【人脈を自慢したい背景に「マウンティング」】
さて、では、みんななぜ「人脈」を人は自慢したいのでしょうか。そこで思いついたのが「マウンティング」です。瀧波ユカリさんが使い始め、犬山紙子さんとの共著を出したばかりの、元の意味を見立てた新語。女性の会話で「私の方が立場が上よ」というのを会話にさらっと挟んでくることです。
――一見弱含み、と思わせつつ、自分が上に行く。これがゴリラなどのマウンティングと一緒。人は、精神的な部分で、上に乗りたがる傾向があるわけです。
男性のマウンティンとして端的な例が人脈でしょう。昔「名刺じゃんけん」ってのありましたよね。誰の名刺を持っているかで勝負して「うわー、すごい人の持ってるなぁ!」なんてやっていました。でも、これはネタとしてやって楽しむもの。名刺じゃんけんでガチな人脈勝負をやったら、もうイヤミ全開! 楽しむというよりはまさにマウンティングになってしまう。
すごい知り合いがいることを自慢することで、相手よりオレは上だ、自分はすごいぜ、とアピールしたいわけですよ。スクリーンに映している自分といいますか、すごい人と共演している感覚になるわけですね。でもそんな関係を無駄に膨らませるのはダサい行為ですよね。
ただ一度会っただけだというのに、「彼のことはよく知ってる」とか言う人がある。関係の親密さは抑制して伝えることはキモに命じておきたい。僕の例ですか? たとえば、ナガオカケンメイ氏の本を18年前から11冊作っていますが、その話をする時は、相当控えめに伝えるように配慮しています。「ナガオカさんと仲がいいとアピールしたいのか」と受け取る人がいてもおかしくないので、聞かれた時は慎重に言葉を選びます。
他人への配慮が乏しいと、ついついマウンティングになりがちです。むしろ、自分から人の下に潜っていけば、心地よい関係になれるのにね。マウンティングの逆を行った方が良い人間関係は作れるはずです。<下に>ってことで、「ダウニング」と無理矢理(笑)命名しておきます。
石黒謙吾(いしぐろ・けんご)
著述家・編集者 1961年金沢市生まれ。
■映画化されたベストセラー『盲導犬クイールの一生』、さまざまな図表を駆使し森羅万象を構造オチの笑いとしてチャート化する“分類王”としての『図解でユカイ』はじめ、『2択思考』『7つの動詞で自分を動かす』『ダジャレヌーヴォー』『カジュアル心理学』『CQ判定常識力テスト』『ナベツネだもの』『ベルギービール大全』『短編集 犬がいたから』など幅広いジャンルで著書多数。
■プロデュース・編集した書籍も、ベストセラー『ジワジワ来る○○』(片岡K)、『ナガオカケンメイの考え』、『負け美女』(犬山紙子)、『飛行機の乗り方』(パラダイス山元)など200冊近く。
■草野球歴34年で年間40試合というバリバリの現役プレーヤー。高校野球とビールと犬と笑いとキャンディーズ、そして熱いモノすべてを愛する。