ソ連のスターリン首相は、東京湾の米戦艦ミズーリ号の上で日本が降伏文書に署名した1945年9月2日に行ったラジオ演説で、
〈1904年の日露戦争でのロシア軍隊の敗北は国民の意識に重苦しい思い出をのこした。この敗北はわが国に汚点を印した。わが国民は、日本が粉砕され、汚点が一掃される日がくることを信じ、そして待っていた。40年間、われわれ古い世代のものはこの日を待っていた。
そして、ここにその日はおとずれた。きょう、日本は敗北を認め、無条件降伏文書に署名した。/このことは、南樺太と千島列島がソ連邦にうつり、そして今後はこれがソ連邦を大洋から切りはなす手段、わが極東にたいする日本の攻撃基地としてではなくて、わがソ連邦を大洋と直接にむすびつける手段、日本の侵略からわが国を防衛する基地として役だつようになるということを意味している〉(独立行政法人北方領土問題対策協会HP)
と述べた。
チタでのプーチンの立ち居振る舞いはスターリン演説の延長線上にある。この事実は、プーチンは対日関係改善の意欲をなくしつつあることを示すものだ。近未来に北方領土交渉が進展する可能性は皆無だ。日本政府は、ロシアと提携して中国を牽制するという外交カードを失った。
※SAPIO2015年11月号