――中村うさぎさんが赤裸々に整形を公表したことは整形をとりまく環境にも大きな変化をもたらしたようですね
北条:1990年代にプチ整形が登場したことなども重なり、中村うさぎさんの登場によって整形がかなりポジティブに受け取られるようになったと思います。当時、彼女が整形プロセスをつづった雑誌の発売日には、ホステスさんたちが銀座でこぞって買い求めて売り切れたなんてエピソードも、うさぎさんから伺いました。
――それでも整形そのものへの批判は根強いですね。
北条:中村うさぎさんに対して、そんなに美にとらわれているなんておかしい、内面を磨くべきだとか批判する人ももちろんいました。それも正論だと思いますが、人間はやっぱり正しさだけでは動かないので、整形への興味と実践は止められない。美しくなった自分を見ると、嬉しいですから。
――著作のタイトルにあるように、整形によって幸せになっているのかという点が気になると思います。
北条:このタイトルについては何度か変更をお願いしました。でも、やっぱり手に取ってもらいやすいものとなると、このくらい印象が強いものをということで企画当初からの予定通りになりました。
今でもタイトルに不安はあります。「幸せになっているのか」で結ぶと反語として「幸せではない」と連想しやすい。それに整形する女性が多いという報告だと受け取られるかもしれない。社会からの目線に敏感な人は、帯文の「顔さえ変わればうまくいく?」からも男性目線を強く感じて嫌悪感を覚えるかもしれない。でも、幸せかそうでないか、といった単純な内容の本にはなっていないので、どうか先入観を持たずに読んでもらいたいです。
――幸せか不幸かといった単純な話ではなかった?
北条:見た目依存社会のなか女性のほうが見た目で判断される場面が多いですが、整形体験者へインタビューすると、そういった抑圧が理由ではありませんでした。理想の二重幅を手に入れ、シミやほくろが消えたとき、異性の目なんて関係なく「私ってキレイ!」と気持ちがたかぶるんです。ネイルをしてキラキラした爪が完成した時の恍惚感が、一番近い感覚かもしれません。みなさん前向きで、整形イコール悪ではないし不幸でもないと思います。
■撮影:青山裕企
●北条かや(ほうじょう かや)1986年、石川県金沢市生まれ。同志社大学社会学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。みずからキャバクラで働き調査を行った経験をもとに『キャバ嬢の社会学』を上梓。最新刊は『整形した女は幸せになっているのか』(星海社新書)。社会系・経済系の記事を寄稿・提供する傍ら、「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」(NHK)、「モーニングCROSS」(TOKYO MX)などに出演。