いかなる場合においても、ウクライナの南部と東部で戦闘行為を再開させてはならない。そして、当然のことながら、この悲惨な悲劇に対する責任は、それが起きた領土が属する国家が負う」と述べた。
プーチンは、「悲劇に対する責任は、それが起きた領土が属する国家が負う」とウクライナの責任を強調したが、これは、主権国家は領空で起きたことについて責任を負うべきであるという国際法の一般論を述べたに過ぎない。プーチンが「ウクライナ側が撃墜した」と主張していないことが重要だ。
さらに7月21日、プーチンは、ビデオメッセージを発表し、「6月28日にウクライナ東部で軍事行動が再発しなければ、この悲劇は、恐らく起きなかったであろう」と述べた。
プーチンのこの発言を筆者なりに解釈すると、〈ウクライナ政府が、同国東部の反政府武装勢力に対して空爆を行わず、対話により、連邦制を導入していれば、内戦は止んだはずだ。
それならば、武装勢力も地対空ミサイルをロシア軍もしくは武器の闇市場から入手する必要はなかった。自国の領空を実効支配することができていないウクライナ政府の責任を過小評価してはならない〉という意味だ。
プーチンは、欧米諸国とのインテリジェンス戦争で、ロシアが守勢であると認識している。それだから、まずロシアの国内世論を固めることに精力を傾注している。
※SAPIO2014年10月号