予備校が大学受験から中高受験ビジネスに手を広げる一方で、学習塾が“下から上”への戦略を強化していることも、業界全体の競争を混沌とさせている要因だ。
「早稲田アカデミーや臨海セミナーといった受験塾が自前で大学受験科をつくり出していることで、そこで学んだ生徒が馴染み深いところで大学受験に向けての勉強をする傾向も強まっています。早稲アカは医学部専門の予備校である野田クルゼも買収しましたしね。老舗の予備校にはますます人が集まりにくい状況といえます。
そういう意味では、四谷大塚を買収したり早稲アカに出資したりと全方位戦略を進める東進のネットワークは強い。地方資本の予備校や異業種も巻き込んでフランチャイズ契約を結び、有名講師の映像授業をパッケージ化して広げる戦略は今後も伸び続けていくでしょう」(安田氏)
個別指導塾の台頭や、中高に予備校講師を招聘しての“学内予備校”など、より細かい受験生のニーズも高まる中、果たして規模を追い求める学習塾・予備校の合従連衡の行方はどうなっていくのか。
「はじめから成績上位層をどれだけ確保できるかの勝負」(大手予備校関係者)との声も聞かれるが、受験生の成績を伸ばす“本分”を無視して実績欲しさの消耗戦を繰り返せば、塾・予備校離れに歯止めはかけられないだろう。