スポーツ

プロ野球選手から大学教員へ 元楽天内野手の「仕事観」とは

 プロ野球はレギュラーシーズンが終わり、球団によっては戦力外通告をされる選手も出てきた。プロ野球選手の「第二の人生」とはどのように得られるのか。ある元プロ野球選手に聞いた。(取材・文=フリーライター・神田憲行)

 * * *
 西谷尚徳さん(32歳)は元楽天イーグルスの選手だった。球団創設一年目の2004年秋のドラフトに内野手として4位で入団したが、ケガで悩まされ4年目に戦力外通告を受けた。トライアウトを経て翌年阪神タイガースの育成選手となるが、10年に解雇されそのまま引退する。通算6年のプロ野球生活だった。

 そして今西谷さんは立正大学法学部の特任講師として、教壇に立っている。教えているのは野球でもスポーツでもなく、「日本語表現」だ。

 待ち合わせ場所に現れた西谷さんはスマートなスーツ姿で、贅肉のない体格の良さ以外、かつてユニフォームをグラウンドにいたとは想像しづらい。鞄から自分で書いた日本語表現に関するテキストを2冊出して紹介してくれた。内容は文章の読み方・書き方の基本から始まり、引用文献の表記の方法、表現のテクニックなど細かいところにまで及んでいる。

「まず大学1年生対象のアカデミックライティングといって、論文やレポートの書き方を教えています。また2、3年生対象に公務員や教員採用試験を意識した小論文講座ももっています。週に16コマぐらい教えています」

 明治大学文学部文芸学科卒という学歴は野球選手では珍しいだろう。スポーツ推薦による入学だったが、「教員免許が取りたい」と文学部を志望したという。

「教育に興味があったのは、親と鷲宮高校時代の恩師・高橋和樹先生の影響が大きいです。野球部では主将を務めて、国語の教員免許も取ることができました」

 そのまま卒業後に教育界へと考えていたときに、楽天からのドラフト指名だった。西谷さんは大学時代に左腕を「真っ二つになるぐらい」の骨折と右肘の故障を経験していた。素質はあっても故障持ちということで他球団のスカウトが躊躇するなかでの指名だった。

「悩んで悩んで悩みました。右肘がどこまで回復しているのか自分でも半信半疑でしたから。それでも子どものころからの憧れですから、数年でポシャッてもいいやという気持ちで入りました」

 判断の背景には、西谷さん特有のプロ野球観があった。

「プロ野球選手も、いくつかある仕事の一つ、ぐらいの感覚なんです。入団すると新人でもステータスシンボルで高級外車を即金で買う人とかいるんですが、僕は車は道具なんで国産車を税金対策でローンで購入しました。プロ野球選手は個人事業主ですから、税金関係は勉強しましたよ。『お前、変わってる』とかよくいわれましたけれど(笑)」

 社会人・大卒新人は「即戦力」として期待される。だが、西谷さんは「即戦力とかとんでもない世界でした」と笑いながら手を振る。

「最初のキャンプで大島公一さんのキャッチボールを見ただけで衝撃を受けました。ボールをグラブで取る、その球を右手に移しかえる、そして投げる。一連の動作が流れるようで、今まで自分がしてきた野球と全く違うんです。普通の人なら見てもわからないかもしれませんが、やってきた人間なら職人と見習いぐらいの差があることがわかるんです」

 そのキャンプでまた右肘を痛めて遊離軟骨の除去手術を受けた。翌年1軍に昇格したが、3年目に今度は靱帯の損傷で移植出術。リハビリだけで1年間を棒に振った。いつまで野球選手でいられるかわからない。漠然とした不安を現実に捉え始めて、西谷さんが選んだのは通信教育による大学院入学だった。リハビリ中の合間に図書館に通って勉強し、翌年通信講座を受講し、2年間かけて教育学の修士を取った。

関連記事

トピックス

永野芽郁のCMについに“降板ドミノ”
《永野芽郁はゲッソリ》ついに始まった“CM降板ドミノ” ラジオ収録はスタッフが“厳戒態勢”も、懸念される「本人の憔悴」【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(Instagramより)
〈シ◯ブ中なわけねいだろwww〉レースクイーンにグラビア…レーサム元会長と覚醒剤で逮捕された美女共犯者・奥本美穂容疑者(32)の“輝かしい経歴”と“スピリチュアルなSNS”
NEWSポストセブン
スタッフの対応に批判が殺到する事態に(Xより)
《“シュシュ女”ネット上の誹謗中傷は名誉毀損に》K-POPフェスで韓流ファンの怒りをかった女性スタッフに同情の声…運営会社は「勤務態度に不適切な点があった」
NEWSポストセブン
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(時事通信社/読者提供)
《動機は教育虐待》「3階建ての立派な豪邸にアパート経営も…」戸田佳孝容疑者(43)の“裕福な家庭環境”【東大前駅・無差別切りつけ】
NEWSポストセブン
未成年の少女を誘拐したうえ、わいせつな行為に及んだとして、無職・高橋光夢容疑者(22)らが逮捕(知人提供/時事通信フォト)
《10代前半少女に不同意わいせつ》「薬漬けで吐血して…」「女装してパキッてた」“トー横のパンダ”高橋光夢容疑者(22)の“危ない素顔”
NEWSポストセブン
露出を増やしつつある沢尻エリカ(時事通信フォト)
《過激な作品において魅力的な存在》沢尻エリカ、“半裸写真”公開で見えた映像作品復帰への道筋
週刊ポスト
“激太り”していた水原一平被告(AFLO/backgrid)
《またしても出頭延期》水原一平被告、気になる“妻の居場所”  昨年8月には“まさかのツーショット”も…「子どもを持ち、小さな式を挙げたい」吐露していた思い
NEWSポストセブン
憔悴した様子の永野芽郁
《憔悴の近影》永野芽郁、頬がこけ、目元を腫らして…移動時には“厳戒態勢”「事務所車までダッシュ」【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(左・時事通信社)
【東大前駅・無差別殺人未遂】「この辺りはみんなエリート。ご近所の親は大学教授、子供は旧帝大…」“教育虐待”訴える戸田佳孝容疑者(43)が育った“インテリ住宅街”
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン