このTNGAの第一弾が、四代目プリウスである。つまり、アクセルやブレーキのレスポンス向上だけでなく、車体そのものの基本設計から刷新された新時代のトヨタ車ということだ。第二弾は次期カムリとされ、今後、TNGAによる新型車が続々と登場するはずである。
トヨタは2014年まで3年連続で販売台数世界一を達成したが、VWが猛追し、今年の上半期はトップを譲っていた。しかし、販売台数世界一にこだわったVWは、クリーンディーゼルでトヨタを超えようとして墓穴を掘った。
一方の章男社長は、販売台数世界一について問われると、「台数はついてくるもの」と答える。本音はともかく、世界一にはこだわらないという姿勢を貫いている。それよりもよく口にするのが、「もっといいクルマ」だ。
「章男社長のいう『もっといいクルマ』というのは、原点に回帰せよという意味。社長就任会見で、トヨタの原点は、お客様第一主義のクルマ作りだといっている。自動車産業の今後のキーワードは『環境』と『安全』で、安全を実現するのが『自動運転』ですが、自動運転ではクルマを楽しめない、お客様に走る楽しみを提供するのがトヨタの役割だと考えているのでしょう」(佃モビリティ総研代表・佃義夫氏)
トヨタも他社と同様、自動運転車を次世代技術として開発しているが、同時に、ハンドルを握って楽しいクルマも作るということだ。台数にこだわったVWと技術にこだわったトヨタの明暗が分かれた格好だ。
※週刊ポスト2015年11月6日号