国際情報

パクリ遊園地勤務の記者「中国の権利意識はまだまだお粗末」

 中国のパクリ遊園地、山東省煙台市蓬莱にある「欧楽堡夢幻世界(英語名・ユーロパーク)」に“キャスト”として潜入したジャーナリスト・西谷格氏。試用期間を終えて本採用なら月給1500元(約2.7万円)という条件で働き始めた同氏は「演芸部」に配属され、1日目にパレード用の振り付けを教わった。ちなみに同遊園地の入場料は200元(約3600円)である。

 * * *
 2日目は午後から出演することができた。いよいよデビューだ。小人の着ぐるみを希望と訴えていたのだが、「もっと背が低くないとダメ」と却下されてしまい、小人の前で行進するピエロ役を演じることになった。
 
 ブルーの燕尾服のコスチュームを着用し、ドーラン、マスカラを塗り、口元に紅を引くと、自然と気分が高揚している自分がいた。
 
 パレードが始まると、白鳥のフロート(山車)に乗った白雪姫風の女性と王子様を先頭に、ダンスミュージックに合わせて振り付けを披露しながら園内を半周する。笑顔で観客たちに手を振ると、みな楽しそうに写真を撮っていてやりがいを感じる。

 パレード終点の広場に到着すると、スピーカーが音割れするほどの大音量で韓流ポップスやクラブミュージックが流れ出す。小人たちはノリノリで、観客を巻き込み最後は全員が輪になってぐるぐると回転。遊園地らしからぬ大団円のフィナーレだった。
 
 ダンスが終わると撮影タイムで、客たちはピエロや7人の小人たちと記念撮影。小人の着ぐるみは人気が高く、ひっきりなしに客が寄ってくる。そんな客の中には明らかなミッキーマウスのパロディーTシャツを着ている人もいた。
 
 3日目の休憩時間に園内のゲームセンターをのぞいてみたが、クレーンゲームの景品にはサンリオのけろけろけろっぴ、ゆるキャラのふなっしーとおぼしきぬいぐるみがわんさか。壁にはディズニーアニメ、『カーズ』のイラストが大きく描かれている。これについて同僚の女性に問題ないのか聞いてみた。
 
「問題ない。だってコピーなんてそこらじゅうにあるじゃない。訴えられる可能性はないわよ」
 
 やはり、中国は中国だった。来年は上海で本家本元のディズニーランドがオープンするのだが、それについては「知らない。興味ない」の一言。こんな田舎町からすれば、上海など外国も同然なのだろう。中国と一言でいっても、一括りにはできない。
 
 その後も7人の小人の着ぐるみを着るチャンスはなく、3日目の終わりに部長に「上海に戻る用ができた」と伝え退職した。試用期間ながら、3日分の給料として200元(約3600円)が支払われた。払ってくれたこと自体、なかなか良心的だが、3日働いて1回の入園料分だと考えると複雑な気持ちになる。
 
 パクリ遊園地での勤務を終えて分かったことは、中国は権利に対する意識は国全体としてはまだまだお粗末ということだ。「ミッキーマウスはダメだけど7人の小人はオーケー」という中途半端な判断基準は、経済大国でありながらも先進国にはなれないでいる今の中国を象徴しているようにも感じられた。(了)

※SAPIO2014年12月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

高橋一生と飯豊まりえ
《17歳差ゴールイン》高橋一生、飯豊まりえが結婚 「結婚願望ない」説を乗り越えた“特別な関係”
NEWSポストセブン
西城秀樹さんの長男・木本慎之介がデビュー
《西城秀樹さん七回忌》長男・木本慎之介が歌手デビューに向けて本格始動 朝倉未来の芸能事務所に所属、公式YouTubeもスタート
女性セブン
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
女性セブン
有村架純と川口春奈
有村架純、目黒蓮主演の次期月9のヒロインに内定 『silent』で目黒の恋人役を好演した川口春奈と「同世代のライバル」対決か
女性セブン
芝田山親方
芝田山親方の“左遷”で「スイーツ親方の店」も閉店 国技館の売店を見れば「その時の相撲協会の権力構造がわかる」の声
NEWSポストセブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
離婚のNHK林田理沙アナ(34) バッサリショートの“断髪”で見せた「再出発」への決意
NEWSポストセブン
フジ生田竜聖アナ(HPより)、元妻・秋元優里元アナ
《再婚のフジ生田竜聖アナ》前妻・秋元優里元アナとの「現在の関係」 竹林報道の同局社員とニアミスの緊迫
NEWSポストセブン
小泉氏は石破氏に決起を促した
《恐れられる“純ちゃん”の政局勘》小泉純一郎氏、山崎拓氏ら自民重鎮OBの会合に石破茂氏が呼ばれた本当の理由
週刊ポスト
撮影現場で木村拓哉が声を上げた
木村拓哉、ドラマ撮影現場での緊迫事態 行ったり来たりしてスマホで撮影する若者集団に「どうかやめてほしい」と厳しく注意
女性セブン
大谷翔平(左/時事通信フォト)が伊藤園の「お〜いお茶」とグローバル契約を締結したと発表(右/伊藤園の公式サイトより)
《大谷翔平がスポンサー契約》「お〜いお茶」の段ボールが水原一平容疑者の自宅前にあった理由「水原は“大谷ブランド”を日常的に利用していた」
NEWSポストセブン
氷川きよしの白系私服姿
【全文公開】氷川きよし、“独立金3億円”の再出発「60才になってズンドコは歌いたくない」事務所と考え方にズレ 直撃には「話さないように言われてるの」
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン