かつて日本のごちそうといえば、寿司に刺身、天ぷらなど、魚料理が中心にあった。マグロやヒラメ、ウニ、イクラなどの生ものだけでなく、お祝いには鯛の尾頭付き――といった海の幸が、特別な日の食卓に華を添えてきた。ところが、食生活の変化によって、家族で食べるごちそうは、焼き肉やすき焼きなどの肉料理にシフト。ごちそうばかりでなく、日常の食卓に魚が登場する機会も減っている。
厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、2000年以降、日本人の肉類の摂取量はほぼ横ばいで、1日当たり80g前後。ところが魚介類の摂取量は減少し続けていて、2006年には初めて肉類を下回り、2010年には肉類82.5gに対し、魚介類72.5gと、摂取量の差が拡大。年齢階層別に見ると、すべての世代で日本人の魚介摂取量が減少し、肉類が増える傾向にある。なかでも7~14歳、15~19歳でその傾向が高く、1~6歳の乳幼児でも魚介類より肉類を多く食べるようになった。
魚介類には、良質のタンパク質とともに、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といったさまざまな機能性成分が含まれている。水産庁は「水産物は、良質のタンパク質を多く含んでいる一方、総じてカロリーが低いという特徴があり、日本人の健康的な食生活を支える重要な食料」として、とくに若い世代や子育て世代に向け、水産物摂取の重要性を強調している。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2010年度版)」は、大人の場合「DHAとEPAを合計1日1g以上摂取することが望ましい」としている。また、子供の場合は、DHAとEPAを含むn-3系不飽和脂肪酸(オメガ3脂肪酸ともいう)が不足すると皮膚炎などの欠乏症が見られることから、目標量ではなく1日の“目安量”が定められている。しかし実際には、1日1g以上のn-3系不飽和脂肪酸を摂取するのは難しい。DHAやEPAを摂取するには日々、かなり大量の魚介類を摂取しなければならないからだ。
■英でDHAをめぐる調査を実施
そこで最近、DHAの摂取が不足している人、とくに子供について、DHAを含むサプリメントの有効性を調査する実験も行なわれている。英国オックスフォード大学で行なわれた観察研究では、「長鎖オメガ3脂肪酸、とくにDHAの血中濃度と読解力・記憶力は関連する」ことが明らかになった。