、馬連は7950円、3着に16番人気が飛び込んで三連単は285万馬券となった。ついでに言えば、勝ったワグネリアンは父ディープインパクト、母の父キングカメハメハ。どちらもダービー馬だというのは史上初とのことだ。 これは、時代が変わる前兆だったのかもしれない・・・・そこで重箱の隅をつついてみることにする。 まず1番人気馬の単勝オッズが2倍を切ったのは5回あって4勝、さすがにダービーで人気になるような馬は、大舞台できっちり人気に応えている。 一方、2倍台は15回あって7勝。サートゥルナーリアはデビューから4戦すべて2倍を切っているが、今回皐月賞の上位3頭で人気を分け合って、2倍台ということになったら、1番人気でも少し危ういという指針になる。 ちなみに2倍台の1番人気馬が勝てなかった時の勝ち馬は、2番人気馬が1勝だが3番人気は3勝。ついでにいえば、1倍台の人気馬が唯一敗れた(2007年フサイチホウオー)ときに勝ったのも3番人気馬(ウオッカ)だった。前述のように、2番人気より3番人気のほうが勝率、連対率ともに上。3着以内に入ったのは3番人気馬が17回だったが、2番人気馬は8回のみ。これはちょっと覚えておきたい。 今回話題になっているのが乗り替わり。なにしろ平成30年間、前走から騎手が乗り替わってダービーを勝ったケースは1度もないのだ。一番最近では1985年のシリウスシンボリが岡部騎手から加藤和宏騎手への乗り替わりだったが、もともとは加藤騎手のお手馬だった。テン乗りということになると、1954年までさかのぼらなければならないそうだ。 もちろんレーン騎手は、今回初来日でほとんどが乗り替わりの59騎乗機会で15勝2着6回(5月19日終了時点)という成績を残しているし、テン乗りでGIヴィクトリアマイルとGIII新潟大賞典を勝っている。なにより、いまさら他のリーディング上位騎手を確保するのも難しいだろう。 サートゥルナーリアの場合は、ルメール騎手が短期間で同様の不注意騎乗ということでの16日間の騎乗停止によるものだった。制裁の対象がNHKマイルカップだけだったら、ダービーには乗れていたのだ。そして、ダービーを勝つのは「運のいい馬」と言われている。乗り替わりが不安要素の一つであることは間違いない。 関係者の思いが大きな力になるのがダービーだ。クラシックを目指す馬というのは、早々と主戦騎手を決めて、ともに戦うという意識が大事だという。たとえ前走で結果が出なくても、だからこそダービーでは挽回してくれるのではないかという思惑もある。 オークスでは2012年のジェンティルドンナなど3頭が乗り替わりで戴冠していることからみても、やはりダービーには見えざる力が働いているのだろう。 そこでまず3強のなかでは3番人気に落ち着きそうなダノンキングリー。デビューからずっと戸崎圭太騎手で3連勝。新馬戦で2着に下したのはオークスで波乱の立役者になったカレンブーケドール。共同通信杯では後にNHKマイルカップを勝つアドマイヤマーズに競り勝っている。「ダノン」といえば、昨年のランキング13位の有力オーナーの冠号だが、2010年のNHKマイルカップを勝ったシャンティがダーレー・ジャパン・ファームなのをはじめ、シャーク(2014年マイルCS)、プラチナ(2014年朝日杯FS)、プレミアム(2017年朝日杯FS)などは日高地方の牧場の生産馬で、社台グループの牧場以外でも実績を上げている。 キングリーも浦河の三嶋牧場産。昨年の秋華賞の2着ミッキーチャーム、3着カンタービレの生産でも知られている。今年はマスターフェンサーが果敢にケンタッキーダービーに挑戦した。ノーザンファームの独走に待ったをかけるとしたら、こういう牧場の馬ではないか。ちなみに武豊騎手が「テン乗り」のメイショウテンゲンもここの生まれだ。 ニシノデイジーもデビューからずっと勝浦正樹騎手で、2戦目の未勝利戦から札幌2歳S、東京スポーツ杯と3連勝した。西山茂行オーナーは「ダービーまで勝浦騎手で行く」と、スポーツ紙のコラムでも宣言。ところが、勝浦騎手は今年の年明けから勝ち星に恵まれず、トライアル弥生賞を迎えた段階でもまだ未勝利。初勝利は皐月賞前日の福島の条件戦だった。それでもオーナーサイドは勝浦騎手とともに、という思いを貫いている。 ちなみに平成30年間のダービーでは勝ち馬だけでなく、1番人気馬も、ただ1頭を除いては前走と同じ騎手で臨んでいる。乗り替わりで1番人気に支持されながら敗れた1頭は、平成最初の年、1989年のロングシンホニー。1番人気といっても6.0倍という超混戦だったが、5着に敗れている。 1989年といえば勝ったウィナーズサークルは、周知のようにダービー史上ただ1頭の芦毛、ただ1頭の茨城県産馬だった。やはり時代の変わり目には予期せぬことが起こるようだ。 それが「テン乗りによるダービー制覇」ではないかと前売りオッズは示しているし、無敗のダービー馬の誕生は多くの競馬ファンが待ち望んでいる。ただ「テン乗り」というのなら、リオンリオンとランフォザローゼスの2頭も同じ。しかも両馬とも「青葉賞から初」となり、前者はさらに「GI初騎乗」、後者は「時代をまたぐ連覇」というおまけまでつく。そんなことを頭の片隅に置きつつ令和最初のダービーを見たいと思う。●ひがしだ・かずみ/今年還暦。伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター 
2019.05.26 07:00
週刊ポスト
専門家の予想は当たっているのか
日本競馬を牽引し続ける種牡馬・サンデーサイレンスの功績
 ヴィクトリアマイルといえば4年前を思い出す。1着が5番人気ストレイトガール、2着12番人気ケイアイエレガント、3着18番人気のミナレットで、三連単はGI史上最高、総合ランキングでも5位の2070万円! 100円が2000万円になるという夢馬券だった。競馬歴40年のライター・東田和美氏が、ヴィクトリアマイルの結果から分かる、平成の競馬を語るうえで種牡馬・サンデーサイレンスが果たした功績についてお届けする。 * * * ヴィクトリアマイルは平成18(2006)年に始まったばかりのGIで、まだ13回しか行なわれていないため、結果からその傾向を論じるには早過ぎるかもしれないが、3勝のみという1番人気馬の勝率は、エリザベス女王杯(平成30年間で6勝)に次いで低いし、ここ5年の単勝配当はすべて1000円を超えている。馬連が3桁(100円台)だったのも、三連単が4桁(1万円以下)だったのも、ともに1回だけ。やはり熟女間の力関係は複雑なのだろう。 栄えある第1回をサンデーサイレンス(以下SS)産駒のダンスインザムードが勝ったのを皮切りに、13頭の勝ち馬のうち11頭がSSの血を引いている。ダービーの出走馬すべてがSSの孫だったことがあるので、それほど驚くことではないかもしれないが、桜花賞・オークスの勝ち馬に1頭もいないフジキセキ産駒が4勝しているのが目を惹く。それも第2回のコイウタ、第3回のエイジアンウインズの後、中6年空けてストレイトガールが連覇を果たしている。 SSはケンタッキーダービーとプリークネスSに加え、ブリーダーズCクラシックをも勝った1989(平成元)年の米年度代表馬。2年に史上最高の16億5000万円で社台ファームが種牡馬として購入、大きな話題となった。その後の活躍は周知の通り。通算勝利数、年間勝利数、GI勝利数など、日本競馬における種牡馬記録のほとんどを更新、保持し続けている。その産駒も種牡馬として日本競馬を牽引し続けている。 フジキセキは平成4年に生まれたSSの初年度産駒。2歳(当時は3歳)8月のデビュー戦、10月のOP特別と連勝後、12月の朝日杯を勝ってSS産駒初のGI馬となった。翌年3月の弥生賞も勝ってクラシックの本命といわれ、三冠の期待さえあったが、皐月賞を前に屈腱炎を発症していることが判明、そのまま種牡馬入りが決定した。 私がその事実を知ったのは、ちょうど日高のある牧場を訪れていたとき。引退という電話を受けたばかりの牧場主に知らされたのだが、彼は「よし、ダービー、いけるぞ!」と叫んだ。それだけ、フジキセキは他の生産者にとって大きな存在だった。 若い種牡馬はサンデーサイレンスの代用として人気を集めた。初年度産駒が4歳になった平成12(2000)年には種牡馬リーディングの第6位にランクされるが、カネヒキリやキンシャサノキセキなどダートや短距離の活躍馬が多かったからか、種牡馬としてはやや地味な印象だった。それでも15年連続してベスト10入り。長い間生産界に貢献したといえる。 さて、ヴィクトリアマイルの勝ち馬13頭のうちエイジアンウインズ以外の12頭は、いずれも前走で敗れている。ウオッカとブエナビスタはドバイだったので、健闘したともいえるが、ダンスインザムードは桜花賞を勝った後14戦未勝利だったし、牝馬三冠のアパパネも4歳初戦のマイラーズCで4着。ヴィルシーナは25年にこのレースを勝った後の6戦、掲示板にすら載ることができなかったのに26年に連覇達成。やはり27年、28年と連覇を果たしたストレイトガールの前走はそれぞれ高松宮杯13着、阪神牝馬S9着だった。近走不振ではあったが、底力を信じ、大目標を見据えてきた結果だろう。 ズバリ、キーワードは「復活」だ。今年の有力馬も華々しい勝利からは少し遠ざかっている。 29年の2歳牝馬チャンピオンのラッキーライラックは、チューリップ賞以後の5戦勝ち星がないが、うち3回の勝ち馬はアーモンドアイ。ジェンティルドンナの2着4回というヴィルシーナに似ており、人気の中心となりそうだ。 東京マイルのGⅠを勝っているアエロリットは、ここ2戦海外のレースで敗れているが昨秋は牡馬相手のGⅡ毎日王冠を制している。 平成27年の桜花賞馬レッツゴードンキは、その後1200mから2400mまで、北は北海道から南は香港まで、芝・ダートを問わず重賞ばかり26戦を走って勝ったのは2年前の京都牝馬Sだけ。だが、掲示板には15回も載っている堅実さが光る。 3頭とも「復活」というキーワードがふさわしいほど低迷しているとはいえない。 やはりソウルスターリングだ。 デビューからGⅠJFを含む4連勝、桜花賞では3着に沈んだものの、オークスでは圧倒的な強さを見せた。3歳秋は毎日王冠から天皇賞(秋)、ジャパンカップと牡馬混合路線を歩みすべて着外。4歳時に牝馬戦線に戻ったものの、いずれも人気を裏切ってきた。前走・昨秋の府中牝馬Sでは、ディアドラやリスグラシューから1.2秒も離され、今回出走するフロンテアクイーンやクロコスミアの姿もはるか遠くになってしまう10着。とうとう今回は「競馬ブック」誌の“有力馬”にすら取り上げられなくなってしまった。 府中牝馬S後、左膝部分に腫れが出て、はっきりした骨折線こそみとめられなかったものの、中間手根骨に骨膜らしいものが認められ、山元トレセンで休養していた。12月半ばより騎乗調教を再開、当初はハロン18~20秒、1月に17秒~20秒、2月に16~18秒、3月には13~15秒と徐々にペースを上げてきた。4月3日に美浦帰厩、このレースで復帰することを明らかにした。過去10回騎乗しているルメールは騎乗停止、2回騎乗している北村宏は負傷離脱中(あと1回は短期来日中のC・デムーロ)のなか、藤沢和雄調教師は今年リーディング3位につけ、過去何度も「復活」を果たしている武豊に騎乗依頼した。 1歳時に牧場でひとめぼれして出資すると決め、デビュー戦の札幌から東京、阪神、また札幌と13戦すべて競馬場で応援に出かけ、2度のG1をプレゼントしてくれた・・・・ここ2年間の不振はすべてこの日のための伏線だったのかといまは納得している。引退まであと10か月余。「復活」にはちょうどいいタイミングだ。●ひがしだ・かずみ/今年還暦。伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター※週刊ポスト2019年5月17・24日号
2019.05.12 07:00
週刊ポスト

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