世界のマネー潮流が新興国から先進国に還流し始め、今最も力強い値動きを見せている米国株。リーマン・ショックで痛手を負ったはずの米国経済が、なぜ復活してきたのか。その強さの秘密を、海外投資のカリスマとして知られるグローバルリンクアドバイザーズ代表・戸松信博氏が解説する。
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一時は凋落著しいとみなされていた米国経済が、力強く復活を遂げ、ここにきて一段と輝きを増している。
その強さの源泉のひとつが「シェール革命」だ。地中などに眠るシェール(頁岩)層からガスやオイルを産出することで、安価なエネルギー調達が可能となり、米国企業の製造コストが下がって競争力が高まりつつある。これまでエネルギーの輸入国だった米国がこの先輸出国に転じれば、資源を軸にした世界的な主導権を握るのは必至の情勢だろう。
そして、世界中からマネーを集め、世界最大の時価総額を誇る株式市場がある。アップルやグーグルを筆頭とする米国企業はもちろん、他国とは比べものにならない流動性を求めて、中国やインド、ブラジルといった新興国のIT企業など、世界中の有力企業が集結している。
こうした強みを活かし、NYダウは昨年来、史上最高値を更新。すでに米国の各種景気指標は好転を見せ始め、これまで景気を下支えしてきた「QE3(量的金融緩和第3弾)」の縮小が始まったことからも、回復に向けた道筋は見えたと評価していいだろう。
ただ、足元の状況を見ると、まだ完全に復調したとはいえない状況も窺える。今年1月の失業率が6.6%まで下がったとはいえ、雇用者数自体はこの3年間ほぼ横ばい。求職者数という分母が減ったことが大きな要因だ。新築住宅着工件数も右肩上がりだが、一方で住宅ローン金利も上がっており、金利の負担に耐えかねる人が増えれば失速する恐れもある。
ましてや、世界中にマネーを供給し続けてきたQE3の縮小は、新興国市場にとって大きなマイナス材料となっている。