ビジネス

「言い訳しない」と語っていた日銀・黒田氏と岩田氏の言い訳

 最初に黒田日銀の招いた「結果」をはっきりさせておこう。12月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は、消費増税の影響を差し引けば前年同月比で0.5%の上昇。前月比で見ればマイナス0.5%と、明らかにデフレに逆戻りしている。

 日銀が2013年春から目標としてきた「2年程度で2%」のインフレ目標にはほど遠く、達成不可能は間違いない。

 黒田東彦・日銀総裁が2度の大規模金融緩和で引き起こしたのは「賃金上昇なき物価高」であり、国民を大いに苦しめた。そこに起きた昨年秋からの原油価格急落は、物価を下げて黒田バズーカの生活破壊の衝撃を和らげた。

 もともと日銀の金融緩和は、国民生活を犠牲にしてでも名目上の物価上昇を追い求めたものだったが、そこまでしたのに彼ら自身が約束していた「2年程度で2%」というインフレ目標が失敗に終わったのだから、責任を取るべきなのは当然だ。特に岩田規久男・副総裁は2年前の会見で、目標が達成できなかった場合には辞任すると明言していた。

 2月上旬の会見ではその点を記者から聞かれ、黒田総裁は珍しく気色ばんだ。

「(2%の目標を達成する時期は)『2015年度を中心とする期間』という言い方をしていた」

 岩田副総裁は辞任を否定したうえで、「これほどの原油価格の急落は予想できなかった」と弁明した。

 しかし、だ。2013年3月の就任会見議事録を見ると、「2年程度で2%」とはっきり発言しており、「2015年度を中心とする期間」という言葉は出てこない。いつの間にか期限をすり替えている。なぜか大新聞は報じないが、2年前の会見ではこんな言い方もしていた。

黒田総裁「デフレには円高や石油価格の下落などいろいろな要素による影響があった。(中略)だが、中央銀行としては『いろいろな原因でデフレになっています』といっても責任を阻却することができない」

岩田副総裁「(目標が)達成できなかった時に『自分たちのせいではない。他の要因によるものだ』と、あまり言い訳をしない」

 彼らは2年経ってこの言葉をすっかり忘れたらしい。日銀がいさぎよく失敗を認めないということは、彼らが本当は正しい予測能力を持っておらず、従って物価をコントロールすることもできないことを証明している。今後原油価格が上がった時には、今度は過度なインフレで手がつけられなくなる危険がある。

※週刊ポスト2015年3月13日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン