平安時代から、多くの徳があるとして、仏教の修行のひとつとされている写経。東京・大田区の日蓮宗大本山 池上本門寺で月に1回行われる写経の会は、実に40年の歴史があり、毎回70~80人が愛用の書道具を持参して集まる。開催当時から通う熟練の参加者も多い一方で、寺ガール、写経ガールという言葉が浸透している昨今、若い女性も増えてきた。
写経を始めて半年という28才の女性は「最初は書道教室に通っていたのですが、物足りなくなって、言霊を感じる写経に興味を持った」そう。また、写経歴1年の41才の女性も書道が発端で、「写経は自宅でもできますが、朝のお寺の雰囲気が好き。心が洗われます」という。
写経前には30分の法話がある。「法話は写経のイントロダクション。写経前に、己の本心に立ち返るために、仏教がなんたるかを今一度思い出していただくと、心が調い、写経に取り組みやすくなりますよね」と言うのは法話をくださる布教部・執事の野坂法行(ほうぎょう)さん。今回は、過去を思い返すことの大切さを説いた経典を抜粋し、生命の長い歴史に思いを馳せ、自分たちの命の尊さを感じることの重要性を語ってくれた。
そのあと、手に塗る清めのお香「塗香」で両手を清め、いよいよ写経を始める。日蓮宗は妙法蓮華経を経典とし、初心者はなかでも最も重要で、かつ、五言絶句で比較的意味が文字から捉えやすい如来寿量品第16という部分の偈文を写経する。
「写経には、奉納して先祖の魂を供養したり、願いごとの成就を祈念したりという目的もありますが、なによりひたすら書くことに集中し、没頭することにより、心が浄化され、安らかな境地を得られるんです」(野坂さん)
なるほど、1行書いては筆をおき、手を合わせ、また筆をとる、という作業は自然と気持ちを穏やかにする。
「仏教では、ひと文字ひと文字が仏さまの心であり教えと考えられています。意味がわからずとも、文字そのものと向き合っていると、何かインパクトを感じる。それがそのときに抱えている問題解決のキーワードだったりするんですよ」(野坂さん)
写経のあと、本堂での納経法要に参加できるのも本門寺写経の魅力。お経が持つ不思議なパワーを受け止めながら、品性改良を目指したい。
<池上本門寺法話と写経の会>
日時:毎月最終日曜日 9時~12時30分
場所:東京都大田区池上1-2-1 池上本門寺朗峰会館4F 朗峰東の間
持ち物:書写用具一式
参加費用:法華経自我偈1枚2300円(初心者)
池上本門寺公式HP http://honmonji.jp/
※女性セブン2014年1月9・16日号