1200名を教えてきた時田先生。家に入った瞬間にわかることとは
偏差値35の高校生を1年2カ月で東大合格へと導いた実績を持つ、いま注目の受験コンサルタント、時田啓光氏。氏は自身の実績から“東大合格請負人”を名乗るが、大手予備校に所属する講師ではない。口コミや教え子の紹介などによる家庭教師や塾講師など、草の根的な指導を通じて、1200人以上の生徒を教えてきた。東大に合格する子の特徴とは何か? 引きこもりになる家庭の特徴とは何か?
受験を通じて親子を見つめ続ける時田氏の、熱く確かな言葉が響くインタビュー【後編】です。
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――“東大合格請負人”の先生ですが、様々な生徒を教えていらっしゃるのですね。
時田:はい。私の生徒は小学生から高齢層の方々まで、成績も学びたいことも様々です。仕事柄“東大合格請負人”と名乗らせていただいておりますが、もちろん皆が東大に行く必要はありません。私は人に教えたり、人から教わったりする相互のやり取りが大好きで、この仕事は天職だと思っています。勉強がしたい方なら学生に限らず、50代や60代の方も教えます。
――先ほど、偏差値35だった高校生が東大に合格するまでの道のりをお聞きしましたが(【前編】に掲載)、東大に合格する子と、しない子の“差”を挙げるとしたら、何でしょうか。
時田:もちろん色んな特徴や個人差があるのですが、東大に行けない子の特徴を一つ挙げるとしたら「挨拶ができない」こと。
挨拶ができないということは、他人に対して心を開けないということなんですね。もっと言えば人を信用できない。心を開かせるのも教育だと言われれば、それはそうなのですが、そのためには私の指導とは別のアプローチや長い時間が必要だと考えていますので、そういう方の指導はお断りさせていただくことがあります。受験勉強にはやはりコミュニケーション能力が必要になります。
――先生とコミュニケーションをとる能力が必要、ということでしょうか。
時田:一つにはそうです。私の指導方針は「教え合う」ですから、コミュニケーションがとれないと機能しないんです。こちらからの質問に回答する気がない生徒とは、授業が成り立ちません。もう一つ、受験勉強自体がコミュニケーションを学んでいるんです。出題者の意図をくみ取って回答する能力がないと、とりわけ難関校の試験での正解は得られません。特に国語の文章読解にはコミュニケーション能力が求められているのですが、どの科目においても、多かれ少なかれ必要になります。逆に言えば、他人を受け止める力のある生徒は、しかるべき方法で勉強をすれば、必ずできるようになります。
もう一つ挙げるとしたら、「好きなものをもっているかどうか」ですね。お話しした偏差値35の子は“野球バカ”で、野球を応用して勉強もできるようになっていったわけです。
――でも、好きなもの、やりたいことがない子っていますよね。
時田:います。どっちでもいい子ですね。勉強ができるようになりたいわけでもなく、だからといって、他にやりたいことがあるわけでもない子。そういう子は伸びにくいですね。そういう状態の子には、何もさせないほうがいいと思います。
――勉強もさせないほうがいいということですか。
時田:ええ。そういう子はまだ好きなものが見つかっていないか、自分で見つけたり判断することに慣れていないんですね。常に周りから与えられたり、これをしなさいと決められて育つと、そうなりがちです。
以前、そうした“どっちでもいい子”の指導を頼まれたことがあって、その時は勉強をやめて、「行きたいけど、まだ行ってない場所があれば行こう」と街に連れ出しました。その子がじっと見てるものがあると、「あれが好きなの?」と聞いてみる。その時は「わかんない」と答えましたが、理由はわからなくとも自分が惹かれものを探していくことで、好きなものは見つかっていくはずです。これがやりたい、これが好きという自らの意思が、受験勉強でも必ず必要になります。