第二の「ロス」として、借金をすることで逆に無駄遣いをしてしまう可能性があります。借金とは他人のカネです。返さなければ貸した人は怒るでしょうが、払えないと開き直ってしまえば、それで終わりにできます。その人から二度と借金できなくなりますが、別の人は貸してくれるかもしれません。

「財政破綻」といわれるギリシャ問題とはそういう話です。もう、普通の投資家はギリシャ国債を買ってくれませんが、EUなどがカネを貸してくれる可能性はあります(ただし、EUとしても「これで最後だ」という気持ちですから、ギリシャの行動を入念にチェックするでしょう)。

 仮に確信犯的に借金を踏み倒すつもりだったり、確信犯でなくとも、「お金が足りなくなればまた借りればいいや」と思っていたりしたら、自分のお金よりも安易に使ってしまう可能性があります。

 国の場合でいうと、集めた税金から支出する場合は、無駄遣いに対して納税者が抵抗します。だから、使い方について国民全体の納得を得なければいけません。結果、無駄な支出はしにくくなります。

 それに対し、借金が元手であり、別の人がまた簡単にお金を貸してくれるという場合はどうでしょうか。手元にあるお金をバラ撒けば喜ぶ人はいますから、無駄遣いが多くなってしまうリスクがあるのです。

 一方で、借金にはメリットもあります。たとえば支出をするべきなのに、そのお金が集まらないときがそれにあたります。景気が極端に悪くなって税収が一時的に大きく減少した場合などには、するべき支出をまかなう収入が得られません。このようなときは、借金をして支出をした方が国民の生活のためにも、経済のためにも良くなります。

※週刊ポスト2015年10月30日号

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