だが、話はまだそこまで煮詰まっていない。だから、具体的に語ろうにも語れない。いまはそんな局面なのだ。
私自身は集団的自衛権の見直しに賛成だし、憲法も改正すべきだと思う。だが「やるべき」という話と「やれる」という話は別だ。政治にとって重要なのは、理想もさることながら「やれるかどうか」の現実判断である。
第一次安倍政権と今回の政権の違いは、安倍が現実重視のリアリストになってきたところだ。演説で慎重だったのは、やれる見通しが立っていないことの裏返しだろう。
このままいくと、はたして安保防衛の大議論になるかどうか。渡辺は「自民党と組むこともあり得る」という立場だ。予算案成立後の国会に、与野党組み換えの可能性も含めて緊張感が漂うのは必至の情勢である。
(文中敬称略)
文■長谷川幸洋:東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。政府の規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)。
※週刊ポスト2014年2月14日号