消費税一覧

【消費税】に関するニュースを集めたページです。

発言に注目が集まる黒田東彦・日銀総裁(時事通信フォト)
“庶民感覚”から乖離する黒田東彦・日銀総裁の人物像 生涯賃金は13億円近くと推計
「家計が値上げを受け入れている」。黒田東彦・日銀総裁の講演(6月6日)での発言は物価高騰に苦しむ国民の怒りを呼び起こし、SNS上では「#値上げ受け入れてません」がトレンド入り、黒田氏は国会に呼ばれ、「誤解を招いた表現で申し訳ない」と謝罪して発言撤回に追い込まれた。「庶民感覚」から乖離した黒田総裁とはどんな人物だろうか。 黒田氏はかつて三井三池鉱山があった「炭鉱の町」福岡県大牟田市出身。少年時代は海上保安官だった父の転勤で各地をめぐり、東京教育大学附属駒場中学・高校から東大法学部を経て大蔵省(現・財務省)に入省した。 大蔵官僚時代の黒田氏をよく知る元財務省担当記者は「エリート官僚らしくない人物だった」と話す。特に消費税が創設された時(1989年)が印象に残っているという。「その年の参院選で自民党は大敗して過半数割れ、『消費税廃止』を掲げた社会党が躍進した。主税局のエリート官僚たちは消費税が廃止されるんじゃないかと右往左往していた。彼も主税局畑で当時は大蔵大臣秘書官だったが、一貫して“先のことはわからないけれど動じる必要はない”という態度だった。同僚や先輩官僚たちも、大秀才なのに度胸があるというのが共通した評価だった」 省内では「将来の次官候補の1人」と見られていたが、日本の金融機関破綻が相次いだ金融危機のさなか(1999年)、省内ナンバーツーの財務官(次官級ポスト)に就任して通貨政策を担った。「財務官時代はあまり目立たなかったが、その頃から黒田さんは省内では少数派の金融緩和論者だった。次期日銀総裁候補の1人に名前が挙がっている伊藤隆敏・コロンビア大学教授と金融緩和についての共同論文を出したこともある」(同前) 財務省を59歳で退官(2003年)した黒田氏は、財務官僚の“天下り指定席”でもある国際機関「アジア開発銀行」(本部・マニラ)の総裁を8年間務めた後、2013年に安倍晋三・元首相に日銀総裁に起用されて一躍脚光を浴びる。 実は、当時、財務省ではOBを含めて誰も黒田氏が総裁に選ばれるとは思っていなかったという。「日銀総裁は財務官僚にとって最高の天上がりポスト。事務次官経験者、それも大物次官から10年に1人選ばれてきた。次官経験者ではない黒田さんはせいぜい副総裁候補と見られていたが、日銀総裁にアベノミクスを牽引する大胆な金融緩和ができる人物を探していた安倍総理は、財務省の反対を押し切って黒田さんを抜擢した」(財務省OB) 日銀総裁に就任するや黒田氏は「デフレ脱却」を掲げる安倍首相の期待に応えた。日銀は政府と「物価上昇2%」という契約(アコード)を結び、金融政策を大転換して“黒田バズーカ”と呼ばれる超金融緩和策をぶっ放して世界を驚かせたのだ。当初こそ株価は上がり、円安で輸出企業は空前の利益をあげた。 来年4月、黒田氏は2期目の任期を終えて退任する。だが、就任から9年、2%目標は一度も達成できていない。金融ジャーナリストの森岡英樹氏が指摘する。「物価上昇2%というのは、ただ物価を上げればいいということではない。日本は長い間デフレが続いてきたから、金融緩和でお金を流して景気を良くし、企業が儲かって賃金が上がるという好循環で日本経済を2%成長させるという目標です。しかし、失敗でした。 企業は先行きが不安だから利益を内部留保として貯め込んで賃上げを後回しにした。金融緩和はお札をどんどん刷るようなもので通貨の価値が下がって円安になり、モノの値段は上がる。インフレと円安にするなら賃金の上昇が一番重要なのに、それができなかったばかりか円安まで招いてしまった。世の中、教科書通りにやってもうまくいかないのに、黒田さんは教科書通りにやろうとした結果、賃金が下がって物価が上がる悪いインフレ、悪い円安を招いた」 黒田氏の生涯賃金を試算すると、財務官僚の頃は官僚の待遇が最も恵まれていた時代で、次官級の退職金は早期退職割増しを含めて9000万円近かった。退職金含めて官僚時代の収入は推定5億円、アジア開発銀行の総裁給料は年約47.8万ドル、当時のレートで概算して8年間でざっと4億円。来年の任期まで10年間の日銀総裁の給料(年約3422万円)と退職金(約4400万円)が約4億円、それらを合わせた生涯賃金は13億円近くに達すると推計される。 エコノミストの間には、黒田氏が国民生活を無視するような値上げ容認論を続けてきたのは、「退任までになんとか物価上昇2%を一度は実現させたいという日銀総裁としての面子のため」との見方まである。だとすると、黒田氏は高額給料をもらい続けるうちに、「物価の番人」として国民生活に目を向ける気持ちを失い、“国民より面子”と我欲に溺れたのではないか。※週刊ポスト2022年7月1日号
2022.06.21 11:00
週刊ポスト
朝日新聞社も対応に追われた(時事通信フォト)
朝日編集委員が安倍氏インタビューに介入 朝日にまで及んだ「安倍応援団」の存在
 新聞・メディア業界に大きな衝撃を与えたのが朝日新聞の峯村健司・編集委員(外交、米国・中国担当)による、『週刊ダイヤモンド』の安倍晋三・元首相インタビュー記事への介入問題だ。 峯村氏は中国の安全保障政策に関する報道で「ボーン・上田記念国際記者賞」、昨年は無料通信アプリLINEが日本の利用者の個人情報に中国人技術者がアクセスできる状態にしていたことをスクープして新聞協会賞を受賞した朝日のエース記者。その峯村氏が今年3月、『週刊ダイヤモンド』が行なった安倍氏へのインタビューについて同誌の副編集長に電話を入れ、「安倍(元)総理がインタビューの中身を心配されている。私が全ての顧問を引き受けている」と発言し、「とりあえず、ゲラ(*校正用の記事の試し刷り)を見せてください」「ゴーサインは私が決める」などと要求した。 週刊ダイヤモンド編集部は要求を拒否し、朝日新聞に対して「編集権の侵害」と抗議。朝日は調査を経て、「政治家と一体化して他メディアの編集活動に介入したと受け取られ、記者の独立性や中立性に疑問を持たれる行動だった」とダイヤモンド側に謝罪。4月7日付朝刊社会面で峯村記者の行為は「報道倫理に反する」と編集委員を解任し、停職1か月の処分を下したことを大きく記事化した。 なぜ、朝日の編集委員が“安倍氏の代理人”を務めたのか。安倍氏は首相退陣後も新聞・テレビに積極的に登場し、ロシアのウクライナ侵攻後は、特に核共有についての議論提起に力を入れている。 首相を辞めてもなお、メディアにそれだけの発信力があるのは、連続在任7年8か月の長期政権下で大メディアを取り込んできたからだ。 安倍氏のメディア戦略は自ら新聞・テレビの最高幹部と会食を重ねて“懐柔”をはかる一方で、「中立・公平」を口実に報道内容に細かく注文をつけて“圧力”をかけるアメとムチの手法で行なわれた。 巧妙だったのはNHKの岩田明子氏、TBS時代の山口敬之氏、テレビコメンテーターでは政治評論家の田崎史郎氏など、主要なメディアに“安倍応援団”の記者をつくり、巧みに官邸寄りの情報を発信させたことだ。 2013年10月に放送されたNHKスペシャル『ドキュメント消費税増税 安倍政権 2か月の攻防』では、安倍氏がどんな覚悟と勇気をふるって消費税増税を決断したかが描かれ、岩田氏が総理執務室で安倍氏を独占インタビューする。まさにNHKが首相の宣伝番組の制作プロダクションになったかのようだった。 そうして大新聞・テレビが次第に権力に刃向かう牙を抜かれ、安倍政権の“宣伝機関”へと傾斜を強めていくなかで、批判的な姿勢を保ってきたのが朝日だった。「森友学園」の国有地売却問題や加計学園の獣医学部新設問題を追及し、財務省の公文書改竄をスクープして安倍氏を追い詰めた。 しかし、今回の報道介入問題で、朝日内部の“安倍応援団”の存在が浮かび上がった。元朝日新聞ソウル特派員の前川惠司氏が語る。「NHK政治部の岩田記者は安倍首相の懐刀なんて言われていたが、話すことは結局、安倍さんの宣伝と受け取られかねない面があった。峯村さんも“オレは安倍さんに安全保障についてレクしている、安倍さんに食い込んでいる”と社内にアピールしたかったのかもしれないが、記者が向き合う相手は読者以外いないはずだ」 朝日の峯村氏への処分もおかしいと続けた。「朝日の綱領のひとつに『不偏不党の地に立って言論の自由を貫き、民主国家の完成と世界平和の確立に寄与す』とあるが、朝日新聞の読者は中道から左派の人が多い。政府に批判的な読者が多く、安倍さんは保守の右派で再軍備を主張しているから朝日の立場とは違う。 朝日にはかつて社会党の土井たか子さんの事務所内に自分が主導する市民団体を設置するほどの記者もいたのに、処分などされなかった。なぜ峯村さんだけ処分するのか。安倍さんとつながっていたからなら、不偏不党の処分とは言えないのでは」 峯村氏の行為は「反安倍」という朝日の看板がすでに朽ちかけていることを示している。だからこそ、朝日は慌てて処分に踏み切ったのではないか。そんな内情を思わせる指摘だ。※週刊ポスト2022年4月29日号
2022.04.19 11:00
週刊ポスト
住宅ローン減税、2022年以降どうなる? これから家を買う人が知るべきポイント
住宅ローン減税、2022年以降どうなる? これから家を買う人が知るべきポイント
与党の「税制改正大綱」が決定し、住宅ローン減税の控除率引き下げが確実となった。控除率の引き下げは、以前より会計検査院の指摘を受けていたことによるもの。控除率1%では、住宅ローンの金利で0.4%台のものもあるので、利息分より多く還付しているいわゆる「逆ザヤ」となっていたからだ。今後の住宅ローン減税について詳しく解説していこう。【今週の住活トピック】政府与党が「令和4年度税制改正大綱」を決定現行の住宅ローン減税をおさらい2022年度からどうなるかの前に、まずは今適用されている住宅ローン減税の概要を確認しておこう。現行の住宅ローン減税の概要(筆者作成)※控除額全額を所得税から引き切れなかった場合は、住民税からも一部控除される現行の住宅ローン減税は、控除期間が原則10年間だ。消費税増税による緩和策として、10年間+3年間の特例が適用されていた。なお、ここでいう「中古住宅」は、売主が個人である場合だ。売主が個人の場合は消費税がかからないのだが、不動産会社などの法人が売主で中古住宅をリノベーションして販売している場合は、建物価格に消費税が課税されるので「消費税10%適用物件」に該当する。また、「認定住宅」の場合、上記の表のローン限度額に1000万円上乗せされることで、最大控除額が100万円多くなる。この「認定住宅」と認められるためには長期優良住宅や低炭素住宅など所定の条件をクリアする必要がある。2022年からの住宅ローン減税はどう変わる?では、与党の税制改正大綱では、住宅ローン減税はどう変わると言っているのだろうか?令和4年度税制改正大綱の住宅ローン減税の概要(筆者作成)※控除額全額を所得税から引き切れなかった場合は、住民税からも一部控除される会計検査院から指摘されていた「控除率」は一律0.7%になった。新築住宅については、その分「控除期間」を原則13年間にしている。また、控除の対象となる「ローン限度額」が、居住年が2022・2023年の場合よりも2024・2025年のほうが段階的に縮小されるようになっている。そして今回最も注目したいのは、住宅の省エネ性能によって、住宅ローン減税の恩恵が変わってくることだ。政府は「2050年カーボンニュートラル」を提唱し、脱炭素化に力を入れている。住宅ローン減税を活用して、住宅の省エネ性を引き上げようという考えだ。カギになるのが「認定住宅等」の中身だ。具体的には、次のような区分けになっている。最も優遇されるのが、「認定住宅」だ。これは現行の認定住宅と同様に、長期優良住宅や低炭素住宅に認定されたものになる。高い性能が求められるので、いずれもさまざまな減税等の優遇措置が受けられるものだ。次に優遇される「ZEH水準省エネ住宅」とは、ZEH並みの省エネ性能等を有する住宅が該当する。「ZEH(ゼッチ)」とは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」を略したもので、住宅の断熱性・省エネ性能を上げることに加え、太陽光発電などによってエネルギーを創り、年間の「一次エネルギー消費量の収支」がゼロ以下の住宅。ZEH水準省エネ住宅は、住宅の断熱性・省エネ性能がこのZEHの水準を満たすものを指し、太陽光発電設備の設置の有無は問われない。最後の「省エネ基準適合住宅」は、現行の建築物省エネ法の平成28年(2016年)基準が該当する。近年では新築住宅全体の8割、なかでも新築一戸建ての9割がこの基準を満たしていると言われている。ただし現時点では、新築住宅に適合義務は課されていないので、新築住宅がすべて適合住宅に該当するわけではない。2025年度までに、すべての住宅で省エネ基準適合を義務化する見通しとなっている。したがって、これらの省エネ性の条件を満たさない場合は、新築も中古も「それ以外」の控除額となる。加えて、税制改正大綱には、2024年以降に建築確認を受ける新築住宅などで、一定の省エネ基準を満たさない場合は、住宅ローン減税の適用対象外になるという記載がある。つまり、2024・2025年に居住開始する新築住宅でも、省エネ性によっては住宅ローン減税が受けられない可能性があるので、注意したい。なお、不動産会社などが買い取った中古住宅をリフォームして、売主として販売する場合で、一定レベルのリフォームをしたものは、新築住宅と同額の控除額となる。対象者の所得要件や中古住宅の築年数要件なども変わるこれまで大きな変更点を中心に紹介してきたが、このほかにもいくつか変更点がある。(1)対象者の所得要件の引き下げこれまでは、住宅ローン減税を受けるには、ローンを借りた人の合計所得が3000万円以下という要件があった。2022年1月1日以降に居住開始した場合は、これを2000万円に引き下げるとしている。(2)中古住宅の築年数要件を撤廃これまでは、中古住宅の場合に、「木造住宅は築20年以内、耐火構造(いわゆる鉄筋コンクリート造りのマンション)は築25年以内」といった要件があった。この築年数要件が撤廃される。代わりに「登記簿上の建築日付で昭和57年1月1日以降の住宅」(いわゆる新耐震基準)といった条件が加わることになる。(3)住宅の床面積の一部緩和住宅ローン減税が受けられる住宅には、「床面積が50平方メートル以上」という要件がある。が、現行の住宅ローン減税でも、13年間控除の対象の場合で合計所得が1000万円以下の年は、「床面積40平方メートル以上」でも適用されるようになっている。今回の税制改正大綱でも、2023年12月末までに建築確認を受けた新築住宅は、床面積40平方メートル以上で適用されることとしている。税制改正大綱は、今後の国会で関連税制法案が成立することが前提となる。また、住宅ローン減税にはここに記載した以外のさまざまな要件があるうえ、関連税制法案で詳しい条件が追加されることもあるので、詳細が確定したら十分に確認をしてほしい。これからは、省エネ性の低い住宅には減税などの恩恵を与えない、という政府の動きが見えるので、住宅を建てたり買ったりする際には、省エネ性能について関心を高めてほしい。●関連サイト政府与党の「令和4年度税制改正大綱」(山本 久美子)
2021.12.22 07:00
SUUMOジャーナル
マイカー元年と言われる1966年の東京モーターショー。いまや地方では車は一家に一台ではなく一人に一台(時事通信フォト)
中古車高騰に販売業者「儲かっちゃいないよ、なんでも高くなってるんだ」
 自家用乗用車の世帯当たり普及台数を都道府県別にみると、もっとも多い福井県が1.715台で、少ない東京都は0.422台となっている(2021年3月末現在、自動車検査登録情報協会調べ)。電車や地下鉄など公共交通網が普及している大都市圏をのぞき1台以上を所有する傾向にあり、日本国内の大半の地域では、自家用車は贅沢品ではなく生活必需品だ。だが今、世界的に続く半導体の供給不足により自動車の生産が滞っている影響から、中古車価格がこれまでにない上昇を続けていて、とても日用品と呼べる品揃えではなくなっている。俳人で著作家の日野百草氏が、地方の中古車販売業者から最近の中古車販売事情を聞いた。 * * *「中古車いま高いよ、新車と変わんない中古車だってある」 甲信地方の中古自動車店、天気良好でこの地方にしては陽の暖かい11月、白の映えるワンボックスを水洗いする店主に道すがら話を伺った。「乗り出し30万でミニバンないかって電話で問い合わせ来たけど、そんなの個人のオークションで探してどうぞって切っちゃったよ。わかってないよね」 この地方に限らず田舎で車のあるなしは死活問題、車なんていらないなんて都市部の駅チカ住民という日本に住む一部の話で、駅チカでも田舎は日常で電車なんか使えない。「この辺で電車なんて通学にしか使わないよ、車がなきゃなんにもできない」 店主は筆者がホテルで借りた自転車(ママチャリ)に目をやりながら首を振った。田舎は自転車も高齢者か子ども、レンタルサイクルの観光客くらいしか使わない。どこまでを田舎とするかにもよるが、そうした地域でいい年した大人、まして男が自転車なんて何か問題があるんじゃないかと思われる。とにかく車がないと日常生活は不自由だ。「だから新車が半年待ちじゃ中古にするってなる。RVとか軽の人気車はすぐ捌けるよ」すぐ買えるからって気に入らない車を何百万円も出して買わない コロナ禍のソーシャルディスタンス、密を避けるための公共交通機関離れもあって昨年から中古車市場は高騰しているが、そこに車載半導体不足による国内自動車メーカーの減産が追い打ちをかけている。世界的な半導体の奪い合い、日本はここでも買い負けが続いている。10月の新車販売は31%減、部品不足によるものだが、プラスチック素材やウレタン素材も不足しているので半導体だけの問題ではない。「まあ、10万キロ超えた15年落ちの不人気車なら乗り出し30万でもあるけど、みんなどんな車でもいいってわけにはいかないからね。用途も好みもあるから難しいんだよ」 確かに、不人気どころか無人気の型落ちセダンなら車種によっては安いだろうが、みなミニバンが欲しい、RVが欲しい、軽でなきゃだめと最低限のこだわりは当然ある。この地域では比較的駐車場も安く持ち家率も高いだろうが、都市部なら置き場所の問題やそれに伴うサイズもある。「新車も結局それだよ。たとえばトヨタなら来年1月に届くのもあれば半年待ちもある。でもすぐ買えるからって気に入らない車を何百万も出して買わないよね」 ディーラーや仕様によって前後するがハイブリッド車に限ればクラウンやヴェルファイア、プリウス(PHV除く)なら来年1月くらい、ヤリスクロスやハリアー、プラドなどは半年待ちと幅がある。反面、ライズはZグレード以外なら「年内納車も可能」とのことで、大トヨタですら半導体不足による生産の混乱が続いている。その他もおおむね3ヶ月待ちといったところか。「新車買える人ばかりじゃないし、さっきの電話もそういう人だよ」 都会では金が無かったら車なんか買う必要はないが、田舎は金が無くても車が必要になる。ここが都市部との大きな違いで、じゃあ1時間に数本の電車で、1日何便来るかわからないバスでとはいかない。例えば山梨県の75歳以上の返納率は11.9%と全国ワースト2位(警察庁『令和2年版運転免許統計』)、高齢者のほとんどは80歳になろうと90歳になろうと運転する。むしろ足腰が弱るからこそ運転せざるを得ない。高齢者でも現役で働いているとか年金で新車を買えるほど恵まれている人ならともかく、収入の少ない高齢者を中心に安い中古で済ませようという層は一定数いる。田舎は金が掛からないなんて幻想だ。「それにガソリンも(価格が)上がってるでしょ? だからハイブリッド車も人気が集中して、(業者の)オークションでも高いんだよ」 ガソリン価格も高騰しているが、この地域はとくに高くレギュラーにもかかわらず1リットル170円を超えている(11月上旬時点)。ハイブリッド車の中古は駆動用バッテリーが劣化するので高くつく場合がある。だからそれほどの人気にはならなかったのだが、原油高でハイブリッド人気がじわじわと上がっている。「海なし県は高いんだよ、輸送コストがかかるからね。だからハイブリッド車、それと軽だ」 車で移動するしかない地域では、車は生きるための道具でもある。しかしその燃料となるガソリンは何重にも課税されたままだ。ガソリンの半分は税金といわれるが、いわゆるガソリン税に石油石炭税、温暖化対策税、そして消費税とブサイクな積み木のように重なるまさしく「重税」となっている。これらの内訳もさらに複雑で、本稿で延々と注釈をつけるわけにもいかないのであくまでおおまかな説明としたが、とにかく半分が税金である。「田舎でガソリンが高くなるのは死活問題なんだよ、車しかないからさ。灯油もそう、余計な出費が増える」コロナ前まで13年落ちの中古車は海外へ売っていた ガソリン代もそうだが寒い土地だけに灯油の値上がりも不安だろう。灯油もまた石油石炭税と温暖化対策税、そして消費税が上乗せされている。政府はガソリン高騰に対応するため元売りに補助金を出す方針だが、国は虎の子の財源であるガソリン税は絶対に下げる気がない。そもそも先の石油諸税に消費税が掛かること自体が二重課税なのでおかしいにもかかわらず、1989年の消費税導入からこの二重課税を30年以上解消する気はない。当初は目的税だったはずが一般財源化されて道路以外に好き勝手使える状態でもある。はっきりいって無茶苦茶だ。「中古車もそうだよ。13年落ちだと税金高くなるからさ、根強い人気車とかマニア向けの旧車を除けばただ古いだけの車は売れなかったから、コロナ前までは海外に売っぱらったんだ。大事に長く乗ったら税金が高くなる、おかしな話だよね」 悪評まみれの自動車税の中でも2002年導入からとくに批判の大きいグリーン化税制である。新車登録から13年(ディーゼル車は11年)経つと重課対象となり、だいたい15%程度を上乗せした自動車税を払わされるという謎の税金である。自動車大国と言われながら日本はユーザーにとことん厳しい。「高値つけてるから儲かってるだろ、なんて言われるけどセリ値も上がってるからね。程度のいいのは30万くらい上がってるかな」 あくまで店主の感覚だが10~20%というところか、アメリカなどはもっと深刻で中古車は最大40%程度の上昇(2021年10月)を記録したとされている。「大げさに言っちゃったかもだけど、ホントのところいまは少し金足せば買える。でもこのまま部品供給が止まればもっと高値になるだろうね」 高値になっても中古自動車店が儲かるわけではない。仕入れ値も上がるわけで、このままではタマも足りなくなるだろう。先に書いたように乗れるならどんな車でもいいなんて人は少ないわけで、おのずと人気車種に集中する。「車は生活のためだからさ、この辺だとセダンは不人気だし、やっぱり買い物に便利で荷物がたくさん積めるワンボックスが人気だね、誰も好き好んで乗らないような不人気車種でも程度のいいワンボックスなら買い手がつく」 ワンボックスの不人気車種は実際に名前を挙げてくれたが、車に詳しい人でないとまず知らない。だが、そんな不人気車でもワンボックスは高騰している。RVはもっとだ。「こんな状況だと売ってくれる人も少ないからオークションで仕入れることになる。注文受けて実際の金額伝えると高いって言われちゃうね、もう中古だから安いって時代でもないのに」 ディーラーに売る新車がなければ下取りもないため流通は限られる。走行距離が実質0キロに近いがナンバー登録されている新車とほぼ同等の中古車である新古車に至っては、新車より高い車種もある。もちろんいまでも車種や走行距離にまったくこだわらなければ乗り出し30万円でも手に入る中古車はあるが、理屈上は買えると言っても、その理屈を主張する人だって自分が買う立場になったらそれを買うかといったら買わないだろう。「業者がボッてるとか言うけど、そんな時代じゃないんだよ。なんでも高くなってるんだ」 店主の言う通り、アフターコロナはもちろんだが衰退中の日本に追い打ちをかけるように商品の高騰が続いている。バイクなど30万円も出せば不人気なら大型車でも買えた時代もあったが、いまや中古バイクは車以上の高騰を続けている。もちろん半導体を始めとする部品不足による新車の生産遅れによるものだ。まして車以上に趣味性の強いこだわりの乗り物なので何でも乗りますというわけにもいかない。同様に、いま家を建てようと思うと住宅用の木材が不足しているのでこれまたとんでもなく高い。なにもかも高騰し始めている。「この辺で車は生活必需品だからね、ガソリンもそうだけど、これ以上の値上がりは恐ろしいよ」 車なんかいらない、電車を使えばいいやなんて地域は日本全体からすればわずかなもの、大半の地方は車がなければ不自由な生活を強いられるどころか仕事に差し障る。ガソリンに関して政府はようやく価格高騰時に補助金支給の方針を明示したが遅すぎる。日本全体でみれば物流の問題でもあり、ガソリンだけでなくあらゆる消費財の価格が上がっている。 なんであれ、30年間平均賃金の上がらないこの国で、あらゆるものの値段が高くなるというのは本当に恐ろしいことなのだ。筆者が思うに、店主がこぼすほどには自動車関連の騒動は現状、多少の滞りで済んでいる状態だと思うが、これからの日本は国際的な通貨下落によるチープジャパンとすべてにおいての買い負けによって長く苦しむことになるかもしれない。安く買える時代は終わり、賃金はそのままに物価が上がる、必要な物の価値がひたすら上がる国となる。新車不足と中古自動車の値上がりは限定的ではあるが、まさしくその端緒である。【プロフィール】日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。著書『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)、『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)他。
2021.11.21 16:00
NEWSポストセブン
与党「18歳以下に10万円相当給付」へ なぜ公明の主張は通るのか
与党「18歳以下に10万円相当給付」へ なぜ公明の主張は通るのか
 11月9日、自民党の茂木敏充・幹事長と公明党の石井啓一・幹事長が国会内で会談。今月19日にも閣議決定する新型コロナを受けての経済対策に盛り込む内容として、18歳以下を対象として「10万円相当の給付」を行なう方向で大筋合意した。10万円のうち5万円は現金で、残りは5万円相当の使途を限定したクーポンとなる見込みとなった。公明党が衆院選の公約に掲げた「未来応援給付」が実現に向かおうとしているが、この給付には批判の声も大きく、さらなる波紋を広げそうだ。 今回の「10万円相当の給付」に否定的な声が少なくないのは、年齢によって給付を受けられるかが決まるからだ。全国紙政治部記者が言う。「自民党の茂木幹事長は所得制限を設ける方向の提案をして、公明党側が持ち帰ることとなった。18歳以下全員が給付対象となれば、約2000万人に対して約2兆円相当の給付となる。どういったかたちで決着するのか、引き続き注目が集まります」 公明党主導で“バラマキ”と批判されるような政策が実現するのは初めてのことではない。1999年には、15歳以下の子供がいる世帯主などを対象に、2万円の「地域振興券」が配布された。政治ジャーナリストが説明する。「当時は自公連立政権の成立する直前だったが、自民党が前年の参院選で惨敗を喫し、過半数割れに追い込まれて橋本(龍太郎)内閣が総辞職した。続いて発足した小渕(恵三)内閣のもとで、政権運営をスムーズにするために公明党との連携が探られた。そうしたなかで、自民党が公明党の主張を受け入れて実現したのが、『地域振興券』だった」 景気刺激策としての効果には疑問符がついたが、結果として同年秋には自公の連立政権が成立している。「その後、2009年に麻生(太郎)内閣のもとで実施された国民一人あたり1万2000円の定額給付金(18歳以下の子供と65歳以上の高齢者には8000円を加算)についても、公明党から強い要望があったとされる。2019年10月に消費税が10%に引き上げられた際、飲食料品などについては8%に据え置く軽減税率が導入されましたが、これについても“庶民層”を強く意識する公明党が主張したものだった」(同前) 消費税増税の時の経緯については、公明党のHPでも、〈軽減税率は、政党として唯一訴え、粘り強く交渉してきた公明党の闘いによって実現しました〉と説明されている。 なぜ、自公政権下において、自民党よりも大幅に議席数の少ない公明党の主張が通り、巨額の予算が動かされるケースが珍しくないのか。前出の政治ジャーナリストが続ける。「ひとつは支持母体である創価学会に支えられた公明党の選挙における組織力です。今回の衆院選でも公明党は比例で約711万票を獲得している。全国に小選挙区は289あるので、単純計算でひとつの選挙区あたり2万~3万票になる。今回の衆院選では、野党が多くの選挙区で候補者を一本化した結果、1万票以内で決着した選挙区が31もあった。公明党の“票の力”がなければ、自民党はここまで大勝できなかっただろう」 そうした組織力が、掲げた公約を実現させる原動力となってきたとする見方だが、その構図がいつまで続くかはわからない。今回の衆院選で日本維新の会が41議席と躍進し、32議席を獲得した公明党は衆議院における「第3党」のポジションを失った。維新や国民民主党といった保守系の主張も掲げる野党は、自民党の主張に対して“是々非々”で対応するとしており、自民党が連携を模索できる相手は公明党だけではなくなってきている側面もある。 世論から強い批判もある「18歳以下への10万円相当給付」がどのようなかたちで決着するのかとともに、政権の枠組みが今後どのようなかたちとなるのかにも、関係者の注目が集まっている。
2021.11.09 19:00
NEWSポストセブン
中国などアジアでも人気が高い「クレヨンしんちゃん」。連載やアニメ開始当初、高卒で課長の父・ひろしは冴えない男の代表だったのが近年は理想のパパに(Imaginechina/時事通信フォト)
無職の息子と暮らす70代男性「大学まで出したのに正社員にもなれないなんて」
「子どもの貧困」が社会問題としてたびたび取り上げられるようになって久しいが、そんなことはあり得ないという人たちがいる。夏休みになると給食がないので昼ご飯を食べていないとか、必要な文具が買えない子どもがクラスに何人もいると聞かされても「今の日本で本当なのか」「信じられない」と言い、自分も安月給だったが中流だったのだから、いまもそんなに変わらないはずだと言う。その人たちの多くは、すでに仕事をリタイアした世代だ。俳人で著作家の日野百草氏が、安月給と自嘲してもマイホームをもてた世代の人たちに、どうやって現役時代を過ごしてきたのかを聞き、今と何が決定的に違っているのかを探った。 * * *「私なんか年収400万しか無かったけど子どもを2人育てたよ。それなのに、おかしな国になったもんだ」 70代で年金暮らし、悠々自適の丸本光二さん(仮名)に都下の駅ビルにある喫茶店でお話を伺った。目的は私事の別件だが、ついでに現役時代の話を聞いてみようと考えた。彼は中堅企業に勤め、高卒のサラリーマンで男の子2人を育てあげた。「贅沢はできなかったけど、東京の端っこにマイホームも買ったし女房は専業主婦で何の心配もいらなかったね。次男がグレたくらいかな。40代無職、まだ家にいるよ」 次男との仲は悪く家で顔を合わせても話はしないという。そちらも気になったが、それ以上に丸本さんのサラリーマン生活のほうが気になった。彼は、世代や子どもの男女構成は異なるが、立ち位置的にはまさに『クレヨンしんちゃん』の野原ひろし(中小企業の商社勤務、係長、マイホームとマイカー、妻は専業主婦で子あり)であった。社会事情の変化とネットを中心とした「ネタ化」により勝ち組と誇張されているので、あくまでイメージとしての話である。連載当初のひろしは勝ち組ではなく、しがないサラリーマンという設定だった。「サラリーマンなんてなりたくなかったよ、お小遣いも定年間際まで1万円で都心まで1時間以上だ」 いかにもな昭和のサラリーマンだった丸本さんは高度成長期の満員電車に揺られ、会社人生を全うした。「仕事なんかしたくなかったからね、総務の課長止まりだった。課長と言っても部下は少なくて名ばかりだったし、2000年くらいからは派遣で来るお姉ちゃんたちのまとめ役だった、まあ窓際だね」 自嘲もあるのだろうが窓際で定年というのもまさしく昭和、丸本さんの定年は2000年代で平成だが、丸本さん的にも感覚はずっと昭和の自覚があるという。「20代、30代の一番いい時代を昭和に過ごしたからね、会社は嫌だったけど楽しかったよ」鉛筆削る係でも正社員でいられた 丸本さんの20代、30代は主に1970年代と1980年代、日本の黄金期と言ってもよい。国民年金(基礎年金)の掛け金は1970年で月450円、1989年で7700円、およそ20年で20倍近くになったというのも凄いが、いずれも給料は右肩上がりで厚生年金の負担感は少なかったという。ましてその時代は介護分保険料も後期高齢者支援分保険料はなく、消費税すら存在しなかった(※消費税は1989年4月導入)。いま国民が支払っているものの大半は約30年前までは存在しなかったし、あっても著しく安かった。人口ピラミッドの為せる技である。「いい時代だったよ、物を作れば必ず売れたし、まあたいしたものじゃなくても売れた、仕事も忙しいけど楽だったね」 丸本さんはマスク越しに目を細める。「サラリーマンは気楽な稼業で窓際になっちゃえば鉛筆削る係でも正社員でいられたんだよ、ほんとにそんな先輩がいた。出世はないけど辞めろなんて言われなかったし」 いまや簡易労働のほとんどは非正規となり、非正規すら雇えない企業は各人が簡易なものは自分で、つまり複数の仕事をこなすようになった。筆者の知る大先輩でも窓際族はいて「紙を切る係」「文書を運ぶ係」というのを本当にしていた男性がいる。共に大手海運と大手商社だが、一般職女性の管理係という名のご機嫌取り、というのも存在した。いわばドラマ『ショムニ』の井上課長みたいな人がいたのだ。「社会がやさしかったからね、会社員だけじゃなくて商店街のおじさんだってスポーツ新聞読んで、すぐ店閉めて呑みに行ってさ、それでみんなやってけたのよ」 ゆるやかでおおらか、が許された『サザエさん』そのままの時代、夕方に家族全員集まってテレビで歌番組を観た。嗜好の多様化はもちろんだが、いまや多くは家族であってもみな集まれない、年齢問わず家族すらない独居も増えた。「会社も優しかったね、言い方があれだけどちょっと頭がヘンになったのとか、学歴はいいけど営業がまったくできない、会社に1円も金入れられないとか、そんなのでも同じ会社の家族だからって定年まで面倒みたからね、というか定年まで勤めないほうがおかしな時代だったよ」 いまでは考えられないが、1980年代くらいまでは転職する者など「前の会社で何かやらかしたのではないか」「使えないから辞めさせられたのではないか」「忠誠心がない」と頭から決めつけられるほどに終身雇用が徹底していた。一度入ったらずっと会社にいられる。その安心感が消費に向かわせた。その最たるものがマイカー、マイホームである。「1980年代ね、私も中古のチェリー(日産のファミリーカー)を売ってグロリア(日産の高級セダン)を月賦で買ったんだ。グロリアはプリンス(日産と合併)の時代から憧れだった。それも新車だ。納車式も派手でさ、花束もらって家族で記念撮影したよ。日本に生まれてほんとよかったと思ったね」 それより以前に丸本さんは都内にマイホームも買っている。なにもかもが順風満帆、男子二人の子宝にも恵まれた。同じ日本なのに凄い話、昭和のジャパニーズドリームこそまさに高度成長期、のちのバブルだったということか。「だから若い人が困ってるってピンと来ないんだよね、不景気とかわかるけど、同じ安月給で家庭も持てない、車も家も買えないなんて、どうしてだろうね」 団塊世代から上の方はこういう方が多い。40代、50代のみなさんの多くも経験しているかもしれない。過ごした時代が違うのだから仕方のない話だが、丸本さんもこうした無理解から息子と反目してしまった。「次男は大学まで出したのに正社員にもなれないまんま40過ぎて無職だ。これまでも転職だらけで口ばかり達者、家から出ようって根性もない。いまも子供部屋でプラモデルやらゲームやら、わけのわからないオモチャで遊んでる。私なんかその年のころは一家の大黒柱だったのにね、理解できない」 親と子であまりに時代と価値観が違い過ぎるのもこの世代の親子の特徴だ。「結婚して独立した長男も給料が安い、子育てに金が足りないって言うけど私はやってのけた。確かに安いけど、やってけないってこともない」何の取り柄もない人間が生きていける国がむしろ普通では 同じ年収400万円でも1980年代と2020年代では天引きされる税金や保険、さらには消費税など大幅に違う。可処分所得は比べ物にならないほど下がっている。1990年と比べて2020年の実質賃金は88%、平均給与が30年横ばいのまま税金や物価が上がっている。中央値ならさらに悪い結果となる。ちなみに1990年の平均給与が425万2000円、2020年が433万1000円である。自民党はもちろん政権を握ったことのある日本新党、民主党ともに政府は30年間これを放置してきた。何もできなかった、とも言える。「私は2000年代に定年を迎えたけど、最後の方はただ流れるままに仕事をしただけだ。パソコンも嫌いだからなるべく触らず若いのに任せて逃げ切った」 丸本さんは60歳で定年となり関連子会社で5年間働き年金暮らしとなった。さすがに定年間際には400万円ではなくもう少し貰っていたようだ。65歳を過ぎても働くつもりはあったが東日本大震災でもういいや、となったそうだ。「もともと働くのは好きじゃなかったし、ちょうどいいかと思い辞めたんだ。まあ年金と貯金で食べてはいけるしね」 それでもバブル崩壊と1995年からの住専問題があり、三洋証券、北海道拓殖銀行(拓銀)、山一証券、日本長期信用銀行(長銀)、日本債券信用銀行(日債銀)が立て続けに倒産した1997年から1998年にかけての金融ショックや2000年代初頭のITバブル崩壊などは経験したはずだが、丸本さんはサラリーマンとしてどうやって乗り切ったのか。「うちはあまり影響なかったね、ただ給料から引かれる分がだんだん大きくなったのはわかった。それなりの昇給はしても手取りがね、不景気なんだなあ、早く逃げ切りたいなあ、その一心だったよ、パソコンも苦手だし」 総務部でパソコンが必要な仕事は部下や派遣に「よきにはからえ」で任せていたという。丸本さんは社内の人気者だったということで、それも処世術なのだろう。オーナーと趣味を共にしたのもよかったのかもしれない。『釣りバカ日誌』のハマちゃんみたいだ。2代目も気を使ってくれたという。高卒ながら「会社ガチャ」もある意味成功したのかもしれない。「そういう能力もサラリーマンには必要だよ。若い人は勘違いしてるよね、サラリーマンの実力なんて、そんなものないんだよ、雇われなんだから」 中堅企業ながら退職金もそれなりに貰い、65歳から年金を受け取り、コロナ禍に難渋しながらも趣味を楽しんでいるという。まさしく団塊世代のサラリーマンならではの羨ましい人生だ。丸本さんには申し訳ない言い方で、この内容で書いてもいいかと聞いたら構わないと了承していただけたので書くが、彼が団塊ジュニア世代から下なら間違いなくこんな人生は送れていない。定年どころか正社員ですらあったかどうか。「でもね、私のような何の取り柄もない人間が生きていける国がむしろ普通では?」 丸本さんの言葉にどきりとした。みな競争とマウントに晒され続けて麻痺しているが、特殊な才能があろうとなかろうと、過度の労働意欲などなくとも生きていけるというのが普通の国、というのは事実かもしれない。日本はすっかり普通ではない、異常な国になったということか。普通の国の時代に現役だった団塊世代が羨ましい、と言ったら丸本さんは顔をしかめた。「そんなこともないのよ、さっきも言ったけど次男はプータロー(無職の古い言い方)だし、長男も金をよこせと言ってきた。孫のために出しますがね、世代関係なく大変よ」 長男は結婚して独立した正社員、しかし子どもの専門学校の学費が出せないので、かわいい孫のためにと出してくれないかという。「子どもの学費も出せないなんて、情けない息子ですよ」 いろいろ説明は試みたが、やはり丸本さんと息子さん二人の時代の違いは本質の部分で理解してもらえなかった。これは別の高齢者でもそうだった。その方は80歳でもっと上だが、彼もまた息子を情けないと言っていた。国立大学まで出たのに年収が低く、自分の家も買えないと。時代が違うんですよ、働き盛りのころは消費税だってなかったでしょうと言ったら「物品税があった」と反論されてしまった。まあ、仕方がないのだろう。いま、我々は彼らの年金を支えている。 年収の低いサラリーマンでも結婚してマイカーとマイホーム、子どもを複数生んで育てられた時代が確かにあった。いまや正社員でも年収400万程度のサラリーマンは実家で親掛かり、もしくは共働きでもなければそこまでの生活設計は描けない。それどころか40代正社員で年収300万円やそれ未満のサラリーマンが大勢いる。それもほとんど昇給がない。非正規どころか正社員すら可処分所得の大幅な減少で生活が苦しくなっている。40代の20%、30代の30%(ともに単身世帯・厚労省)は貯金ゼロである。遅かれ早かれ、彼らを筆頭に社会的に「詰む」膨大な日本人が溢れ出てくる。 丸本さんも含め他の高齢者の方々には申し訳ないが、彼らに我慢してもらわなければいけない時代が来たのではないか。ついに団塊世代から上の富裕層、中間層に対して何らかの形で犠牲になってもらわなければいけない国になりつつあるのではないか。どこの誰に投票するにしろ、左右関係なく選挙に行ってそれを実現するしかない。団塊世代から上は多数だが、バブルおよび団塊ジュニア・ポスト団塊ジュニアも負けずに多い。 世代間戦争とまでは言わないが、その下の20代も含めちゃんと選挙に行けば数の上では勝てる。みんながちゃんと選挙に行くことが条件だが――絶対的なこの国の老人優遇を憂うなら選挙で示す、民主主義国家である限り、この繰り返ししか術はないのだ。【プロフィール】日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。著書『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)、『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)他。近著『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)。
2021.10.30 16:00
NEWSポストセブン
野党の世代交代は進むのか?(時事通信フォト)
菅直人氏、枝野幸男氏、安住淳氏ら 国民の選択肢を奪ったダメ野党6議員
 総選挙は有権者にとってどの政党に国の舵取りを委ねるかの「政権選択選挙」のはずだ。かつて東日本大震災や福島原発事故対応に失敗した民主党政権を安倍晋三・前首相は「悪夢の民主党政権」と呼んだが、コロナ失政で国民生活を危機に追い込んだ現在の自民党も同じだ。 それなのに、国民に政権交代への期待は全く高まらない。有権者に政権を選択する機会を奪っているのは野党のふがいなさだ。政治ジャーナリスト・田中良紹氏が指摘する。「今の日本の政治に欠けているのは『政権を担える強い野党』の存在です。野党が弱いから、自民党政権が独善的な政治を行ないがちで、そこが今の政治の不健全さを助長していることを多くの国民は分かっている。かといって、旧民主党色が強い野党に政権を委ねる気にはなれない」野党の世代交代が必要 その象徴として、立憲民主党代表の枝野幸男氏と同党最高顧問の菅直人氏を挙げる。「民主党政権が東日本大震災と福島原発事故への対応で政府のふがいなさを見せつけた時の総理が菅直人で、官房長官は枝野だった。それが国民の意識に強く残っているから、この野党にコロナ危機対応を任せられない。その意味で、枝野や菅直人が今の自民党の独善政治を許していると言える。だからこそ、国民に政権の選択肢を与えるためにはこの2人が政界から退いて野党の世代交代が必要です」(同前) その立憲民主党はコロナ禍で政府批判さえしていれば票が取れるという姿勢だったが、菅首相が退陣表明して自民党総裁選が始まると、慌てて「消費税率5%」への引き下げや「所得税1年間ゼロ」を掲げた。 だが、立憲民主党には、民主党政権時代に国民を裏切って消費税率10%への増税方針を決めた張本人たちがいる。野田佳彦・元首相は現在、同党最高顧問、岡田克也・元副総理は常任顧問だ。増税を決めた政治家たちが最高幹部に居並ぶ政党が、総選挙前に「減税」を掲げても国民が信用できるはずがない。 そのことを彼らはまるで理解せず、今なお野党を率いているつもりになっている。元民主党代議士の評論家・木下厚氏が語る。「立憲民主は政権批判だけでは勝負できないと考え、あまたのバラマキ政策を打ち出しました。30兆円補正予算というが、財源はどうするのか。消費税を5%にするというが、消費税は1%あたり2兆円だから10兆円です。これらの財源をどうするのか。ともかく政権交代だけを考えた選挙を行なった、かつての民主党と同じで目先の得票だけを考え、政策の実質をないがしろにしている」 独善的な主張もこの党の政治家の体質だ。安住淳・立憲民主党国対委員長は、テレビの報道番組が自民党総裁選一色で野党が埋没してしまったことを、「個別の番組についてチェックさせてもらう」と批判して放送倫理・番組向上機構(BPO)への申し立ても検討する姿勢を示した。 だが、NHK記者出身の安住氏はかつて自民党若手議員が報道圧力発言をした時、「マスコミをコントロールできると思っていること自体が常識がない」と厳しく批判していたのだ。「安住氏とは元同僚ですが、彼は昔から弁は立つが官僚や嫌いな議員には威圧的。部会に官僚を呼んだときも『お前らは税金で食っているくせに』と高飛車な言い方をしていた。政治というのは、もっと度量をもって相手に対峙しなければならない。それができない政治家は、国民とも向き合えないのではないか」(前出・木下氏) そのくせ、安住氏は野田内閣の財務大臣として消費税増税方針を決めた責任者でもあるが、枝野氏が打ち出した消費税減税方針には「個人としては複雑な心境だ」と言うだけで方針転換を国民に説明しようとはしない。 独善的で国民に正しく向き合うことができない。そうした体質を抜本的に改めない限り、政権の受け皿にはなれない。不祥事議員を受け入れ 野党への期待が低いのは国民民主党代表の玉木雄一郎氏の責任も重い。立憲民主党との合流を拒否したのはまだしも、「場合によっては与党とも連携し政策を実現していく」と自民党との連携に意欲をにじませた。「今の政権のおかしなところを厳しく指摘し、対案を示しながら選挙を戦っていきたいので、連立については考えていない」 と表向き連立参加は否定しているものの、自民党の岸田文雄・新総裁が掲げた政策を「方向性は一致している」と評価している。「自民党が選挙で議席を減らすのを見込んで、そのときは手を組みたいんだろう」(二階派幹部)と見られている。 そのうえ、国民民主党は緊急事態宣言下のセクシーキャバクラ通いで立憲民主党を除籍処分になった高井崇司・代議士を会派に受け入れている。 不祥事議員に甘く、与党から補完勢力と見られている野党に存在意義はない。※週刊ポスト2021年10月15・22日号
2021.10.11 16:00
週刊ポスト
(時事通信フォト)
自民党総裁選の候補者討論 報ステとWBSの仕切りの差異は興味深かった
 自民党総裁選をめぐる報道が連日繰り返されている。候補者でない人について思わず気になってしまうことも少なくないのではないか。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘した。 * * * 本当に露出の多い4人です。自民党総裁選に立候補した河野太郎氏、岸田文雄氏、高市早苗氏、野田聖子氏が討論するシーンをあちこちの番組で見かけます。同じ日に複数のニュース番組をハシゴしている姿も。4人が横並びに座って語る同パターンが繰り返されるだけに、むしろ、各ニュース番組の「違い」の方が見えてくるのが興味深い。 9月17日、テレビ朝日系『報道ステーション』(午後9時54分)に生出演した4人。「次の感染拡大ではロックダウンをしますか」「休校にしますか」などの質問に「〇」か「×」か答を求められました。 しかし、そもそも考えてみれば日本の憲法下でロックダウンはありえない。質問が正確さを欠いていたこともあり、「法律改正もしていないのにロックダウンとはいかがなものか」と候補者から逆質問が飛ぶ。感染状況も地域などで条件が違うのに「休校しますか」とアバウト過ぎる質問に対して指摘され、MCの徳永有美アナは困惑気味に。「前提状況というところもあるんですけど…」などの説明に終始していました。 逆質問が来ることを想定していなかったのか。あるいは事前に作成された質問を、ただMCとして読み上げていたからか。ネット上でも「報ステの質問がグダグタ」「質問のレベルが低すぎる」と番組側に疑問を呈するコメントが目立ちました。 さて、その1時間後。今度はテレビ東京系『ワールドビジネスサテライト(WBS)』に同じく4人が生出演。「〇」か「×」の札で答えるコーナーで「将来的には消費税は上げなくてはいけない?」という質問が出されると、やはり4人から「どのぐらいの将来ですか?」と疑問の声が。 特にばっさり返す傾向が強い河野氏は、札すら上げないで「将来的というのがどれぐらいのタイムスパンを言われているのか分かりません」と回答拒否の姿勢を見せた。さぞやMCがタジタジになるかと思いきや……。 進行担当の佐々木明子キャスターは、即座に「就任中ということです。もし総理になられたら」と説明を返し、それに対して河野氏は「(総理を)何年やっているのか、日本の場合は分かりません」と答えました。ネットでは「消費税問題から逃げた」「はぐらかし」「国民と対話するつもりがない印象」と、政治家の姿勢の方を批判するコメントが多く見うけられました。 同じ「候補者4人が揃って討論する」というパターンでも、誰が質問しいかにやりとりするのかで、違う結果が出てくる面白さ。 そのWBSで水~金曜日のメインキャスターを担当する佐々木明子アナは、テレビ東京へ初の新卒採用女性アナとして入社し、さらに同局初の海外赴任アナとしてニューヨーク支局を担当、経済キャスターとしてリーマン・ショックを現場で体感してきた人です。 その後は朝の番組『ニュースモーニングサテライト』等でメインをつとめてきました(~2021年3月)。が時に株式市況を伝える口調が早口過ぎて、視聴者に「伝える」ことより株価変動に連動した自分の口調に酔って(?)いるのかと思えたり。「私、マーケットに詳しいのよ」的ノリにちょっとついていけない感じもありました。 しかし、4月からWBSメインキャスターになると話す速度もぐっと変化して、ゆったりと間合いをとりつつ緩急あり、響く声で明快に語る。その口調は落ち着きと奥行き、視野の広さを感じさせます。夜のニュース番組で視聴者に伝えるためにはどのような自己演出をすればいいのかを考えているのでしょう。 MCとして用意された原稿もただ読んでいるのでなく、政治や経済の全体状況を把握し各論についての理解を感じる。でなければ政治家から突然返された逆質問に、堂々と即応することはなかなかできない。おびえたり動揺を見せない存在感が何よりも佐々木さんの魅力です。 時には司会進行だけでなく、批評的なコメントをスッとさしはさむのも心地よい。例えば国と一体になって外国の株主に圧力をかけたとされる東芝の問題では、コメンテーターが「東芝は半導体や原発など日本の安全保障に関する企業だから国と話さざるをえない」とコメントすると、すかさず佐々木さんが「資本主義として見れば(国の介入は)問題がある」と返し丁々発止のやりとり。あるいは、システムトラブルを繰り返し金融庁が業務改善命令を出したみずほ銀行について「20年の間に(3銀行が合併した)企業文化を一つに揃えることができなかった問題がある」と指摘するなど、とにかく切れ味がいい。 さて10月、いよいよそのWBSと同じ時間帯の『報道ステーション』で変革が。メインキャスターに超大物の大越健介氏が登場とあって、注目が集まっています。大越氏といえばNHKワシントン支局長を経て『ニュースウオッチ9』『NHKスペシャル』等の看板番組キャスターを務めてきたあの人。 大越氏自身も「日々のニュースは大事な主食。例えるなら“米”。皆さんに良質な主食をお届けしたい」と所信表明。米どころ新潟県の出身ゆえの言い回しだそうですが、自分の仕事をすらっと「主食」と言い切ってしまう自信家ぶり。東大出超エリート街道を来ただけに、下手をすれば「上から目線」と批判される危険性も孕む。 仮に、ニュースが「主食」だとしても、ニュース番組同士でさらに主たる席を争うバトルがある。大越さんですらノンキに構えていられない午後10時のニュース番組ガチンコ勝負。秋の夜長、二つの番組を対比させながら見る醍醐味を存分に堪能したいと思います。
2021.09.25 16:00
NEWSポストセブン
平等が招く日本社会の不平等 消費税が格差拡大につながるカラクリ
平等が招く日本社会の不平等 消費税が格差拡大につながるカラクリ
 新型コロナウイルスの感染拡大で広がった経済格差は、ワクチンの接種が進んでも縮まることなく、日に日に深刻化している。弱い立場の人ほど打撃を受ける一方で、裕福な人ほど富を増している状況だ。なぜ、こうした格差が広がってしまうのか。「本来的に人は平等であるという概念は幻想」と指摘するのは、新刊『平等バカ-原則平等に縛られる日本社会の異常を問う-』(扶桑社新書)を上梓したばかりの、早稲田大学名誉教授・山梨大学名誉教授(生物学者)の池田清彦氏だ。多様性が叫ばれる昨今、「一人ひとりが公平であるべき」という社会の空気感は年々強まっている。だが池田氏は、そこに疑問を投げかける。池田氏は、「平等が正義」という考え方が、かえって不平等な事態を招いているという。「そもそも『平等』というのは、差別が無くみな等しい状態を指します。これだけを聞けば確かに『平等を守る』ことは最重要であるように思えますよね。しかし、平等が何より優先されることが常に正しいかと言えば、決してそうではありません。 例えば、東日本大震災の時には被災地に300枚の毛布や野菜が届けられましたが、その避難所にいる500人全員に渡せないのなら一切配らないという判断がなされ、結果全て捨ててしまうといったことが起こっていたそうです。『平等さ』の一点のみが優先された結果、『被災者を支援する』という目的から大きく外れた、非合理極まりない事態に陥っていたのです」(池田氏・以下同) 日常の中にも、「平等」の裏に潜む不平等が多く存在するという。「例えば消費税は、国税庁のホームページで『商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税』と説明されています。しかし、消費税に対して不公平感を抱いている人は多いですよね。1000万円の家を買うのがやっとという人にとっての10%と、1億円の家を買える人にとっての10%はまるで重みが違います。家や生活必需品の購入にかかる費用が同じなら、所得の低い人の方が税負担率は高くなるので、現在の消費税が『逆累進性』であるのは間違いありません」 さらに池田氏は、消費税の使われ方についても指摘する。「財務省によると、消費税は『年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てる』とされています。仮に福祉のために使われるのなら、巡りめぐって自分に戻ってくる可能性が高いので、不公平感という犠牲を払ったとしても無意味だとは言い切れません。しかし、実際のところ福祉に使っているのは2割以下であり、8割以上は一般財源に組み込まれてその使い道は煙に巻かれ、何に使われているのかは分かりません。国民の多くが反対する中、開催を強行した東京五輪・パラリンピックのために使われた可能性だってあるというわけです」事業者に有利な「簡易課税制度」 しかも消費税は、法人や個人事業主には、結果的に納税義務が免除されるケースがある。その影響で消費者が支払った消費税は、実はその半分以下しか国に納められていないのが現状だという。「事業者の消費税の場合、仕入れ時に払った消費税と、それを売った際に受け取った消費税の差額を納税するのが原則です。つまり、支払った消費税が30万円で、受け取った消費税が100万円なら差し引き70万円を納めれば良いということになります。 ただし、中小の事業者に対しては『簡易課税制度』というものがあります。課税売上高が5000万円以下の事業者には、仕入れにかかった消費税を計算せず、“みなし”で計上しても良いという制度です。この制度は、業種ごとに定められた一定の『みなし仕入率』が適用され、例えば小売業では課税売上高の80%が『みなし仕入れ率』とすることが認められています。そのため、実際の仕入率よりみなし仕入率の方が高くなることで、消費者が事業者に支払った消費税は一部納税されていないのが現状です。 例えば、小売業で3000万円の課税売上高がある場合、受け取った消費税は300万円となりますが、このうちの80%(240万円)は仕入れの時に消費税として支払ったとみなされるため、実際に国に納めるのは300万円のうちの20%、つまり60万円で良い。仮に実際に仕入れ時に支払った消費税が280万円だった場合は、300万円-280万円で20万円だけ払えば良く、事業者は有利な方を選択できるのです。このような制度がある限り、消費税として国に入る総額が本来徴収すべき額よりも少なくなってしまうのは当然でしょう」貧困から抜け出せない非正規労働者 長引くコロナ禍も重なり、いくら働いても収入が増えず、ずっと生活が苦しいままという人は少なくない。この原因について池田氏が指摘する。「生活困窮者の中でも、わずかながら収入があることで生活保護を受給出来ない人達は、社会的な手当ても皆無に等しく最も割を食っています。こうなってしまった大きな原因は、一部の人達だけが儲かるようなシステムが出来上がってしまったことにあり、その最たる例が非正規雇用の増加です。 非正規雇用社員は、企業とっては言わば緩衝材的な役割を果たす人材です。使いたい時だけ使い、不要になったら簡単に辞めさせることが出来る彼らの存在は、不要な人件費で経営を圧迫されるリスクを回避したい企業にとってメリットは大きい。しかし、働く側にとってはいつクビを切られるか分からないという不安を抱えながら働くこととなるうえ、正社員と同じように働いても非正規というだけで賃金を安く抑えられてしまう。 特にひどいのは人材派遣会社による中抜きです。大手人材派遣会社の中には、働いた賃金の半分以上を中抜きしているところもあると聞きます。ここまで来ると派遣会社が極端に儲かるだけで、労働の対価とは言えないのではないでしょうか。そもそも、正当な対価を支払うという資本主義の原則にも則っていません。このケースに限らず、企業が労働の対価をもっと手厚くするシステムを構築しない限り、非正規労働者は貧困から抜け出せません」 平等を訴えることは大切だが、恣意的に「平等」を利用して生まれる不平等もある。その事実から目を背けてはいけない。【プロフィール】池田清彦(いけだ・きよひこ)/生物学者。早稲田大学名誉教授。山梨大学名誉教授。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)などテレビ、新聞、雑誌などでも活躍中。『自粛バカ リスクゼロ症候群に罹った日本人への処方箋』(宝島社新書)、『平等バカ-原則平等に縛られる日本社会の異常を問う-』(扶桑社新書)など著書多数。
2021.09.03 07:00
マネーポストWEB
子どもだけでまちづくり!? 大人は口出し厳禁の「こどものまち」全国に広がる
子どもだけでまちづくり!? 大人は口出し厳禁の「こどものまち」全国に広がる
子どものつくる「まち」が、全国にあることを知っていますか。それは、数年に1度、子どもたちが遊びでつくる理想の街。仕事体験をするテーマパークとの違いは、実際の街を舞台にしているところ。一体どんな街なのでしょうか。千葉県佐倉市と千葉市それぞれの「こどものまち」を取材しました。全国で子どもがつくる「こどものまち」って?「こどものまち」のモデルは、ドイツのミュンヘンで20年以上の歴史を持つ「ミニミュンヘン」という取組みです。ミニミュンヘンは、子どもたちが好きな仕事を選んで働き、稼いだ給料を自由に使い、市議会や市長選も行う“子どもの街”です。ミニミュンヘンには本物の街のようにさまざまな機能があります。巨大な体育館とその周囲に街並みがつくられ、開催中、毎日2000人の子どもたちが参加している大きなイベントになっています。後述のNPOこどものまち理事長・金岡香菜子さんが高校生のころに訪れたミニミュンヘン(画像提供/NPO子どものまち)日本での「こどものまち」の導入に尽力した中村桃子さんは、ドイツを訪れた際に感動し、自身の生まれ育った佐倉市でぜひやりたいと2002年に仲間たちとおやこ劇場の流れをくむ(特)NPO佐倉こどもステーションのメンバーで千葉県佐倉市のこどものまち「ミニさくら」をはじめました。その後、日本各地にさまざまな「こどものまち」ができ、それぞれ独自に活動をしています。それらの交流のために2007年から行われている「全国こどものまちサミット」では、全国の団体が参加しています。「ミニさくら」の清掃局。道具が用意されていなくても子どもたちのアイデアで、ホウキやチリトリもカレンダーの裏で手づくり。愉快に音楽をかき鳴らしながら、会場をゴミ拾い(画像提供/NPO子どものまち)「ミニさくら」にはコロナ前の2019年開催時には、延べ760人の子どもたちが参加。職業は、市議会・警察署などの行政機関、手打ちうどん、サンドイッチなどの飲食店、新聞社・デパートなど40種以上。自分たちで手づくりしたお店で、好きな仕事をする子どもたちの顔は生き生き。働くと独自の通貨(時給600モール)の給料がもらえます。稼いだモールで食事やショッピングを楽しんだり、モールを貯めて起業したり、結婚もできます。自分でつくった街の市民として活動ができるのです。紙幣(モール)は100モール、1000モールなど全部で5種類。所得税・消費税もある。ブース収入に応じて売上税も徴収。画像提供/NPO子どものまち)コロナ禍の2021年3月には、オンラインで「こどものまち」を開催。Zoomのブレークアウトルームの機能を利用し、受付、お菓子屋さん、放送局などをオープン。子どもたちは、画面越しに交流をしました。2021年のオンライン開催の様子。子どもたちはすぐに打ち解けた(画像提供/NPO子どものまち)オンラインの放送局では、物語の朗読が行われた(画像提供/NPO子どものまち)一見、職業体験を通じて社会の仕組みを学習する試みと思われがちですが、それは「こどものまち」の一面にすぎません。ミニさくらを主催するNPO子どものまち理事長の金岡香菜子さんは、「こどものまち」で一番大事なことは「遊び」だといいます。「コロナ禍でも、『危ないからやめよう』ではなく、地域に何ができるか考えて活動しています」と金岡さん(画像提供/NPO子どものまち)「『こどものまち』は、子どもたちが主役になって、1つの街をつくる“遊び”です。ミニミュンヘンが掲げている理念は、『遊びは学びに通じる』。ミニさくらの『こどものまち』では、まず、思い切り楽しんで、遊んでもらうことが第一優先。結果的に学びにつながれば」「遊び」は、その行為から得られる楽しさ面白さを目的として自発的に行われるもの。大人の考える学習効果を優先して子どもが心から楽しめなければ、学ぶ楽しさも伝わらないという考えです。大人は子どもたちの自由な活動を見守ります。常に運営に関わっている大人サポーターは10人ほどですが、こどものまち開催時は60人が裏方になります。小学校3年生~18歳までの子どもスタッフも半年前の準備段階から会議に参加しています。金岡さんが会議の際に心がけているのは、「おとなの提案を受け入れすぎないこと」。ミニさくらでは、親や運営に携わる大人に対し、「見守ること、忍耐すること、指図しないこと、口出ししないこと、楽園天国!(頭文字をとって『ミニさくら』のあいうえお作文)」を伝えています。スタッフは、主役のこどもたちの自由な発想を引き出すためのサポートをします。商店街でのこどものまち、理解を得るまでには苦労もミニさくらの「こどものまち」の開催場所は、地元の中志津中央商店街。商店街は、遊歩道になっていて、商店の前面は2mほどのアーケードになっています。アーケード下の空き店舗の前にブースを設置し、「こどものまち」を行います。活動には、商店会をはじめ、自治会、佐倉商工会議所、佐倉市観光協会、下志津小学校、佐倉市教育委員会が協力しています。店の売り上げを上げようと、子どもたち自ら商店街に繰り出し、商品をアピール(画像提供/NPO子どものまち)金岡さん自身、小学校5年生のときに「こどものまち」に参加し、面白さの虜になった子どもでした。翌年に子どもスタッフとして運営に関わるようになり、高校在学中にNPO子どものまちの高校生理事に就任。卒業後は大人サポーターとして関わり、現在は理事長として運営を率いています。「私が子どもスタッフをしていた10年前は、近隣住民の方から時には厳しいご意見をいただくこともありました。地元のお祭りに積極的に参加したことや、ミニさくらの開催を重ねるうちにだんだん理解を深めてもらい、受け入れていただけたのかなと思います。今では、『商店街でも何かをしたい』と言ってくださり、子どもたちが投票した気に入ったお店を表彰するトロフィーをつくっていただきました」商店街の広場で行われる市長を決める選挙。候補者を真剣に見つめる子どもたち(画像提供/NPO子どものまち)子どもスタッフの集合写真。笑顔がはじける(画像提供/NPO子どものまち)「『ミニさくら』で警察を担当した子どもが『警察官はどんな仕事をしているのか知りたい』と、近くの駐在所に聞きに行ったこともありました。商店街だからこそ、いろんな人と交流でき、自分で課題に気付いて解決することも体験できます」(金岡さん)街の仕組みをつくり、働くことで社会を動かす体験は、自分の街へ関心を持つきっかけになります。「成人式の記念誌に『商店街のこどものまちが面白かった』と書いてあるのを見かけて、とてもうれしかったです」と笑顔を見せる金岡さん。活動を通じ、佐倉の街を好きになってくれたらと願っています。参加していた小学生がユーススタッフとして子どもをサポート千葉市のこどものまちは、官民複合ビル「Qiball(きぼーる)」が会場。親は、会場を見下ろせるカフェで子どもたちを見守る(画像提供/こどものまちCBT)千葉市こどものまちCBT実行委員会が運営する「千葉市こどものまちCBT」は、「誰もが主体的に、自由な発想で関われるまち」をテーマにしています。2009年に「こども環境学会・千葉大会」のワークショップとして開催。その後、実行委員会形式の大人ボランティアを中心に、千葉市役所こども企画課職員、千葉市子ども交流館の職員も参加し、協働で取り組んでいます。子どものころに参加した小学生が、大学生や社会人になって大人スタッフとして関わり続けているのも特徴です。こども部会長を務める水野敬一朗さんも、大学院生のころ、ユーススタッフ(学生などによるボランティア)として関わったのをきっかけに、地域活動のひとつとして10年以上関わっています。「地域活動がライフワーク」と語る水野さん。「NPO法人全国てらこやネットワーク」や「てらこやちば」などでも地域教育の活動を行っている(画像提供/こどものまちCBT)毎年9月に開催され、会期は3日間。延べ1000人ほどの子どもが訪れる。コロナ禍の今年は、例年開催している9月のイベントの是非をオンライン会議で話し合い、リアルとオンラインを組み合わせて行う予定(画像提供/こどものまちCBT)子どもと離れるのを不安に思う親には、子どもの自主性を尊重する会の主旨を説明し、見守りをお願いする(画像提供/こどものまちCBT)高学年の参加者が、低学年をリードする。会場の配置計画をボードに描いて動線を確認。会場の配置計画や設営など、活動の最初から子どもたちが参加している(画像提供/こどものまちCBT)コアスタッフという運営側に登録すると、年間を通した会議に参加することができます。小学校低学年は、飲食店など自分のなりたい職業で店長となり、ユーススタッフと大人の支援を受けながら、商品開発、仕入れ(材料吟味)、人員シフト(バイト管理)、宣伝などを考えていきます。小学校高学年と中高生は、まちの仕組みを考えていく「公共」という役割を担うことが多く、市役所や警察、銀行、お仕事紹介センター、清掃、選挙管理委員会などを担います。「こども市長選挙の際には、候補者からさまざまなマニフェストが出ます。『大人の社会の投票率には負けたくない!』『見た目の可愛さ・かっこよさで選んじゃうから、仮面をかぶり、政策だけで選んでもらう選挙にしよう』などの意見が印象に残っています。今年は、『選挙権・被選挙権は、小学校5年生以上が良いのでは?』ということが子どもたちから議題に上がりました」(水野さん)実際の投票箱を使って、自分の「まち」のトップにしたい人へ初めての一票(画像提供/こどものまちCBT)こども市長選挙の演説会には、毎年、千葉市長が応援に訪れる。熊谷俊人千葉市長(2011年当時)と候補者(画像提供/こどものまちCBT)開票結果発表の様子。候補者にとって緊張の瞬間(画像提供/こどものまちCBT)大人がつくった現実の街をただ模倣するのではなく、理想の街を目指して、自由な発想でつくり上げていくのが特徴です。過去には、税金や未就学児の支援として保育所を導入したこともあります。「学校や家庭とは違った経験ができる貴重な場所になれば。いわゆる第3の居場所『サードプレイス』的な役割でしょうか。成長するにつれて、子どもたちは、自分のお店から、街全体(みんな)を考えるようになっていきます。そして、子どもからユーススタッフになると、サポートする役割を学ぶことができるのです」(水野さん)「こどものまちCBT」で労働の対価として支払われる紙幣(カフェ)(画像提供/こどものまちCBT)子どもたちを見守る樫浦実行委員長。発足時から、「こどものまち」の活動に携わってきた(画像提供/こどものまちCBT)現在、ユーススタッフとして運営に関わっている大矢和樹さん(19歳・大学生)は、小学校4年生のときに「こどものまちCBT」に参加。5年生からコアスタッフに、現在はユーススタッフとして活動をしています。「中学校1年生のとき、友達と『こどものまち』に起業できる制度をつくりました。この時の体験で、自分たちで調べて主体的に関わることを学びました。ここで育ててもらったと思っています」(大矢さん)菅沼直樹さん(23歳・社会人)は、自身が発案した「税金制度」を導入しました。高校生のとき、「こどものまちCBT」でも実社会と同じようにお金(カフェ)がもらえるのに、所得税や法人税、消費税といった実社会での仕組みがなく「なぜ?」と考えました。ほかのスタッフや大人のスタッフの力を借り、3年をかけて形にしていきました。集めた税金は、起業したお店への資金サポートや公共グループで働く人の給与、閉店するお店を手伝ってくれた子どもたちへの「ありがとうギフト」に還元しました。「このときの経験から心がけているのは、子どもたちの状況に応じて見守ること。さまざまな事態を子どもたちの力で解決することが、彼らにとって大きな成長につながると感じているからです」(菅沼さん)こどものまちではトラブルも発生します。危険な行為については大人が毅然とした態度で注意しますが、それ以外のことは子ども同士で話し合い、解決や新たな気付きがあるようにサポートします。現在は子どもに携わる仕事についている小林美実香さん(23歳・保育士)は、参加に立派な理由がなくてもいいと語ります。「私は子どものころ、こどものまちCBTに参加して、世界の景色が変わりました。子どもたちには、難しいことを考えず、楽しんでもらえたら。大人スタッフになった今、まちづくりをやりやすくするだけじゃなくて、時には壁になってあげるのもいいと思っています」(小林さん)さまざまな職業・立場の人が集まる場所で、協力したり、ぶつかったりしながら、話し合い、理想の街をつくりあげていくのは、実際の街づくりと同じ。「こどものまち」の経験を通じて育まれた自己肯定感は、子どもの将来の夢や希望へとつながっています。●取材協力・ミニさくら(NPO子どものまち)・千葉市こどものまちCBT(内田優子)
2021.07.23 07:00
SUUMOジャーナル
慶大教授の井手英策氏(写真提供:共同通信社)
「パヨク」「売国奴」と罵られても僕は消費税の話をやめない 井手英策・慶大教授が特別寄稿
 税の使いみちを通して、「弱者を生まない社会をつくる」「社会を語ろう、社会を変えよう、身近を革命しよう」と無骨なまでに私たちに迫る学者がいる。慶應義塾大学経済学部教授の井手英策さんだ。彼の提言のベースにあるのは消費税だ。だからずっと批判にさらされてきた。それでも主張を曲げず発言を続ける彼の本意はどこにあるのだろう?  衆議院選挙を控え、最新刊『どうせ社会は変えられないなんてだれが言った? ベーシックサービスという革命』を執筆した動機と合わせて井手氏が寄稿した。 * * *複数政党が関心を寄せる「ベーシックサービス」が生まれた背景  30年近く昔のことだ。大学の授業料の「免除申請」がダメだった。電話で話せなかった僕は、帰省のタイミングを見はからって、母にその事実を告げた。強気でならしてきた母だったが、途方に暮れたような表情を見せた。目は涙でうるんでいた。 僕は母子家庭に生まれた。同居の叔母が暮らしを支えてくれていたが、“不幸にも”僕は優秀だった。わが子の進学を考えた母は、スナックを始め、借金まみれになって、僕を大学院にまで行かせてくれた。 免除の可否は年収で決まる。でも、無収入では、借金はムリだ。母は経費を差し引かず、収入をそのまま申告した。それが仇となり、授業料となって跳ね返ってきた。あまりにもむごい仕打ちだと思った。 最近、公明党や立憲民主党、国民民主党などが関心を寄せているアイデアに「ベーシックサービス」というものがある。提案者は僕だ。でも、心の奥底にべったり張りついていた以上の原体験なくしては、この発案はなかっただろう。 ベーシックサービスとは何だろう。生きていくと、誰もが必要とする/しうるサービスがある。誰だって病院に行くし、教育がなければ読み書きすらきびしい。僕は、医療、介護、教育、障がい者福祉をベーシックサービスと名づけ、所得制限なしで、これを全国民に給付することを提言した。 所得格差をほめる人はいない。だけど、何倍までの格差なら許されるかは、容易に説明できない。一方、貧しいだけで、生活に必要なサービスを使えないことの不条理さを、僕は痛感していた。だから、「格差是正」ではなく、サービスへの「アクセス保障」を提案したのだった。弱者を生まない社会の誕生 貧しい人だけに給付するやりかたもある。でも僕たちはみんなが貧しくなった。平成の間に一人当たりGDPは先進国4位から22位に転落した。勤労者世帯の収入のピークは1997年、世帯収入400万円(手取りで約330万円)未満の人たちが全体の5割弱を占めるようになった。まるで「平成の貧乏物語」だ。 僕は、次第に、貧しい人に限定せず、全国民にベーシックサービスを提供すべきだと考えるようになっていった。実際、「世界価値観調査」によると、「国民みなが安心して暮らせるよう国は責任を持つべき」という問いへの賛成は、約8割に達していた。 そもそもの話、だ。貧しい人を助けるのはよいことかもしれないが、助けられるほうの気持ちはどうなのだろう。お金ごときで人間の扱いを変える社会は、本当に「よい社会」なのか。僕はずっと悩んできた。 ベーシックサービスを全員に提供すれば、「救済される屈辱」から人間は自由になれる。医療、介護、教育がタダになれば、生活保護の4割以上を占める医療扶助は消え、介護扶助や教育扶助もいらなくなる。誰もが堂々と病院に、学校に、介護施設にいける。弱者を助けるのではない。弱者を生まない社会の誕生だ。 働けない人たちはもちろんいる。その人たちにはベーシックサービスとは別に、「品位ある命の保障(decent minimum)」を行う。飲食費や光熱費を保障する生活扶助は最後の砦だし、日本では未整備の住宅手当、利用者の少ない失業給付も創設・拡充すべきだろう。罵詈雑言を浴びても僕は税にこだわる さて。この辺で話をやめる要領のよさがあれば、僕は人気者になれたのかもしれない。でも僕は、「消費税」の話をする。だから左右の挟撃にあう。 増税を語ると右からはパヨクと罵られる。バラマキを求め、消費税を忌み嫌う左からは売国奴と断罪される。おまけに、税収を全額暮らしの安心のために使おうというものだから、健全財政主義者からも嫌われる。異端というと聞こえはいいが、「嫌われ者」といったほうが正しいのかもしれない。 正直、辛い。でも、罵詈雑言を浴びても僕は税にこだわる。なぜなら、いまを生きる人たちと、未来を生きる人たちとで喜びを分かち合いたいからだ。 ベーシックサービスを無償化すれば、17兆円、消費税なら6%程度の財源が必要となる。これをすべて借金でまかなうのなら、もはや予算に上限をはめる理由はない。天井なき予算は「欲望のるつぼ」と化し、財政を急膨張させることを、日本は戦時期に経験している。 過去と同様、歯止めのない支出は、将来のインフレを生む。税から逃げたツケは、将来の物価上昇という「見えない増税」となって子どもたちを襲う。そんなリスクがわずかでもあるのなら、僕は税の話から絶対に逃げるわけにいかない。 税は、本当に必要なものを話しあう動機を生む。ムダ使いをして将来の子どもたちの負担を増やさないためだ。どの税で、誰が負担するかも論点だ。公正さを欠けば、社会は分裂する。一方、借金で好きなだけバラまく政策なら議論はいらない。だが、人気取りのために、民主主義と子どもたちを犠牲にしてよいはずがない。この身を焦がすような苦しみを子どもたちに味わわせたくない 借金まみれになり、闇金の取り立てに追いかけ回された母と叔母、そして、その返済で命を失いかけた僕は地獄を見た。僕たちの何がいけなかったのか。僕たちは質素に、真面目に、ただ懸命に生きていただけだった。 こんな社会はおかしいーーそんな思いが僕を突き動かしてきた。 心のなかで当時の母と叔母に聞く。消費税はあがるけど、みんなの学校が、病院が、タダになるよ、と。ふたりは涙を流して喜んだだろう。特別扱いされたいのではない。みんなと同じように当たり前に生きたいだけだ。そのために借金に逃げず、みんなで痛みを分かち合おう、そう僕は言いたい。これが不当な要求だろうか。 僕は弱い立場の人たちとともにありたい。でも、同じ思いの人たちから、「消費税は悪税だ、まずは金持ちに」というお決まりの批判をぶつけられる。でも、待ってほしい。住宅手当さえ作れば、消費税の負担増以上のお金が戻ってくる。それでいいじゃないか。 法人税や所得税をあげる案には賛成だ。だけど、消費税1%は、法人税5%、富裕層向け所得税20%に相当する。消費税を外せば、とんでもない増税になる。金持ち憎しじゃなく、みんなで消費税をはらうかわりに、富裕層や大企業にも応分の負担を声高に求めていこう。痛みの分かち合い、連帯の社会をめざすのだ。 僕たちには時間がない。2019年5月、母と叔母は火事で命をなくした。同居の姉夫婦には子どもがいなかった。老後が不安で、姉は定年後も働きに出ていて、家にいなかったのだ。医療や介護を心配しなくてよい社会なら、母と叔母は命を失わずにすんだかもしれない。ただただ悔しい。 僕は、この身を焦がすような苦しみのどれひとつとして、子どもたちに味わわせたくない。だから、ポスト・コロナの社会を全力で構想し、どんなに罵られても発言を続ける。それが、学者への道をひらいてくれた母と叔母への恩返しであり、4人の子どもたちへの責任だと思っている。【プロフィール】井手英策(いで・えいさく)2017年に、民進党前原誠司氏が打ち出した経済社会政策「オールフォーオール(みんながみんなのために)」を支える政策ブレーンとして登場。一躍メディアから注目を集めたが、同年9月に党は3つに分裂。その体験は「学者生命を賭けた戦いに負けた」ものとして刻み込まれた。以後、自身を“敗北者”と呼ぶことも多い。しかし、「『運』で人生が左右される社会を変えたい」との思いからその後も発言をつづけ、2018年には教育、医療介護などの基本的サービスを提供する「ベーシックサービス」を発表。消費税増税の必要性に切り込み、賛否両論を巻き起こす。2020年に公開、ドキュメンタリー映画としては異例のヒットを遂げた『なぜ君は総理大臣になれないのか』(大島新監督)では、希望の党から出馬した小川淳也さん(現立憲民主党)の応援演説に立つシーンが「泣ける」と評判になり、ふたたび注目を集める存在となる。1972年、福岡県久留米市生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。著書に『幸福の増税論――財政はだれのために』(岩波書店)、『欲望の経済を終わらせる』(集英社インターナショナル)、『ふつうに生きるって何? 小学生の僕が考えたみんなの幸せ』(毎日新聞出版)ほか多数。2015年大佛次郎論壇賞、2016年度慶應義塾賞を受賞。
2021.07.02 19:00
NEWSポストセブン
住宅ローン控除、中古住宅では適用条件に注意!築古物件でも控除を受ける方法とは
住宅ローン控除、中古住宅では適用条件に注意!築古物件でも控除を受ける方法とは
不動産仲介会社の業界団体である不動産流通経営協会(FRK)が公表した「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」によると、中古住宅を購入した人の多くが住宅ローンを利用し、住宅ローン控除の適用も受けているが、そのことが物件を探す際に大きな影響を与えているという。どういうことだろうか?【今週の住活トピック】「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」結果を公表/不動産流通経営協会(FRK)中古住宅の売れ筋は築25年以内だが、築古住宅の購入者も3~4割いるこの調査は、2018年~2020年の3年間に中古住宅を購入した、全国の20歳以上を対象に実施したもの。本調査有効サンプル数は2393件で、購入した中古住宅の内訳は、中古一戸建てが1357件、中古マンションが1036件だった。まず、購入した中古住宅の築年数を見ていこう。中古一戸建て(画像の青線)では、築25年以内の住宅の購入が多く、なかでも「築6年~10年以内」と「築1年~5年以内」で高くなっている。また、中古マンション(画像の赤線)も築25年以内の住宅の購入が多く、「築11年~15年以内」「築16年~20年以内」「築21年~25年以内」で高くなっている。価格が手ごろで、かつ築年の比較的新しい住宅を買った人が多いことがうかがえる。実はFRKが注目しているのは、築古の住宅を購入した人も多いということだ。中古一戸建てでは「築21年以上」を購入した比率が43.0%、中古マンションでは「築26年以上」を購入した比率が31.0%いる。購入した中古住宅の築年数(出典/不動産流通経営協会「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」より抜粋転載)FRKが、一戸建てで築21年以上、マンションで築26年以上に注目しているのは、「住宅ローン控除」の適用条件と関係しているからだ。知っておきたい中古住宅の住宅ローン控除のポイント住宅ローン控除についての認知度は高く、今回の調査でも認知度は91.5%(「どのような制度か具体的に知っている」49.1%+「具体的ではないが制度があることは知っている」42.3%)に達した。住宅ローン控除についておさらいすると、年末の住宅ローンの残高の1%を10年間、所得税などから控除する制度のことだ。消費税率引き上げによる負担軽減として、8%または10%の消費税がかかる住宅では「年末の住宅ローン残高の上限を4000万円」に、10%の消費税がかかる住宅では「3年間延長(最大控除額80万円)」に、それぞれ期間限定で拡充されている。ただし、中古住宅の多くは売主が個人なので、個人間売買では消費税が課税されないために、こうした拡充策の対象外となる。つまり、個人の売主から購入する中古住宅の場合は、従来の「年末の住宅ローン残高の上限は2000万円」となるので、その1%×10年の200万円が最大控除額となる。ちなみに中古住宅でも、いわゆる中古再販住宅(不動産会社が買い取った中古住宅をリフォームして、売主として販売するもの)は、消費税率10%がかかるので拡充策の対象となる。住宅ローン控除の適用条件には、住宅の耐震性も含まれる築古住宅を購入した人も多いという今回の調査結果が注目されるのは、住宅ローン控除の適用条件に築年数が関係するからだ。住宅ローン控除の適用を受けるには、いくつかの条件がある。主な条件として、以下のようなものがある。○購入者の条件:合計所得金額が3000万円以下○住宅ローンの条件:返済期間10年以上○住宅の条件(1):床面積が50m2以上(※期間限定で40m2以上に緩和、その場合、合計所得金額は1000万円以下まで)○住宅の条件(2):耐震性を有していること最後の住宅の条件(2)の耐震性に関して、築年数が関係することになる。中古住宅の場合は、木造(いわゆる木造の一戸建て)で築20年以内、耐火構造(いわゆる鉄筋コンクリート造りのマンション)で築25年以内という条件がある。築年数がこれを超える場合は、建築士などの検査による以下3つのいずれかの証明書が必要になる。中古住宅の耐震性の要件(出典/国土交通省のすまい給付金サイト「住宅ローン減税制度利用の要件」より転載)築古が理由で、住宅ローン控除の利用をあきらめた人は多い次のフロー図は、中古住宅を購入した人の制度利用の状況と、その理由を示したものだ。住宅ローンおよび住宅ローン控除の利用状況【住宅ローン控除非利用者理由】(全体像)(出典/不動産流通経営協会「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」より転載)住宅ローンを利用した人のうち69.3%が住宅ローン控除を利用しているが、25.3%は利用していない。利用しなかった人の68.3%が、適用条件を満たす物件ではなかったことを理由に挙げた。なお、物件以外の理由としては、住宅ローン控除のメリットが少ないことなどが挙げられている。物件が適用条件を満たさない理由として、多くの購入者は「住宅の条件」を挙げた。そのなかでも、住宅の条件(1)の床面積を挙げた人(特に首都圏の中古マンション購入者で多い)よりも、条件(2)の築年数を挙げた人のほうが多いことが分かる。また、築年数が一戸建てで21年以上、マンションで26年以上だとしても、3つの証明書のいずれかを取得すれば適用対象になるが、69.8%と多くの人が「特に何もしていない」と回答し、築古が理由となって諦めていたことがうかがえる。築古物件の住宅ローン控除は、耐震基準適合証明書の取得によるものが最多しかし前述のとおり、築年数が適用条件を超える場合でも、耐震に関する証明書があれば住宅ローン控除を利用することは可能だ。住宅ローン控除を利用した人のうち、築年数要件を満たさない物件を購入した人について、次のフロー図で見てみよう。住宅ローンおよび住宅ローン控除の利用状況【築年数に代わる要件】(全体像)(出典/不動産流通経営協会「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」より転載)住宅ローン控除を利用した人のうち、23.4%が一戸建てで築21年以上、マンションで築26年以上の住宅を購入したが、3つの証明書のうち、耐震基準適合証明書の取得によって適用条件を満たした人が最も多いことが分かる。ただし、調査結果によると、耐震基準適合証明書を「自分で手配した」という人は50.5%と半数に過ぎない。43.2%が「もともと証明書が取れている物件だった」と回答している。また、既存住宅売買瑕疵(かし)保険とは、中古住宅の検査と保証がセットになった保険で、保険に加入するには耐震性を満たしていることが条件になる。この保険に加入することで適用条件を満たした人が次に多いのだが、「自分で手配した」のは26.3%とさらに少なくなり、「もともと保険に加入していた物件だった」という回答が73.7%に達した。つまり、住宅ローン控除については、築年数や床面積など、広告の物件情報や不動産会社から簡単に得られる情報で判断するものの、買い主が自ら耐震基準適合証明書の取得に動いたり、瑕疵保険に加入するように動いたりして適用を受けようとする事例は極めて少なかったといえるだろう。建築士等の検査による証明書を手配するには、時間や費用がかかるからかもしれない。しかし、マイホームとして買って長く住むのだから、少し費用や手間をかけてでも、耐震性で安心できるものを買うほうがよいだろう。また、そのためには専門知識が求められるので、こうした相談にきちんと応えてくれる不動産会社を選ぶ必要もある。もちろん、面倒のない築年の比較的新しいものを選ぶのか、安くて希望条件に合う築古のものを買って好みにリフォームすることを選ぶのかなどは、各自それぞれで判断すればよい。ただ、知らなかったと後悔することのないように、還元効果の大きい住宅ローン控除については、正しい知識を持って検討してほしい。(山本 久美子)
2021.06.16 07:00
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キャンドゥ他、コロナ禍に強い銘柄が続々 2021年5月の株主優待6選
キャンドゥ他、コロナ禍に強い銘柄が続々 2021年5月の株主優待6選
 5月は2年連続で緊急事態宣言が発令されているが、日経平均株価は方向感のない値動きが続いている。5月といえば有名な「セルインメイ」(株は5月に売れ)という相場格言があるが、2021年の値動きも慎重にウォッチする必要がありそうだ。 5月の株主優待は数こそ少ないものの、コロナ禍でも大きな悪影響を受けていない銘柄が目立つ。本記事では30万円程度の資金で投資できる銘柄の中から、5月に狙える注目の株主優待を紹介しよう(株価は5月上旬時点)。2021年5月の株主優待を得るには、5月27日(木)までに株を購入しておく必要がある。◆ブックオフグループホールディングス(9278) 中古本の買取と販売でおなじみのブックオフグループホールディングス(9278)は、自社グループ店舗で使える買い物券の優待を実施している。3年以上継続保有で額面もアップする。【優待内容】自社グループ店舗で使える優待券……100株以上200株未満:2000円相当(継続保有3年以上で2500円) 200株以上500株未満:3000円相当(同4000円) 500株以上:5000円相当(同7500円)(権利確定日:5月末、年1回)◆TAKARA & COMPANY(7921) コロナ禍でも業績は好調のTAKARA & COMPANY(7921)は、上場企業のディスクロージャーを手がける企業。株主優待はソフトドリンクや米、調味料や洗剤などの詰め合わせなどから好みの品を選択できるギフトだ。3年以上の継続保有で相当額もアップする。【優待内容】選べるギフト……100株以上2000株未満:1500円相当(3年以上継続保有で2000円相当に増額) 2000株以上:3000円相当(同3500円相当に増額)(権利確定日:5月末、年1回)◆タマホーム(1419) 注文住宅のタマホーム(1419)は、年2回、クオカードの優待を贈っている。コロナ禍でも増配を続けており、株主還元に積極的だ。【優待内容】クオカード……100株以上:500円分(保有期間3年以上で1000円分に増額)(権利確定日:5月末、11月末、年2回)◆キャンドゥ(2698) おなじみの100円ショップ「キャンドゥ」も、コロナ禍に強い銘柄のひとつ。株主優待は自社店舗で使える優待券だ。優待券は軽減税率の対象かどうかを問わず消費税込みで、1枚で本体価格100円の買い物に使える。【優待内容】自社店舗で使える100円プラス消費税分の優待券……100株以上300株未満:20枚 300株以上500株未満:40枚 500株以上1000株未満:60枚 1000株以上:100枚(権利確定日:5月末、年1回)◆ライク(2462) 人材サービスと保育事業をてがけるライク(2462)は、人気の高い株主優待専用の共通ギフトサービス「プレミアム優待倶楽部」のポイントが贈られる。今回から優待の基準が変更され、優待を得るための最小株数が300株に変更されたが、獲得できるポイントは全体的に増え優待利回りはアップしている。グルメや電化製品、旅行など交換できる商品は幅広いうえ、複数の採用企業のポイントを合算することも可能だ。【優待内容】プレミアム優待倶楽部の株主優待ポイント……300株以上400株未満:5000ポイント 400株以上500株未満:8000ポイント 500株以上700株未満:1万2000ポイント 700株以上1000株未満:1万5000ポイント 1000株以上2000株未満:2万5000ポイント 2000株以上3000株未満:6万ポイント 3000株以上:8万ポイント (権利確定日:5月末、年1回、500株以上の株主には1年以上継続保有で増額あり)◆大光(3160) 東海地方で業務用食品スーパー「アミカ」などを展開する大光(3160)は、送られてきたクオカードを店舗に持参すれば、倍額の商品券に引き換えられる。7万円程度の投資で年2回の優待を受けられる手掛けやすい銘柄だ。【優待内容】クオカードまたは自社店舗商品券(商品券を選択すると倍額)……100株以上500株未満:500円相当 500株以上1000株未満:1000円相当 1000株以上2000株未満:2000円相当 2000株以上:3000円相当(11月末、5月末、年2回)文■森田悦子(ファイナンシャルプランナー/ライター)
2021.05.13 19:00
マネーポストWEB
総額表示義務化でレジでのトラブルも増加 アパレル店員の嘆きも
総額表示義務化でレジでのトラブルも増加 アパレル店員の嘆きも
 4月1日からあらゆる店で消費税額を含めた「総額表示」が始まったが、政官主導の義務化に、疑問を持つ人も多い。そんな総額表示に対する、市井の人々の不満の声を紹介する。◆スーパーのレジ袋有料化に続く、おためごかし 総額表示を義務化する目的は、「価格をわかりやすくして消費を活発にするため」だって? どっかで聞いたことがあると思ったら、レジ袋を有料にするときに、小泉進次郎環境大臣が言った「結果的にエコ意識を高めるため」みたいな感じがする。 ったく、よく言うよねぇ。アレって、正確に言えば「プラスチック製買い物袋有料化」でしょ。そう言えばいいのに、必ず政府は「国民のため」って“おためごかし”を言う。税収を上げたいと、なぜ言わないの! 見てよ。とある高級スーパーは、レジ袋だけじゃない。手提げの紙袋まで有料化しちゃった。確かに、そのスーパーの紙袋はおしゃれなロゴがついて、紙はそれなりに厚くて丈夫だし、持ち手の部分もしっかりしてるけど、1袋30円だって。いままでタダで、重い物を買ったときなんかは2枚重ねてくれたりしていたのに、ひどくない? それで、「商品はレジを通してからお手持ちの買い物袋にお入れください」って店内アナウンスがしょっちゅう。そっちの都合でやっていることなのに、私ら、万引犯予備軍かい?(エコバッグを忘れて地団駄の68才)◆1078円とわかったら買わない客にイライラ 今月に入ってから、アパレル店の店長をしている娘(38才)の機嫌がものすごく悪いんだわ。レジでモメるらしいのよ。「おかしいじゃん。980円ってここに書いてあるのに、なんで1078円もするのよ」って。「いえ、商品の本体価格は980円ですけど、消費税が10%かかりますから」と説明すると、「わかったよ」とお金を投げてよこされるのはまだいい方。試着して香水のにおいまでつけて、「じゃ、いらない」と突っ返されると、もう売り物にならない。そのうちの何枚かは、“店長のお買い上げ”になるんだって。売り上げが上がらないのに、返品ばかり増えると本部からお叱りを受けるから、「今月はこのままいったら、給料、いくらもらえるかわかんない」って。 だからといって、おいそれと転職先が見つかるはずもないし、「総額表示の義務化、クソくらえだ!」と怒りながら、缶チューハイをあおる娘につきあって、ついつい私の酒量も上がっちゃう。(二世代バツイチの61才)取材・文/野原広子※女性セブン2021年5月6・13日号
2021.05.06 19:00
マネーポストWEB
溝口敦氏(左)と鈴木智彦氏
なぜヤクザは「負のサービス産業」と呼ばれるのか
 暴力団が絡んだ抗争事件や経済事件などはしょっちゅう報じられているが、そもそも彼らがどのように稼いで生活しているのかという根本を解説した記事はほとんどない。 長年暴力団取材を行ってきたノンフィクション作家の溝口敦氏は、フリーライター・鈴木智彦氏との共著『職業としてのヤクザ』(小学館新書)で、知られざるヤクザ業の本質に迫った。 * * * ヤクザ業の本質は「つまみ食い」です。簡単に儲かりそうなネタに出合うと、その仕事が合法か、非合法かに関係なく参加したがります。 もし彼が金持ちのヤクザであるなら、持ち金を遊ばせておくより、カネにカネを稼がせてやろうと、そのネタに資金を突っ込みます(出資や投資)。 たとえば金インゴットの密輸です。日本では金の買い取りに消費税10%が加算されます。海外では金の売買に消費税や付加価値税がかからない国がいくつかあります。そういう国で金インゴットを買い付け、帰国し、日本の税関を無申告で通って、国内の貴金属商にインゴットを売却すれば、買い値に10%の消費税を上乗せしてくれます。 これで消費税分10%の丸儲けになります。「これはいいや。香港(金の売買が非課税)ぐらいなら航空代もタカが知れている。4キロも買い付けて日本に持ち込めば確実に儲かる」 と、始められたのが金インゴット密輸でした(現在は新型コロナウイルスによる格安航空機の運航停止と、日本の通関業務の厳格化でほぼ不可能)。 つまりこうした金塊密輸に買い付け資金を出資する金持ちヤクザもいるし、計画して密輸団を動かすヤクザもいます。カネがまるでなく、単に密輸団に加わって金塊の運び屋になるヤクザもいるわけです。 ヤクザは一つの商売にしがみつきません。もう儲からないと見たら、パッとやめます。 唯一、長期継続的に手掛けているのが覚醒剤の密輸と国内販売です。国内には多数の依存症患者がいます。依存症の人は違法であっても、覚醒剤を摂取したくて仕方がない。そこに根強い需要が生まれます。違法であっても、誰かが依存症者に覚醒剤を届けるというサービスを買って出ます。それがヤクザなのです。 だからヤクザは負のサービス業に従事していると言われるわけです。違法の業だから逮捕・服役の危険がある。しかし、その分、競争率は低い。カタギの人は覚醒剤みたいな危ない物には触れません。使用も所持も売買も譲渡もすべてご免です。手掛けるのはヤクザぐらいですから、当然、その分、利幅は大きくなり、たっぷり儲けることになります。こういう事情で覚醒剤がヤクザの伝統的なシノギになりました。かつては社会的な需要があった 伝統的なシノギとしては他に恐喝、賭博があります。 恐喝は、俺は何々組の何某だ、カネを出さないとひどい目に遭わせるぞと、カネを脅し取る犯罪です。しかし、これは被害者の前に最初から姿を現し、かつ所属を明らかにしていますから、逮捕される度合いが高い。だから今は年々減少している犯罪です。逆に被害者とは電話の折衝とカネの受け渡しだけで、顔も所属も明らかにしないオレオレ詐欺など特殊詐欺のほうが儲けが大きくなるわけです。 賭博は違法で、警察に徹底的に家宅捜索を繰り返されたり、賭博参加の客に迷惑を掛けたりするので、今、常設の賭場などはなくなりました。わずかにバカラ賭博などをやらせる闇カジノと、フィリピンの本物カジノと中継でつながっているなどと称するネットカジノがひっそり行われている程度です。 負のサービス産業として、かつてヤクザに社会的な需要があったのは債権取り立て、地上げ、倒産整理などです。 債権取り立ては、繁華街のクラブなどで客の何某がツケを溜め込んで払わない。取り立てたら、取り立てた額の半分をやるから、代わりに取り立てて、と頼まれるシノギです。 現在、債権取り立ては弁護士に限り、ヤクザが手を出したらアウトなのですが、短時間で効果が出たのはむしろヤクザのほうだったはずです。ぷよぷよ体型の弁護士がやって来ても屁とも思わない踏み倒し常習の客がいます。彼らが怖がるのはむしろヤクザの暴力でしょう。 地上げは地価が年々上昇していたころの話です。人が住んでいる土地を建物ごと買い上げ、住民に出ていってもらって、更地にすることを狙います。これも不動産業者が交渉してラチが明かないとき、ヤクザが依頼されて出張り、住民を脅しあげ、それでもダメなら糞尿を撒き、火をつけ、身柄をさらうなどの暴力を振るいます。それで出ていってもらうのです。 倒産整理は倒産しそうな会社にいち早く乗り込み、少しの融資を餌に会社の資産を叩き売り、債権者会議を牛耳って自分だけ儲けるシノギですが、これは専門知識が必要なため倒産整理屋という業者が存在しました。彼らがヤクザの傘下に入ったから、倒産整理もヤクザのシノギになったわけです。ヤクザが生き残るためには しかし、この手のシノギはすべて暴対法で中止命令が出され、二度繰り返すと逮捕・禁錮もあり得る犯罪になりました。おまけに何でもないふつうの商売がヤクザに限っては、暴力団の資金源になるという理由で警察の干渉を招き、結果的に正業もダメというのが現在です。 では、ヤクザはどうしたらいいのでしょう。前記した通り、違法だけど、なんとかシノギになるのは覚醒剤ぐらいなものです。しかし、ヤクザ全員がシャブの密売をやれるほど、市場は大きくない。また特殊詐欺はもともと半グレが始めたシノギですが、ヤクザがそれを導入することがすでに始まっています。しかし、特殊詐欺の被害額も近年は減っている現実があります。 今置かれた状態を将来に延長すると、ヤクザは食うな、存在するな、といわれているのと同じです。ヤクザが生き残るためには、せめてヤクザがふつうの商売、仕事をやることを認めようという世論が盛り上がる必要があります。 ヤクザが法令を守るなら、飲み屋をやってもいいし、土建業や人材派遣業、建築物の解体業、あるいは警備業、ビルのメインテナンス業など、負のサービス業ではない、正のサービス業への従事を認めることしかないでしょう。 それとヤクザにとって望ましい制度改正は、組をやめた後、5年間はヤクザ並みに扱うとする各業界の暴排条項を撤廃させることです。広く知られたことですが、今は元ヤクザでも新しく銀行口座を開けません。そのためサラリーマンになっても給与の自動振り込みができない。民間アパートでも借りるのが難しく、車を買うんでもローンを組めず、スマホさえ買えない。 このまま進むとヤクザという職業は存在できず、ヤクザがそのときどきに行うシノギも遂行できない。ヤクザはヤクザから脱落し、半グレに加わり、半グレからも脱落して、単に常習的に犯罪を行う人たちへ零落するはずです。 ヤクザがなくなったおかげで犯罪のない平和な社会が実現するかといえば、単に悪事に手を染めるカタギが最近、増えたってことになるでしょう。半グレでなく、国民の大半が禁止法令を守らない。隙あらば、隣人の物さえ奪って恥じない国民ばかりとなったら、さぞかし日本は住みにくい国になるでしょう。倫理性のない後進国への後退です。※溝口敦/鈴木智彦著『職業としてのヤクザ』(小学館新書)より一部抜粋
2021.04.03 07:00
NEWSポストセブン

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