元になった厚労省の発表資料を見ると、「『増加』が19道府県、『減少』が28都府県」と並列に書いており、“アベノミクスで給料増”をアピールしようという意図は感じられない。
同じ日の朝日や東京は「28都府県で減少」を見出しに掲げており〈賃金が減った数は16だった10年から、23、25、28と3年続けて増えている。雇用は改善しつつあるものの、中小企業の賃金はまだ上がっていなかったとみられる〉(朝日)と、こちらはやや客観的に書いている。
この日経のような見出しの付け方について、日本報道検証機構の楊井人文氏はこう批判する。
「日経は昨年8~9月にも消費増税に関する世論調査などで『消費増税 7割超が容認』『景気「増税後も改善」4割』などミスリードが疑われる記事を掲載した。例えば“7割”は『予定通り消費税を引き上げるべきか?』の問いに『引き上げるべきだが時期や引き上げ幅は柔軟に考えるべきだ』と回答した55%を含んだ数字だった。本文をきちんと読めば書いてあるが、見出しとリードだけではわからない記事が多い。
言論機関としてどんな社論を唱えても構わないが、それを世論に反映させるために巧妙な見出しを付けて誘導することは問題ではないか」
アベノミクスを礼賛すればするほど、大新聞への信頼は“暴落”するだけだ。
※SAPIO2014年3月号