国際情報

天津爆発事故 工員が「ライターで火つけた」と書き込み逮捕

 こんなところにも”病巣”は見え隠れする。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。

 * * *
 中国天津市の港・濱海新区で起きた爆発事故、いわゆる”8.12″事故をめぐる問題はいまだ中国社会にくすぶり続けている。

 予測されたことだが、事故原因についてもいまだ当局から正式な言及はないままだ。すでに事故から2週間以上が過ぎ、そろそろ利害及んだ関係者以外の人々の関心が遠ざかり始めているようにも見受けられる。

 だが、そうした空気のなか再び人々を事故にひきつけるユニークな話題が中国社会に持ち上がった。舞台となったのはなぜか天津とはまったく関係のない湖南省であった。

 現地の記者が語る。

「湖南省公安庁の下に設けられたネット安全保衛技術偵察総隊がウィチャット上で発信した捜査情報で明らかになったことですが、実は爆発事故のあった直後、一人の失業中の青年が『あれは自分の犯行だ』と書き込んだことで、身柄を押さえられていたことが分かったのです。

 書き込みには、『天津の爆発は、私の犯した間違いだった。でも、私は後悔していない』と書かれていて、火をつけた動機として、工場の社長が自分を薄給で酷使したことだと記しているのだそうです」

 本当なら大ニュースだが、25日に報道された内容を目にした多くの中国人たちは腹を抱えて大笑いしたという。

「何といっても、犯行声明を出した譚という青年は、『燃料の入ったドラム缶の近くにあった固形の揮発性物質に自らライターで火をつけて逃げた』と告白しているのですから……。

 当局もまともに相手にしていないことは、当初からネット警察が出てきていて、ウソの情報を故意に流布し社会秩序をかく乱したとして『行政拘留』していることからも明らかでしょう」(同前)

 ただ、こんな情報さえまともに受け止めてネット内で拡散させる人々が後を絶たないのが中国のネット事情でもある。

 こうしたデマを真に受ける社会の滑稽さはネット社会の一つの断面でもあるが、事故と同時にネットに溢れた噴飯情報に関しては、「日本では『あの事故の裏に江沢民派の陰謀がある』という解説があるということも、一部の知識人の間では、かなりウケていました」(同前)というから、情けない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ヴィクトリア皇太子と夫のダニエル王子を招かれた天皇皇后両陛下(2025年10月14日、時事通信フォト)
「同じシルバーのお召し物が素敵」皇后雅子さま、夕食会ファッションは“クール”で洗練されたセットアップコーデ
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
【長野立てこもり殺人事件判決】「絞首刑になるのは長く辛く苦しいので、そういう死に方は嫌だ」死刑を言い渡された犯人が逮捕前に語っていた極刑への思い
NEWSポストセブン
ラブホテルから出てくる小川晶・市長(左)とX氏
【前橋市・小川晶市長に問われる“市長の資質”】「高級外車のドアを既婚部下に開けさせ、後部座席に乗り込みラブホへ」証拠動画で浮かび上がった“釈明会見の矛盾”
週刊ポスト
米倉涼子を追い詰めたのはだれか(時事通信フォト)
《米倉涼子マトリガサ入れ報道の深層》ダンサー恋人だけではない「モラハラ疑惑」「覚醒剤で逮捕」「隠し子」…男性のトラブルに巻き込まれるパターンが多いその人生
週刊ポスト
問題は小川晶・市長に政治家としての資質が問われていること(時事通信フォト)
「ズバリ、彼女の魅力は顔だよ」前橋市・小川晶市長、“ラブホ通い”発覚後も熱烈支援者からは擁護の声、支援団体幹部「彼女を信じているよ」
週刊ポスト
新聞・テレビにとってなぜ「高市政権ができない」ほうが有り難いのか(時事通信フォト)
《自民党総裁選の予測も大外れ》解散風を煽り「自民苦戦」を書き立てる新聞・テレビから透けて見える“高市政権では政権中枢に食い込めない”メディアの事情
週刊ポスト
ソフトバンクの佐藤直樹(時事通信フォト)
【独自】ソフトバンクドラ1佐藤直樹が婚約者への顔面殴打で警察沙汰 女性は「殺されるかと思った」リーグ優勝に貢献した“鷹のスピードスター”が男女トラブル 双方被害届の泥沼
NEWSポストセブン
出廷した水原一平被告(共同通信フォト)
《水原一平を待ち続ける》最愛の妻・Aさんが“引っ越し”、夫婦で住んでいた「プール付きマンション」を解約…「一平さんしか家族がいない」明かされていた一途な思い
NEWSポストセブン
公務に臨まれるたびに、そのファッションが注目を集める秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
「スタイリストはいないの?」秋篠宮家・佳子さまがお召しになった“クッキリ服”に賛否、世界各地のSNSやウェブサイトで反響広まる
NEWSポストセブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 電撃解散なら「高市自民240議席の激勝」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 電撃解散なら「高市自民240議席の激勝」ほか
NEWSポストセブン