日本肥満学会が定めた判定基準では、BMI18.5以上25未満が「普通体重」、それ以上が「肥満」とされる。同じく動脈硬化学会は2007年まで高脂血症(現在は脂質異常症と呼ぶ)の診断基準を総コレステロール値220mg/dl以上としてきた(現在はLDLコレステロール値140mg/dl以上)。

 要は太っているほどリスクが高いとされてきたが、新開氏らの調査結果は逆で、数値が基準を下回る、やせた“健康な人”ほど老後のリスクが高まるというのだ。その理由について新開氏が解説する。

「健康のために粗食を心がける高齢者は少なくありません。たしかに玄米や魚にはビタミンやミネラルが豊富に含まれていますが、やり過ぎは問題。肥満や高コレステロールに注意が必要なのは比較的若い人で、体力低下や噛む力が衰えがちな高齢者にとって粗食は『低栄養状態』につながって老化を促進、寿命を縮める恐れがあるのです」

 新開氏によれば、高齢者が要介護状態になる理由は大きく2つある。1つは脳卒中や心筋梗塞の発作などにより身体機能が悪化する場合。もう1つは、長い時間をかけて徐々に体力や運動機能が衰え、やがて寝たきりになるパターンだ。新開氏が続ける。

「後者こそ典型的な老化現象で、そうした症状はやせた人に多い。体力や運動機能を維持するには体を動かさなくてはなりませんが、その材料は動物性たんぱく質を含めた栄養から供給される。行き過ぎた粗食は危険ということです」

※週刊ポスト2014年6月27日号

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